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吉井虎永芋ガレット

『ラストサムライ』以来、米国に拠点を移して活動していた真田広之が日本人の目から見ても納得出来る時代劇を米国で製作。真田広之が将軍で西岡徳馬が共演しているので、個人的には昔の大河ドラマ『太平記』を思い出す。
そんなドラマ『Shogun』の虚実を妄想しながら、長芋でガレットを作った記録。


材料

長芋   半分
塩麹   大匙1
干し海老 好きなだけ
卵    1個
出汁つゆ お好みで

1975年にジェームス・クラヴェルが発表したベストセラー小説『将軍』
1980年には三船敏郎や島田陽子出演でドラマ化。今回、真田は主演とプロデューサーを兼務して再映像化。
米國で優れたドラマに贈られるエミー賞で作品賞含め18部門で受賞。
特に真田は主演男優賞。これは以前のドラマでは三船敏郎が受賞を逃していた。正に日本の雪辱を果たした。
更に今朝の新聞によると、ゴールデングローブ賞の作品賞や主演男優賞等々にもノミネート。


皮を剥いた長芋を短冊に切る。

物語は1600年、關ヶ原直前の日本にオランダ船が漂着。
当時は最高権力者の太閤が亡くなった後、五大老による合議で政治が進められていた。中でも将軍の血筋である美濃原の子孫、吉井虎永と小姓上がりの石堂和成の対立が深まっていた。
船が漂着した伊豆の領主、樫木藪重は虎永に注進。何しろ船には大砲を始めとして大量の武器。
乗組員の中でイギリス人舵手のジョン・ブラックソーンが代表として虎永に謁見。
虎永の命を救うことがあり、信頼を得て、旗本に任じられる。
按針という日本名を与えられたブラックソーンの目から見た戦國の日本、そしてオランダやイギリスは新教國、以前から日本と交易していたポルトガルは旧教。キリスト教の宗派対立も描かれる。


卵、塩麹、干し海老投入。

主要なキャストは日本人、スタッフも日本から呼び寄せて、本物の時代劇を米國で作り上げた。
その甲斐あって確かに日本人の目から見ても、日本人の考え方や行動様式等がしっかりと描かれていた。
主役というべき吉井虎永ですが、徳川家康がモデル。決して腹の内は見せない。底知れぬ風がある。慈悲を見せたかと思えば、恐ろしく残酷なこともやってのける。それでも戰のない泰平の世を築きたいという志。
虎永に仕える武士達は皆、己の宿命や使命を心得ている。生きることも死ぬことも変わらないという死生観。そういうこともあってか、主要な人物がえっ?というタイミングで死亡して退場。
例外として浅野忠信演じる樫木藪重という人物。
必ず勝つ方に味方しようと策を巡らす。それでも生きることに執着しているのではなく、死に対する屈折した憧れや渇望を抱えた人物。
藪重が詠んだ歌に、その姿勢が感じられる。ネタバレになるので、ここでそれを紹介するのは控えます。


しっかりと混ぜ合わせる。

武家の女達も又、自分の宿命や使命に殉ずる覚悟。
細川ガラシャがモデルになっている鞠子は謀反人、明智仁斎の娘という宿命を背負いながらも、主君の虎永に命じられた按針の通訳を務める。
もう一人、特筆すべき女性は藤。
或る理由から夫と幼い子が切腹を命じられて寡婦になるが、虎永に命じられて按針の正室になる。
全体的に張り詰めた空氣溢れるドラマの中、鞠子と藤がやけ食いする場面は数少ないほっこり場面。
武家ではありませんが、お菊という遊女。
お色気要員でありながらも、自分のすべきことを心得ている遊女であり、教養や哲学めいたことも話す。おもてなしの心も一流。
按針もロンドンの売春婦は薄暗く、あまり清潔でない風があったが、お菊はまるで違うと感嘆。


フライパンへ。

日本人の目から見ても納得出来るものの、やり過ぎ?という場面も。
たとえば子が親を介錯したり、罪もない人が釜茹でにされたりといった具合。
但し戦國という荒っぽい時代であり、あくまでも史実から着想されたファンタジーと見れば、許容範囲。

外國人が珍しい時代ということもあり、按針は最初の頃は酷い扱い。
殴られる蹴られる、小便引っかけられる。
「汚らわしい蛮人」と會う人毎に言われる。
それでも人を引き付ける魅力がある人物のようで、最初はツンとしていた鞠子や藤も心を開き、藪重すらも言葉が通じないのにコミュニケーションを取ろうとする。
敵対していたカトリックの宣教師が便宜を図ってくれたり、按針を斬ると息巻いていた男が最終話では協力を申し出る。ちょっと感動。
虎永も按針のそうした魅力を感じたからこそ、傍に留め置いて活用しようと考えたのだろう。


ヘラで押し付けながら、両面しっかりと焼く。

最終回は、えっこれで終わり?という感じでしたが、聞く所によるとシーズン2や3の製作が決定。それならば納得。

虎永は家康、鞠子はガラシャ、石堂は石田三成とそれぞれモデルがいるが、按針ことブラックソーンにもモデルが存在。
ウイリアム・アダムスこと三浦按針。
ドラマとの相違として、按針が乗っていたリーフデ号は伊豆ではなく豊後(大分縣)の黑島に漂着。
家康に仕えたのも按針だけではなくオランダ人ヤン・ヨーステンも。


東京駅八重洲地下街のヨーステン像。

先走るようですが、その後の三浦按針について。
ただ、ドラマが史実の通りになるかはわからないので予備知識としてどうぞ。
ウイリアム・アダムスは相模國(神奈川県)三浦に領地を与えられて旗本に登用。領地を苗字として三浦按針と名乗った。日本人女性と結婚、家族を持った。
西洋式帆船の建造に關わり、外交顧問として家康に仕えた。
しかし家康の死後、江戸幕府は鎖国へと舵を切り、按針は活躍の場を失っていく。


吉井虎永芋ガレット

程よく火が通った長芋の食感がいい。塩麹で微かな甘塩味。
お好みで出汁つゆをかけても美味しく頂ける。
長芋には食物繊維やビタミンCやB1も豊富。
繋ぎに卵を使用したことでタンパク質も補給。
干し海老からカルシウム。
正に総合栄養食となった。

按針は東國を去り、長崎の平戸にあったイギリス商館に勤務。
そこから琉球(沖縄)へ渡り、薩摩芋を初めて日本に持ち込んだ。
イギリスに歸國する機會があったのですが、船長と衝突して取り止め。
日本に家族を持ったので、それも理由かもしれない。
『Shogun』シーズン2や3では按針の運命はどう描かれるのか?史実の通り日本に骨を埋めるのか歸國を果たすのか、そんな妄想を楽しみながら、吉井虎永芋ガレットをご馳走様でした。

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