東京夜探偵 5 浅草
撮った写真を整理していると、なぜこの場所を撮ったのか、なぜここに自分がいたのかが思い出せない写真がときどきある。
この時の写真もそういうものの一つだ。夜の浅草だけの写真。ここへ辿り着く前にどこかを彷徨っていたと思うのだが、その記録がない、そして記憶がない…
それでは記憶のない写真を振り返ってみる。
まずは定番の雷門前。夜でも人は多いことがわかる。
この一連の写真を撮ったのは昨年6月。梅雨の季節のはずながら夜空は墨渡り雨雲は見当たらない。そのため背景は真っ黒で山門、五重塔が際立つ。
今は街灯あり、ライトアップありなのでよく見えるが、昔は漆黒の闇に包まれていただろう。その闇の中で映える色は赤。それも朱色のちょっとくすんだ感じの赤色。
朱色というのは魔除けの意味もあると何かに書いてあった。だからなのか、さまざまな場所に朱が使われている。
それは仲見世の裏側にも当てはまる。表の喧騒さとは打って代わり、朱に包まれた世界が静かにひろがっている。
レトロな琺瑯看板たち。ここでも真っ赤ではなく朱色を使っている。
「野放しにした犬」…野犬!?標語にも時代を感じてしまう。
浅草寺を離れて裏路地へ。聖の世界の寺院とは異なり、こちらは俗の世界。生活感がある路地だ。
東京スカイツリーは川の向こう。写真だと小さいが、実際にはもっと大きく見えていた。
最後に夜の静寂さを感じた一枚。