人間農場と遥かな冥王星
「本日より、冥王星を《惑星》とする」
長官がマイクの前で語ったそれは、科学的営みから大きく外れた発言だった。政治が科学を蔑ろにするのはよくあることだし、《世界政府》の通常通りの狂気だと聴衆は一蹴した。現実世界で生きている《世界市民》にとっては、冥王星が惑星か準惑星かどうかなんて、人生と何の関係もないのだ。そんなことよりも、明日何と言って取引先に謝るべきなのかが大切である。
懐疑を持ったのは科学者だった。冥王星を惑星に戻すことで、一体何の意味があるのか、まったく分からなかっ