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【藤村記念館】縄文土器出張展示「マチナカ博物館」レポ(2023.8.13)

はじめに

 夏は縄文の展示やイベントが多く、筆者の記事も縄文がしばらく続いておりますが、もうしばらくお付き合いください。
 今回は甲府駅北口で行われた「マチナカ博物館」(2023.8.12~13)の様子を紹介します。終了時刻の30分ほど前に立ち寄ったもので、下調べもなく入館し、取り急ぎ体験したもので、準備不足の感は否めませんがレポとして紹介いたします。

ひかえめな看板

藤村記念館

 会場である藤村ふじむら記念館は甲府駅北口広場に移築された明治時代の学校建築です。山梨では明治時代初期の県令(現在の知事に相当)である藤村紫朗(1845年~1908年・弘化2年~明治41年)により擬洋風の校舎を建設することが推奨されました。そうして建築され現存する5棟のうちの一つです。
 国の重要文化財として当時の姿を伝えるとともに内部は交流施設として活用されています。
 藤村記念館に関しては拙稿をご覧ください。

マチナカ博物館

 マチナカ博物館は、山梨県埋蔵文化財センターが2018年(平成30年)から始めている出張展示イベントです。2018年(平成30年)日本遺産「星降る中部高地の縄文世界」に認定された中部高地の縄文を紹介するものです。
 過去には、イオンモールやリニア実験センターなどでも出張展示が行われています。

夏休みの帰省時期にあわせて行われた

 甲府駅北口で開催された今回は、交易ネットワークについて学んでもらおうと、新潟県から火焔型土器やヒスイなどもやってきていました。
 会場である、藤村記念館一階の交流スペースには山梨県と新潟県で出土した縄文土器や黒曜石などを展示。
 ワークショップは、ケースに展示されているスケッチをしたり、土器に触れたり、ヒスイを探し出すなどわりと単純なものから、屋外のテントのように火焔型土器の突起を作ったり模様付けをするといったやや難易度のあるものがありました。

藤村記念館の交流スペース

土器の展示

 独立ケースが4つあり、いずれも縄文中期に栄えた山梨の土器が展示されています。ちなみに受付をするとワークシートの裏側に土器をスケッチするよう促されます。描いて持っていくと縄文柄のマスキングテープがもらえます。
 まず目に入るのが水煙土器です。山梨に多い渦巻きの形です。分かりやすくモンブランのようなと、親しみやすく解説してあります。

水煙把手時(北杜市、酒呑場遺跡)

 続いて蛇の文様のある土器です。蛇は縄文人が大切にしたモチーフです。ここでは蛇を神様のような存在と説明しています。北杜市の海道前C遺跡の出土品です。
 筆者がスケッチしたのはこの土器で、蛇の意匠と細かい模様を書き込んでいってはなまるをいただきました。ただ、人様にお見せできるような出来映えではないのでここでは割愛します。

蛇体装飾付土器(北杜市、海道前C遺跡)

 こちらも、同じ海道前C遺跡からですが、縁のところに三角形の模様がいくつもついている土器です。

重三角区画文土器(北杜市、海道前C遺跡)

 これらの土器が出土した北杜市高根町の海道前C遺跡について解説しています。実は今回の土器の出品について同じ住居址から見つかり、形がそっくりな土器を2点ずつ展示しています。

海道前C遺跡の解説コーナー

 続いて新潟県からの交流展示の火焔型土器です。こちらも5000年前の中期と推定されます。新潟県立歴史博物館の所蔵品ですが、出土地は不明とあります。

火焔型土器2点

鶏頭冠突起と模様付け

 まず外のワークショップのテントです。猛暑により扇風機などで対策していますが、暑かったです。それでも体験しているお客さんがいました。
 こちらでは火焔型土器の特徴である鶏頭冠突起を作る体験と土器に模様付けをする体験が行われています。

土器の模様付け(左)と突起作り(右)
「火焔街道」ポスター

ヒスイ探し

 続ていて館内の会場のワークショップです。
 ヒスイ探しは、テーブルに広げてある自然石の中にヒスイを5個混ぜるので探し出すという体験型ゲームです。
 石はすべて糸魚川の天然石で、こちらの担当は新潟県立歴史博物館の方で突起作りなども新潟から出張してきて下さってます。

ヒスイに関するパンフなど
「石のまち糸魚川」のロゴのあるヒスイ探しキット
混ぜたはず

 混ぜる前にヒスイの特徴を覚えます。表面がツルツルした質感です。比重は軽いように思ったのですが実は重いそうです。硬さも強いため他の石に比べて角がさほど丸まっていません。そうした特徴を覚えて後ろを向いている間にヒスイが隠されました。

この中にある自然石のサンプル

 実は隠した5個はけっこう簡単に見つかってしまい、記念に新潟県立歴史博物館の缶バッジをいただきました。実際には達人でも海岸で歩いて1時間で1個みつけるかどうかだとか。
 隣にはヒスイが展示してあります。

大きなヒスイ

ハンズオンコーナー

 隣のテーブルは深鉢型土器と黒曜石の原石、水晶の石器などが並びます。
土器は3点ともすべて接合した本物です。水煙土器だけ把手がぼろぼろと崩れるので手に取ることはできません。

さわってみよう


竹や縄などで文様を紹介

 新潟がヒスイならば、山梨の石は水晶です。遺跡からは水晶を加工した石器なども出土していますが、黒曜石と違い加工はしにくいです。理由として水晶は黒曜石と比べ高度が高くなっています。さらに、水晶は結晶でできているため断面は常に結晶であり、黒曜石のような鋭利な加工をするのは困難だといいます。

山梨の水晶
手に取れます

 黒曜石も外せません。大きな原石です。長野県産と佐賀県産とあります。長野県産のほうが透明度があります。

産地の異なる黒曜石

 実際に出土した黒曜石の石鏃、石錐、石匙です。北杜市の原町農業高校遺跡と甲ッ原かぶつっぱら遺跡のものです。

北杜市原町農業高校遺跡と甲ッ原遺跡の石器

 こちらはみな北杜市大木戸遺跡からの黒曜石ですが、和田峠(長野県)、天城柏峠(伊豆)、神津島(伊豆諸島)と産地の異なるものが出土しています。

北杜市大木戸遺跡の黒曜石
産地ごとの黒曜石の解説
これまでに登場した山梨県内の遺跡地図

「なんだコレは!」

 新潟からの交流企画でもありますので、日本遺産「「なんだ、コレは!」 信濃川流域の火焔型土器と雪国の文化」を紹介するコーナーです。
 「なんだコレは!」は岡本太郎が土器を見て上げた有名な言葉ですね。

新潟で火焔型土器に会おう

おわりに

 30分程度の滞在でしたが、時間ギリギリまで堪能できました。新潟県立歴史博物館の方も、山梨県埋蔵文化財センターの方も丁寧に説明してくださり、とくに山梨にいて新潟の職員さんからお話が聞けるのは貴重な機会でした。
 次回「マチナカ博物館」があれば、しっかり余裕をもって訪ねたいと思います。

終了時間

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