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【人生ノート289】他を尊重し敬愛するのが真の個人主義であり、また共栄主義である。
共栄主義
真の個人主義は、真の共栄主義である。
世には、個人主義といえば、単なる動物的利己主義と誤解し、また、共栄主義というのは相互干渉主義かのごとく思惟している連中が、今なお多いのは遺憾のことである。
真の個人主義とは、天より特に自己に賦与されたる職能を、能うかぎり完全に発揮することである。ただこの場合、おうおう、自己のために他を排すということになり勝ちであるから、他に大した迷惑をおよぼさぬ範囲において、真の自己を発揮するように努力すべきである。
真の共栄主義とは、できる限り、他をして、その特能を発揮指すようにつとめることである。ただこの際、あまりに、単なる認容にすぎて、自己というものをないがしろにするようなことがあってはならぬ。
安っぽい犠牲にながれてはならぬ。自己なるものが、この世に生まれ出たのは、とりもなおさず、自分でなければ果たせない仕事があるからである。これと同時に、自己以外のすべての人々もまた、そうである。だから、吾々は、相互に、このことをよく自覚して、それぞれの天職使命を果たし、果たさすようにと気を配らねばならぬのである。
このことを、個人的にみれば、徹底したる個人主義であり、社会的にみれば、真の共栄主義なのである。
現代は、どちらかといえば、あまりに相互干渉が多すぎる。特にわが日本のごときは、根本において、封建的家族制度の遺風、いまなお横溢していて、意識するとせぬとにかかわらず、真の神の意志を阻むがために生ずる不愉快と懊悩とがはなはだしいように思われる。
また、うわっ調子の個人主義におちいるというと、単に利己のみのために、一切、他をかえりみぬことになってしまうのである。
自己を尊重敬愛するとともに、同様、他を尊重し敬愛するのが真の個人主義であり、また共栄主義である。
『信仰覚書』第四巻 出口日出麿著