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【ザ・バロック】バッソコンティヌオとヴァイオリン-ルネサンスの残り香とイタリアの新風

17世紀バロック音楽を象徴するサウンドとは何だろうか?

 一言でいえばそれはルネサンスのサウンドをベースにした、ヴァイオリン中心の音楽ではないだろうか。

中世ルネサンスの例

 歌(歌唱)、弦楽器、管楽器、打楽器、撥弦楽器と実にバラエティーに富んだサウンドである。

 もしかしたら「無○良品でかかってる音楽みたい」なのかもしれない。
 さまざまな音楽に慣れ親しんだ現代人には極めて素朴なサウンドに聞こえる。

近世バロックの例

 冒頭の一分間だけで、まったく新しい音楽が聞こえてくる。
輝かしいヴァイオリン群の音色、その掛けあい。
 17世紀イタリア発の新風は、音楽史を見事に塗り替えた。

 (参考)

 一方で、低音パート(いわゆる通奏低音、バッソコンティヌオ)にはルネサンス以来の楽器の豊穣(多彩さ)が残されている。
 先ほどの演奏ではチェロ・コントラバス、テオルボ(アーチリュート)、オルガンがそれである。
(ちなみに、それぞれ弦楽器、撥弦楽器、鍵盤楽器ということになる。)

勃興するヴァイオリンと旧来のサウンドとのミックス。
 バロック時代の楽器編成は、全体としては「奇妙なバランス」を保っている。

 なお、純然たる連想ではあるが、この時代の社会秩序が国王(絶対君主)のもとに封建勢力(貴族・僧侶)と特権商人(商業資本家)との勢力均衡(バランス)で成立していたことを踏まえると、なんだか妙に納得できるような気がしなくもない。

絶対王政は単なる専制政治と異なり、封建社会が崩壊し近代市民社会が成立する過渡期に出現した政治形態。国家の政治的・経済的統一、官僚制の整備など、近代国民国家形成という面をもつ一方、身分制の維持、特権大商人の存在など、封建社会の要素も残している。

『ニューステージ世界史詳覧』浜島書店

 さて、参考までに、その後の近代市民社会の音楽はどうなっていくか。

近代古典派の例

 これぞクラシック、まさに王道中の王道のサウンドではないだろうか。
弦楽の均質的な響き。これに尽きる。
 なお、和声補充としての旧来の通奏低音の役割は、各パート(アルト、テノール、バス)に分散され、ルネサンス以来の楽器はついに全員退場する。

 ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンの時代になると、楽器編成も音楽形式も整理整頓、いわば市場における規格統一がなされ、今日我々がイメージするザ・クラシック音楽が成立する。

 到底、まとめにはならないが言葉遊びの一つの試みとしては、実際の食の歴史は一切無視して単にイメージだけで語るなら、ルネサンス音楽が音の豪華ビュッフェ(メインは歌唱)、そして古典派がフレンチフルコースだとすれば、バロックはその中間、一応コースだけど一部ビュッフェもあり、みたいな表現は、果たしていかがだろうか。