あずる

過去の恋愛の 一場面だけ切り取って 描いたり ちょっとふんわり 手を加えたり そんな…

あずる

過去の恋愛の 一場面だけ切り取って 描いたり ちょっとふんわり 手を加えたり そんなこんなの 恋愛のお話。

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あずる*自己紹介

五十音の一つ一つを パズルのように組み合わせたり 音のように重ねてみたり そうやって 言葉を紡いでいきたいと思ってます リアルの生活の中では 人前でお話をする機会が多いのですが ここでは 言葉の織り人でありたいと思ってます 読んでくださってありがとうございます

    • darling

      『Darling』 キミの事これから そう呼ぶよ 私の前髪をかけ上げおでこにキスをして そう言葉にする彼の 真っ直ぐに見つめる 目の色に引き込まれる キレイな緑と青 そして淡い茶の目だ 彼の腕の中でくるりと体の向きを変えて スマホで 調べてみた 最愛なる人 愛しい人 と、記してある そうなんだ 私 彼の『darling』なんだ 体の向きを元に戻して 彼の髭の頬に キスをした 名前を呼ばれない付き合いは 初めてかもしれない 特別自分の名前が好きだというわけでは な

      • おかえり

        『ねぇ 肌が合うって どういうことだと思う?』 「そうだな 皮膚と皮膚の境目が分からないほど 馴染んでるってことなんじゃないかな」 まつ毛が触れる距離で  隙間なく肌を合わせ 私たちは いま会話をしてる 肌の境目を感じないほど馴染む肌 そう感じていた人だ そう感じていたはずなのに 二人の間には 三度ほどの四季が巡っていた 二人がいつの間に会わなくなったのかさえ 思い出せないほどの時間が流れていた ただ 肌の記憶は 鮮明だ 触れた瞬間に 時が戻った 次にいつ会え

        • 言葉

          幸せと不安は なぜに こんなにも近くに在るのだろう ボクは彼女の震える肩を撫でながら そう感じていた 彼女はすぐ近くの未来を 見てた ボクは少し遠い未来を 描いてた 沿うようで 添えていないことが 彼女の不安を募らせていた 彼女の落とす涙がボクの膝を 濡らす 吐く息ごとに 一粒落ちる 静かな部屋には 降り出した雨音と ボクの手の さする音 言葉をどう紡ぐべきなのか 言葉をどう綴るべきなのか 手のひらから伝わる温もりが 秒速で 落ちた涙の冷たさへと 変わる 『ご

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        あずる*自己紹介

          「なんだか ここ 繋がりにくいみたい  また 改めてかけるね」 そう言って もう三日が過ぎた 本当は あなたの声 聞こえていた 「話があるんだ」って 聞こえてた その話を聞きたくなくて  携帯がつながりにくいと ウソをついた 気づいてた 少しずつ私が あなたの日常から薄れていたこと その代わりに そこに『誰か』が入り込んできたことも わかってても 確かめるって  結構エネルギーが要る 当たり前だった 小さな小さな習慣に 少しずつ少しずつ隙間が空いて 綻びが見え

          雨音で目が覚めた まるで和太鼓の連打のように 心地よくも聴こえる 『髪 もうショートにはしないの?』 昨日そう言われたことをふと思い出す 社に戻るには少し早すぎると思い 一人近くのカフェに寄った 午後3時を過ぎていたので コーヒーではなくソイラテを注文した どんなコーヒーでも午後3時を過ぎて飲むと 寝付きが悪くなるのだ そう思い込んでいるだけかもしれないけれど それを手にし オープンの席に行こうとした時 視界に彼が入った 「ここ いい?」 『もちろん どうぞ』 二

          花海棠

          交差点で 腕を掴まれた 私の名前を呼び私の目を見つめている …会いたかった人 自分の向かう方向を背にして 私のつま先の方に合わせて歩み出す 『ずっと 会いたかったんだ』 私も とは言えず聞こえないふりをした 背中に回された左手を解くように 彼の正面にまわる 『ねぇせっかく再会したのだから 今から時間ある?  鎌倉に 海棠 見に行かない? そろそろ咲いてるんじゃないかな』 花海棠は桜が散る頃に見頃になる 偶然の再会だった 多くの人が行き交う交差点のど真ん中だ

          緋の月

          陽が落ち 山際も見えなくなる頃 赤い月が登る 冬の満月 月の出の時刻に合わせ 海に車を走らせる よせる波の音  砂を連れていく音 暗闇の中で鼓動のように繰り返す 波音だけの世界 水平線に小さな赤の点が見え始める その点が波音に導かれ線となり 私の足先までも月路が伸びる 緋毛氈の如く 私はどうしたいのか どう有りたいのか 緋の月が 心の身包みを剥いでいく そして 私の全てが緋色に戻る 委ねてみよう 私の中の 衷情に

          山の上ホテルにて

          『年齢なんてただの記号なんだから』 当時30代半ばの私に一回り以上年上の女友達は そう笑った 常に今の自分を生きなさい という意味にも聞こえた 山の上ホテルはいつぶりだろう 夜の雰囲気とはまた異なり 穏やかで和やかな風情の エントランスに出迎えられた 中華のランチに来たことををポーター伝える 案内されメニューを手渡されると 『ねぇまずはビール飲みましょうよ』 彼女が言った グラスを合わせ 互いの近況や 出会った20年前の頃の話が 混在しながら 優しい時間が流れてい

          山の上ホテルにて

          stay gold

          部下の運転する車から 『stay gold』 スティービーワンダーの曲が流れてきた 「キミこんなの聴くの?」 『はい なんかいいなと思って』 「そうなんだ 私ね 好きだったんだ この曲」 ふと記憶が蘇る… あの頃 別れが来るなんて 思ってもいなかった それでもすれ違いは起き 別れはやってくる 彼は二人の想いが一番だといい 私は二人の環境が一番だと言った 互いが大切なのは同じだったはずなのに 「stay gold」は 二人の好きなドラマの挿入歌に使われていた

          カプレーゼ

          『なぁモッツァレラチーズってこんな味だったか?』 到着が遅れるアナウンスが流れる 緊張なのか少しだけ拍動を感じる 空港は行き交う人の 様々な靴の音が溢れている 旅立つ時も戻ってきた時も ときめく 私は壁にもたれ ガラス張りの到着出口を見てる 見慣れた傷だらけのリモアのキャリーが 向かってくる ここにいるねとも伝えてなかったのに 迷わず見つけることに 余裕を感じて 少し悔しくて その事が嬉しい 『お疲れちゃん』 相変わらずバブル的な挨拶 私の近況など聞かれることも

          カプレーゼ

          −8時間のリアルタイム

          『風の時代なんだってな、お前そんなの好きだろ』 明け方の4時にLINEが入った。 デュッセルドルフは今何時? 昨日の夜の8時か また自分都合の発信。 でも彼らしくて嫌じゃない。 『あのさ、こっち4時なんだけど、まだ真っ暗夜中なんだけど』 ちゃんと相手するよ 風の時代とか本当は全くどうでもいいくせに 私ならこんな時間にLINEしてもきっと『会話』になると確信して送ってきたはず 『ちょっとだけ声くれよ』 ほらね。 聞いてあげるよ胸の内 知ってたよ 1人

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