ゲーム業界からハミ出てみる
昨日「できるできない」と「やるやらない」の記事を書いた。今日はその続編的内容。昨年くらいからUnityもUnrealも映像業界での活用が特に目立って来た。UnityとWETAもあればUE5とこの界隈が賑やかな気がする。
特に映像やイベントの相談が増えて来ている。
今日はとあるアニメ会社さんからの相談で実際にスタジオに出向いて現場スタッフの方と打ち合わせ。そこで見えて来た課題。
守秘義務があるので直接的な話しはできないが業界のかかえる普遍的な課題を書いてみたい。
これからリアルタイムを導入したいとお考えの映像会社さんにも考えて頂きたいこと。
■アニメ業界とゲーム業界
ゲーム業界とアニメ業界はそんなに遠くない。
ゲームにもアニメ映像自体が使われたりキャラデザ、美術を依頼することもある。
伝説のアニメーター金田伊功さんにもスクエニ時代があったし。リメイク版「LIVE A LIVE」でも金田さんが残した遺産が見られるのではないかとワクワクしている。
アニメ業界からゲーム業界に移ってくる人も少なくはない。
そんな形で近いようで遠いような関係でゲームとアニメは発展して来た。だけど技術的な交流は少なかった。
ゲームはゲーム、アニメはアニメ。同じゲーム内に表現は混在しても交わることは無い不思議な状態。
でも最近、交わりたくとも交われない壁が見えて来た。
■見えて来た壁(予感はあったけど…)
目の前に立ちはだかる壁、それはズバり「制作費」。
日本のアニメ、世界市場では2兆円規模と言われている。2020年でそれだから今は配信でもっと行ってるかもしれない。
なのに制作現場での人件費の水準は全く比例していない。
ゲーム業界も決して高いとは言えないが、それにしても…と思ってしまう。
アニメは売れまくっているのに、制作費がもの凄く安い。
つまり人件費もかけられないということ。でも昨今のアニメを見て貰えれば分かる通り、クオリティーはどんどん高くなっている。一体、どうなっているんだ…って思う。
こういう状況では、我々も残念ながら手を出したくとも出しにくい。
アニメ業界基準でお仕事を受けても採算が取れないとなると非常に困る…
やりたいのにやれない。
加えて、ゲームエンジンの拡張やツールの準備などルックを作るためにはエンジニア作業が不可欠。
しかしゲームを含むIT系の転職市場では、絵を作るデザイナー職よりもエンジニアの給与水準の方が高い。これはエンジニアの採用を考えたら無視できない事情。だからエンジニアの単価を下げて仕事を取るなんてことはできない。
もともとアニメ業界だとCG部門にはシステムまわりやインハウスツールを作るエンジニアが数名いることはある。CG部門がない純粋な作画のアニメ会社だとエンジニアはゼロというのが普通だろう。
映像プロダクションには、ゲームエンジン、描画周りを触れるようなエンジニアはいない。そりゃ必要なかっただろうし仕方ない。
だからこそ僕らのようなゲーム畑の人間に相談が来る。
ゲーム業界でこの分野のエンジニアをアサインした場合、単価がおいくらくらいか?はきっと想像できないだろう。
この単価感の乖離は2つの業界にとってかなり高い壁になってくる。
さすがに1作品作るためにこの「壁」を壊すっていうのは無理な話しだ。
アニメ業界の人たちも数十年間この問題と戦って来ているのは知っている。そりゃとても一朝一夕でどうこうできる問題じゃない…
じゃ、諦めよう。って判断はアホでもできる。
何よりそれじゃつまらない「できるできない」で考えてしまったら「できない」って結論になるのは目に見えている。
■それはお前がやるんだよ!!
だからこそココは「やるやらない」で考えたい。
さすがに短期では実現できないし誰も賛同してくれないだろう。
まずは、長期目線で実現可能なロードマップを考えてみたいと思う。
勝手に「それはお前がやるんだよ!!」って言われたと思い込んでやる。
古い言葉だけど「メディアミックス」的にコンテンツを作るって考え方。
1つのIPに内包される出力方法としてゲームやアニメがあると捉える。
雑に言うと先ほど「壁」と書いた乖離を中和してしまうことで身動き取れない状態からまずは脱却。まずは動ける状態に持って行きたい。
かつて同じような考え方の作品もいくつかあった。でもゲームエンジンを起点にうまく出力して売れた作品はまだ無い。
単に技術的な横断ではなくIPの展開も含めたやり口を考えていたりする。ここでは詳細はお話しできないけど…
ちょっとずつ遠くの絵を描きながら足元を固めていくような長い道のりにはなりそう。でも少なくとも微動ではあるが、動き始めたのは確かだ。
結局、日本のコンテンツ産業は何を作ってても大変…だったら面白い方に行かなきゃ損。
この取り組みが、いつかお話しできる日が来たらいいなと思いつつ。
今日はこの辺で。
言いたくても言えないのでモヤモヤした表現が多くすみません。。
~つづく~