【井戸尻考古館】夏の縄文体験レポ(2023.8.5)
101回目の記事は、ご存じ井戸尻考古館のイベントの模様です。今後ともよろしくお付き合いください。
はじめに
富士見町の井戸尻考古館では恒例のイベントのひとつに、春と夏に「縄文体験」があります。本年夏の「縄文体験」は8月5日(土)、6日(日)の2日間にわたり行われました。
この2日間は沖縄方面に停滞している台風の影響が心配されましたが晴天に恵まれ、時折吹く風で暑さも和らぎました。
今年はのんびり
縄文体験は、井戸尻考古館の外の芝生広場にテントを張って行われます。
人出はというと昨年よりぐっと少なくなりました。もちろん普段の考古館よりは賑わっています。
理由は単純で盆前のこの週末、各地でお祭りやイベントが復活しており訪れる人が分散したため減ってしまったのです。茅野市では「茅野どんぱん」が4年ぶりの開催となり、富士見町ですら、同じ日に商工会主催のイベントと重なっています。むしろ例年が今年くらいのゆったりペースなのです。
体験内容は例年同様です。ふたつあるテントのうち大きいほうが飾り玉づくりのテントで、職員やスタッフが案内を兼ねて縄文体験の内容を紹介してくれます。
丸木弓の的あて
まず手始めに考古館の裏へ進み丸木弓の的あてを楽しみます。
縄文農耕の実験畑が隣にあって作物が育っています。
丸木弓の的あては天然木の弓を使い、動物の的に矢を放つ体験です。意外に大人もはまる人気コーナーです。的は段ボールで作った動物で手作り感満載です。
見事狙った獲物を命中させる子どもたちがいました。1時間前からやっていたとか。それでコツがつかめるのは才能ありです。
まず、弓を選ぶところから始めます。弓にはイチイの木を使っているとのこと。天然木のため個体差があります。弓の糸を引いたときにが柔らかいものが扱いやすいです。
矢については弓道用のものを使用しているのですが、担当していた井戸尻応援団のスタッフによれば、羽根が残っている矢のほうが安定して飛ぶそうです。でもこの距離ならほとんど影響しない気もします。
筆者の矢は、1回目で見事に鹿さんの足元へ命中しました。放った矢は全員が打ち終わってから自分で取りにいきます。
2回目はおっことぬし風のイノシシの体に当たりました。
3回目、4回目は外しましたが2匹「獲物」をしとめたのでこれで満足です。
飾り玉づくり1st
続いて飾り玉づくりです。ロウ石とか滑石と呼ばれるやわらかい石を削りネックレスのような飾り玉を作ります。
下記画像には所要時間30分~とあります。形を整えたり、磨きをかけたりとかける時間は人それぞれです。とりあえず穴あけて作ってしまえば磨きだけならば帰ってから家でもできます。
まず、削りたいロウ石を選択します。少し大きめのものを選んでおくほうが、どんどん削っていって形を変えられるのでよさそうです。
ロウ石を鉄平石の板でひたすらけずり形を作ります。ここで使用しているロウ石は天然のため、削っているあいだに模様が出てきたり、磨くと色合いが変わったりします。そんなことも楽しみ方のひとつです。
最後に紐を通す穴をあけます。そのため、穴の位置を考えながら形を考え、削り込んでいきます。
削っていくうちにティアドロップ形になってきました。途中で鉄平石の板は大きいものに交換しています。
形が出来上がったら次に砥石で磨いて表面をなめらかにします。そして紐を取り付けるための穴をあけます。穴は黒曜石を先端に取り付けたドリル(キリ)を使います。スタッフが穴の位置をアドバイスしてくれます。位置が悪いと割れて失敗してしまうからです。スタッフに飾り玉を押さえていてもらって、黒曜石のドリルでぐりぐりと穴をあけます。
実はけっこう厚みがあったので表側からと裏返して反対側からと2ヵ所から開けました。下記画像は貫通したときの小さな穴です。これだけ周囲に余裕があると割れる心配はありません。
見事穴が貫通したら、紐をつけて飾り玉の完成です。磨きが不十分ですが完成しました。
黒曜石の矢じりづくり
矢じりづくりは「夏の縄文体験」でしか行われない体験メニューです。大人がはまるのはこちらです。
黒曜石のかけらを鹿のツノでプチプチと表面を剥がしとって矢じりの形を作ります。結構力と時間がかかります。コツをつかまないと思うようには剥がれません。
S学芸員が担当で丁寧に教えてくれます。削るのではなく力を加えて、引っかけて、ガラスの層を剥がしていきます。そのためにまずは、黒曜石のかけらをまずぐるっと一周すべてはがしとっていきます。
力をかける方向と角度によって剥がれ方が異なり、いい剥がれ方のときにはプチと音がします。剥がれ方が短いとその先手詰まりになってしまい思うように作れくなります。
矢じりづくりで使用するのは鹿革、鹿の角、軍手と眼をガードするグラスです。
筆者はこの黒曜石で始めました。
周囲が剥がれてボコボコしてきましたが、ここまで30分を擁してしまいました。まだまだ途中ですが、ここでギブアップ。
使用している石は、北海道産の不透明な黒いまだらの黒曜石を使っています。透明な長野県和田峠の黒曜石とはまったく色などが異なります。もし間違って黒曜石を落としたり破片が散らばっても、縄文の遺物と間違えないようにするためだそうです。
火起こし
リクエストがあれば随時「火起こし」もできます。
もみ切り式というやりかたで、火切り棒という木をこすりつけます。
若手H学芸員が数分で火を起こしていました。学芸員は火を起こすスキルが必要なのです。
そのあと小さな子供たちとS学芸員で火起こしに成功。歓声が上がりました。子どもたちは火を消すのにちょっとおっかなびっくり。
飾り玉づくり2nd
2回目の飾り玉に挑戦します。今回は勾玉を目指します。
鉄平石の縁を使って削り込んでいくと勾玉のくぼみができてきました。
穴あけを容易にするため全体的に厚みを削り、さらにアーチを削り込み形を勾玉にします。
形が決まったところで、砥石に変えて磨きます。水を付けて磨くとロウ石の表面から削れたカスが水を含みネバネバしてきます。この白いネバネバも磨きの効果があります。
穴あけをしますが、特別に信州産の黒曜石で作ったドリルで穴あけさせてもらいました。なんといっても画像で分かりにくいくらい透明です。また、これまでとは切れ味が違う気がします。削っていても先がへたらないのです。
紐をつけて完成です。磨きが足りないと思ったら自宅で布で磨いたりハンドクリームで磨くと艶がでるそうです。
ぼろ機織り
歴史民俗資料館の中では、紅蓮織りの会のみなさんの指導によるボロ織り体験をしています。
機織り機で古い布を裂いた紐を横糸にして、布を織ります。だいたい一人30分の時間で15センチの幅の布を織る体験です。
お客さんが途切れていて会のみなさんが作っている様子を見せていただきました。
手元を撮影させいただきました。こうして裂いた着物を横糸にしているのですね。素朴な雰囲気が伝わります。
会場の後ろでは、紅蓮織りの会の作品も多数展示されていました。販売もしています。
おみやげにハスの花托
ハスの花托を自由に持ち帰れます。
井戸尻史跡公園のハスはまだ咲いている種類はありますが、大賀ハスの花は終わりました。大賀ハスが交雑しないように実になる花托を刈り取ってしまっています。そうして取った花托です。
花托は陰干ししてドライフラワーにするほか、花托をこわして実を取り出して食すことが可能です。女性職員によれば、ハスの実はカッターで線をいれてひとつひとつ剥くと白い実が出てくるそうで塩ゆでにするとよいそうです。
そういえばコロナ前にイベントでふるまわれた縄文土器で作った粥に入っていたハスの実は銀杏とかゆで落花生のような食感でした。
おわりに
以上、井戸尻の縄文体験を紹介しました。お客さんは、昨年初めて来られて今年も来た方、ハスを見に来て偶然イベントと知って立ち寄った方、ご近所の方など、それぞれでした。職員もスタッフも含め、みなさんのんびりと過ごしていました。
次の大きなイベントとしては今年も10月に「高原の縄文王国収穫祭」が予定されています。昨年から始めた物々交換イベントも行うそうで、そちらも楽しみです。