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【沼津の思い出の山(山エッセイ)】

静岡といえば富士山のイメージなのに、沼津からは富士山は見えないんだなと、暮らしていた頃は思っていた。住み始めたのが夏に近い頃だったので空気が霞んでいて遠くの景色が見えていなかった。

当時は山よりも海が好きだったので、視界に山が見えるかどうかはあまり気にしていなかった。海さえ眺めていられたら満足だった。

今でこそすっかり山好きだが当時は山を見ても思うところはあまりなかった。そもそも山とは目に映る背景の一部でしかなくて、山道を歩くだとか山頂にたどり着くなんてのは考えもしなかった。山に関する考え方が変わったのは当然、山に登るようになってから。視界に山があれば「あれはなんという山だろう」と気になるし、自分の足で辿り着ける場所なのかどうか考える。

それでもやっぱり富士山だけは別格で、見えた時は無条件で嬉しくなる。沼津からも富士山が見える、と気付いたのは冬。近所のスーパーに買い物に行った時。

駐車場からはいつも名前も知らない山が見えていた。冬、ふと山の方を見ると稜線の向こうに白く冠雪する富士山の頭が見えた。行きなれたスーパーの駐車場で、今まで一度も見えていなかった富士山が見えたことに感動したのを覚えている。

しばらく立ち尽くすようにして富士山を眺めた。
思えばあの頃から、山に惹かれていたのかも知れない。

沼津で見た思い出の富士山


また新しい山に登ります。