見出し画像

エルの日記帖(カルパチーノ)

●月●日
今日、姉さんが付き合っているという男性を連れてきた。名前はエースとか言うらしい。
 姉さんは人を見る目は確かだから、悪い人ではないのだろう。とはいえ、いきなり家に連れてきて。

「お父様、お母様、エル。エリリアは、この人と付き合ってます!」

 なんていきなり宣言しないで欲しい。お父様なんて、どんな感情でどんな表情をすればいいかわからず、百面相してたじゃん。
 それにエース……さんも、びっくりしていた。もう少し、段階を踏んで紹介するつもりだったらしい。
 まあ、姉さんが幸せなら、僕が何か言うことも無い。ただ、祝福するだけ。
 というわけで、二人の未来を祝福して、二人にエビのカルパチーノを振舞うことにした。

 まず、タマネギをすりおろす。この涙は、タマネギの涙であって姉を取られたとかの涙ではない、決して。
 そのタマネギと、粒マスタードを軽く混ぜる。本来、カルパチーノはオリーヴの油でシンプルに仕上げる方が好きだが、エース……さんが、ピリッとした味が好きと聞いたので、タマネギと粒マスタードも入れてみた。
 そして、オリーヴの油を少しずつ混ぜる。この時、一気に混ぜると水分が混ざらなくて失敗するのだ。

 そしてエビ。母さんの故郷では、エビは縁起の良い食べ物らしい。なのでメインの食材はこれを選んでみた。
 エビは殻をむいてワタを取って、軽く叩いて繊維を解してやる。
 そして、平行に並べて、上からドレッシングをかけてやって完成。
 付け合わせにマッシュルームを軽くバターで炒めた後。スライスして添えてやった。

 カルパチーノは、父に初めて教えてもらった料理だ。母の故郷では生の魚介肉を食べるらしいが、こちらにはあまりなじみがない料理だった。
 その料理を西側世界風に父が仕上げたらしい……が、本当だろうか?
 まあ、その真偽はともかく、生のエビを美味しく食べる事の出来る料理だ。
 エース…………さんも、喜んでくれていた。それに関しては、素直に嬉しい。
 だが、姉に近い。やめろ姉さんの手に手を添えるな微笑み合うな。
 ……今日は気持ちよく寝られそうではない。だが、ふて寝することにする。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?