バルバルサン

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最近の記事

エルの日記帖(マリューネ)

●月×日  今日、姉さんが付き合っているというエース……さんがやって来た。  だが残念だったな。姉さんは外出中だざまあみろ……とはいえ。エースさんに見せる服を選びに出ているのだが……  そんなこんなで、僕とエースさんは軽く話したのだが、その中で、姉さんの好みの味に話題がうつった。 「エリリアの好きな料理で、出来るだけ簡単なやつってある?」  人の姉さんを呼び捨てにするなこの野郎焼くぞ。とまあ、冗談は置いておいて、中々に難しい注文だ。  姉は魚介も畜肉も好きだし、野菜も好き

    • エルの日記帖(カルパチーノ)

      ●月●日 今日、姉さんが付き合っているという男性を連れてきた。名前はエースとか言うらしい。  姉さんは人を見る目は確かだから、悪い人ではないのだろう。とはいえ、いきなり家に連れてきて。 「お父様、お母様、エル。エリリアは、この人と付き合ってます!」  なんていきなり宣言しないで欲しい。お父様なんて、どんな感情でどんな表情をすればいいかわからず、百面相してたじゃん。  それにエース……さんも、びっくりしていた。もう少し、段階を踏んで紹介するつもりだったらしい。  まあ、姉さ

      • 怪盗? この後逃げられましたよ。ええ。

        「お集りの皆さん、今日起こった殺人事件、その犯人が判りました」  屋敷に集まった男女たち。その部屋の片隅で、一人の青年が口を開く。 「その犯人を告発する推理ショーの時間ですよ……」  そう不敵に笑う青年。そのまま、立ち上がろうとして、鎖がじゃらりと鳴る。 「だからこの鎖をほどいてくれないか?怪盗である私を逃がしてくれるなら、殺人犯を当ててあげよう……」  ダメです。 「ダメ? っち、騙されないか」  当たり前だ。  さて、アンポンタンな怪盗は置いておいて……

        • 偶にいる、事件に関係ない謎キャラ

           俺は探偵。俺がとある殺人事件を探っていると、一人の眼帯をしたゴスロリ少女が話しかけてきた。 「探偵さん、君の本音を当ててあげよう」  いえ、いいです。 「そんなこと言わずに。君の想い。それは自分以外の人間が皆死んでしまえばいい……だろ? 」  聞けよ。 「その気持ち、よくわかるよ。君は人を越えた天才だ。天才ゆえの狂気と、孤独を抱いている……違うかい? 」  そんな事、思ったこともないです。 「え、違うだって?そ、そんな即答しないでも……傷ついちゃうよ……」

        エルの日記帖(マリューネ)

          ファンタジー世界で婚活する

           俺には妻がいない。娘は拾い子で、スラム街で拾ったのが始まり。  そのまま屋敷で育てて、10歳まで成長してくれた。とても嬉しのだが、一つ困ったことが。 「お父様。今神様に誕生日プレゼントのお願いを書いていたのです。お母様が欲しいって書きました。早めにプレゼントのお願いをしておけば……」  母親を求めてくるのだ。どうにか、母親を用意してあげたい。そう思いつつ、酒場でママに愚痴った。 「へぇ、あのおチビちゃんがねぇ……」  で、お願いがあるんだけど。 「お断りよ。おチ

          ファンタジー世界で婚活する

          「お粥を、食べなくていいんだよ」

          「はい、お粥を持ってきたよ」  そう言って、愛おしい相手がお粥を持ってきた。ゆっくり、俺はベッドから起き上がる。そして、震える手で彼女から器を受け取ろうとする。 「食べ……なくて、いいよ? 」  だが、受け取る前に彼女が顔を伏せ、そんなことを言った。  何を言うんだと思ったが、彼女は涙声で。 「無理して、食べなくていいよ。もう食べるのも辛いんでしょ? でも、あなたのためにご飯をつくりたいから……私の自己満足に、もう少しだけ、付きあってください」  そういって、彼女

          「お粥を、食べなくていいんだよ」

          姉に思いを抱く異端者

           俺の姉は、雨に打たれながら外の笹に短冊をつけていた。  俺が慌てて傘をさして姉に近寄ると、ずぶ濡れのまま姉は言う。 「短冊に願い事を書いてるの。来年も、曇り空で雨が降りますようにってね。私は、あの人ともう会えないのに、あの二人は毎年会えるなんて、ずるいじゃん」  俺は何も言えず、ただ傘をさすしかなかった。  でも俺が、守らなきゃと思った。  姉に対する思いとしては異端だと思うけど、姉を、この女性を、守らなければと思った。  姉さん、俺が守るから。あなたのことを、守りま

          姉に思いを抱く異端者

          飛び降りないで

           今日も先輩は屋上にいる。お弁当を食べに来ているんだったらいいんだけど、そうではない。お弁当を食べるのに、金網の外側に出る必要はないからだ。  そんな先輩に、今日も俺は声をかける。 「先輩。屋上で何してるんですか?また、自殺の予行練習ですか」  彼女はいじめられているわけではないというの学校側の意見。  だが、本当にそうなのかは彼女のみが知るのだろう。 「ま、俺には関係ないけど、自殺者出ると学校休みになっちまうんで……」  そう言葉をかけつつ、俺は近づいていく。そ

          飛び降りないで

          娼婦と俺の恋愛事情

           その日、王都の裏路地で、俺は娼婦の彼女に告白した。 「私の人生は、本当にくそったれだった。路地裏で生まれて、言葉にしたくもない目にあいつつ、奴隷に売られるまでひっどい物だったよ。これが、私の傷。私の魂に刻まれた傷。さあ、アンタにこの傷ごと、私の人生をまとう気はあるかな?」  そう娼婦の彼女は言った。俺は苦笑し、彼女の手の甲に口づけを落す。  そして、俺の人生を語って見せた。俺がどこで生まれ、何を食べて生きて、何をしてここまで育ったのか…… 「へぇ、あんたも散々な人生…

          娼婦と俺の恋愛事情

          真夏のサンタ

           世の中がクリスマス・イヴで盛り上がってる頃のことだ。とある雪の降る海岸に、俺と彼女は来ていた。  案外嫌いじゃないその場所で、俺は彼女に告白しようと思っていたのだ。  まだ指輪は買っていないが……クリスマスイヴに、この気持ちを伝えたかった。  だが、その静かで厳かなムードをぶち壊すように、サンタ姿のおっさんが海パン一つでサーフィンをしてきた。 「ヘローヘロ―。サンタさんがサーフィンしてきたよ……え、そんな姿で寒くないかって?寒いに決まってるでしょ。でも、オーストラリアで