![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/44114180/rectangle_large_type_2_14c21ffd4322556e7f10bb5f1dd5f16d.jpg?width=1200)
共に生きる、GARGERYであり続ける
こういう時期だから、株式会社ビアスタイル21 の代表として、創業メンバーとして、またマーケティング責任者として、飲食店限定ビール GARGERY ブランドについての想いを、あらためて書きたい。
GARGERYが生まれて18年、環境は変わった
株式会社ビアスタイル21は、2002年7月にキリンビール株式会社の社内ベンチャーとして誕生した。そして2007年に同社の資本を離れるまでは、ガージェリー・スタウトとガージェリー・エステラ、たった2種類の樽詰ビールだけ。展開エリアは東京のみに絞っていた。当時はデフレの真っ只中、ビール市場もいわゆる節税ビールとしての発泡酒が全盛。そんな中、当時の感覚では “ 超 ” をつけてもよいくらいのプレミアムビールだったので、営業をかけて飲食店に取り扱っていただくまでのハードルは高かった。簡易ビアサーバーを携えて一店一店、プレゼンをして回ったが、よくやったよなぁと思う。
あれから18年以上が過ぎ、ビール市場もずいぶん変わった。大手ビール各社はプレミアムビールにも力を入れ、2000年頃に下火になり底を打った “ 地ビール ” は、2010年を過ぎたあたりから “ クラフトビール ” というカテゴリーに変化しつつ大きなムーブメントとなり、大手の戦略や商品開発にも影響を与えている。
その間、全く変わることなく「飲食店限定プレミアムビール」として一徹に黙々と展開していたGARGERYだが、自分が変わらなかったとしても、取り巻く“ビール市場”という環境が大きく変化したことで、第三者から見たポジションがだいぶ変わってしまった。クラフトビールブームの流れから、素直に興味を持って話を聞いていただける飲食店が圧倒的に増えた。商売がしやすくなった、という一面もあるが、ブランドコンセプトを念入りに考え抜き、立ち上げて18 年間育ててきたGARGERYが、“クラフトビール”という一言で括られることには若干の違和感がある。
それはさておき、
飲食店の方々やお客様と話していると、「味の評判もいいし、デザインもカッコ良い、せっかくのクラフトビールブームなんだし、問屋さんや酒屋さんに卸したり、ネット通販なんかで販路を広げれば一気に倍々で売れるんじゃないですか?」「スタウトとエステラ以外の限定樽詰ビールなんかは出さないの?」「次の新商品はいつ出すんですか?」そんなことを聞かれることが多くなった。
そもそも、そうする余裕もないのだが、正直なところ、やることが得策だとも思っていない。ビジネスとして売上は上げていかなければならない。利益を上げれなければ成り立たない。それが前提だが、短期的に大きな売上や利益を上げることよりも大事なのは「続けられること」と「存在価値を高めること」。言い換えれば「ブランドをつくること」だと思っている。
それぞれの想いがあり、GARGERYのストーリーがある
綺麗ごとかもしれないが、僕らは金儲けのためだけに仕事をしているわけではない。誰かと何かを共有したい。自分たちが生きている意味を見出したい。そういうことだってある。自分なりのストーリーがあるのか、それが大切だ。
中小規模の地ビール/クラフトビール会社から大手ビール会社まで、同じライン上で売上を競っているわけではない。大手はシェア争いに関心を持たざるを得ない面もあるだろうが、それでもそれぞれの存在する意味は、それぞれ胸の中で独自のものを持っているはず。持っていなければならない。もちろん地ビール/クラフトビールの会社には一層の想いやこだわりがあるだろう。
2002年に、ガージェリーの商品開発段階で決めたことは、物性的には醸造所を出てから飲む瞬間までのコンディションへのこだわりに軸足を置きつつ、情緒価値として、人々が外飲みをするシチュエーションで、その時間をいかに豊かなものにするか、できることなら、心まで満たすようなビールを提供したい、そして、そのためには飲食店で働く人たちと手を携えていかなければいけない、ということだ。
そういう自分たちのストーリーをつくっていきたい、ということに僕らは意味を見出したのだ。それは18年経った今も変わっていない。
そしてこのコロナ禍、飲食店は大変な状況にある。ほぼ全てのビール会社は存続するために「家飲み」需要へのアプローチに舵を切っている。ただ、GARGERYは「飲食店限定」だ。18 年の間に、数千もの飲食店に一切小売はしないと約束してきた。だから、その約束は破らない。今だからこそ「飲食店限定」である価値で飲食店に恩返しをする時だと思っている。
「GARGERY」の名前に込められた想い
「GARGERY」というブランド名は、イギリスの作家、チャールズ・ディケンズの小説『大いなる遺産』に登場する心優しい鍛冶職人の名前から取っている。主人公ピップが、予期せず手にした大きな資産のために心惑う人生を送る中、いつも変わらぬ大きな愛情を持って接したのがJoe Gargery(ジョー・ガージェリー)。その名前をつけたのは、飲み手の人生にいつも変わらず優しく寄り添うようなビールにしたいと思ったから。
いつもそこに行けば会える、変わらない親友のようなビール。
それが、GARGERY。
変わらない、裏切らない。
逆境の時ほど寄り添い支え合う。
絶対的な優先順位は初めからはっきりしている。
GARGERYを愛していただける飲食店と共に生きる。
飲食店と立ち上がる準備はできている
GARGERYが生まれて18年。まだ18年と言った方がいいかもしれない。ブランドをつくり、信頼関係を築き、守り、着実に広げていく。
コロナ禍で一時的な商売は極めて厳しいことになっている。ただ、ここで詳細について触れることはしないが、今のところ「GARGERY」と「ビアスタイル21 」の存続については、そこまで追い詰められているような状況ではない。この数年、足腰強く “ 続けていく ” ために然るべきことをやってきた。
飲食店と立ち上がる準備はできている。
たまたま同じ時代、同じ日本で、同じ時間を生きている愛すべき人たちと、ストーリーを共有して生きていこう。
大いなる希望をもって - Great Expectations -