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偽ヴィーガンと影武者

ヘッダー画像、何となくクリスマスっぽい?
こういうレシピ本を購入。

ド田舎在住ですが東京には何度も行きました。それでも、この無国籍食堂メウノータという店は知りませんでした。というより高円寺にあるということですが高円寺自体、行ったことないし、何処なのかも知らない。
ヴィーガン料理には興味あったのですが、なかなか適当なレシピがなかった。この本は妥当な値段で、自分でもそれなりに作れそうなレシピが載っていたので購入。
早速、一品を自作。


材料

里芋              11個
大蒜              1欠け
ローズマリー          3本
バター             30グラム
塩               小匙1
エクストラヴァージンオリーブ油 大匙2
ピンクペッパー         適量
黒胡椒             適量

ヴィーガン料理なのですが、このレシピで一つ困ったこと。
ヴィーガンバターの作り方が載っているのですが、原料がココナッツオイル。このオイルは飽和脂肪酸が多く、体にあまりよくないと聞く。
それにド田舎のスーパーではなかなか手に入らない。そこで本物のバターを使用する。
これではヴィーガンの偽物?
偽物と言えば影武者。ということで影武者、特に徳川家康にまつわる影武者を妄想しながら料理した記録。


里芋を圧力鍋で煮る。

戦国大名に影武者がいたという話はよくある。それを題材にした映画や小説もよくある。
昔なら黒澤明監督の『影武者』
隆慶一郎の小説『影武者徳川家康』
最近見た北野武監督映画『首』にも徳川家康の影武者登場。
徳川家康の影武者話の元祖というべき本が明治時代に出版された村岡素一郎著の『史疑徳川家康』


大蒜を微塵切り。

林羅山という儒学者が家康から聞いたこととして、
「又右エ門という者に売り飛ばされて、9歳から18歳位まで駿府に居た」
教科書に出てくる正しい歴史だと、家康は6歳で駿府に人質として送られる途中、戸田康光によって尾張の織田信秀に渡され、二年間を其処で過ごしたとなっている。本人が語ったことと食い違っていることから、村岡は疑問を抱き、調査。


ローズマリー1本を微塵切り。

今川家の下にいた松平竹千代が長じて松平元康となったが、桶狭間の戦い後、阿部正豊という家臣により殺害され、それ以降は影武者だった世良田次郎三郎元信が入れ替わり、徳川家康となった。というのが村岡の結論。
正史では阿部が斬ったのは家康の祖父、松平清康でその事件は守山崩れと言われていますが、これは徳川家による捏造で、実際に殺されたのは元康。
桶狭間後といえば、今川義元という頼りにしていた大物が消え、松平家つまり徳川家は今川、織田、どちらに付くかで揺れていた時期。当主が下剋上で消えたとなると早晩、三河は織田か今川に吞み込まれて自立の芽は完全に潰える。それを恐れた家臣達が影武者にそのまま家康の役を続けさせることにした。


茹で上がった里芋の皮を剥き、ぬめりを洗い落とす。

元康の子、信康が成長して家督を継げば、お役御免で影武者を隠居させるつもりでいたのが、思わぬことに影武者は結構な活躍を見せて、徳川と改姓した家を大きくしていく。
そればかりか信長の命令又は要請と称して元康の正室、築山殿ばかりか嫡男の信康まで処刑。
影武者にしてみればお役御免となると消されるので、身を守るために先手を打った?


オリーブ油、大蒜、ローズマリー、里芋をフライパンにかけて弱火で加熱。

影武者の元信は自分の本当の子である秀忠に跡を継がせるために元康の次男、秀康もぞんざいに扱い、家督も譲らず。
秀忠の後継問題が起こった時には、長幼の序を言い出して、兄が跡を継ぐのが当然と裁定したくせに、自分の後継者は兄の秀康を差し置いて弟の秀忠?
これも秀忠以降が元信の実子と考えれば、合点。
正史では徳川家康の名前の変遷は、
竹千代→元信→元康→家康となっていますが、元信と元康は別人だったということ。ちょっと込み入っている。


里芋が色づいてきたら、バターを投入。

村岡の説を元ネタとして隆慶一郎は小説『影武者徳川家康』を著すが、入れ替わりの時期を桶狭間後では早過ぎるとして、関ヶ原の最中に設定。
これは作劇上の都合ということではなく、家康の書状等を調べた結果、関ヶ原以前と以後では人が変わっていると隆は考えたから。つまりまったくのフィクションではなく彼の自説。
隆の処女作『吉原御免状』でも、徳川家康は入れ替わっていることが記されています。


溶けたバターを絡めながら、黒胡椒投入。

これらの話とは別の影武者説。
大坂夏の陣で獅子奮迅の働きを見せた真田幸村。
徳川家康を追い詰めて、金扇の馬印も倒れたばかりか、実は家康自身も討ち死に。
密かに埋葬されて、それ以降は小笠原秀政が家康役を一年間務めてから、正式に家康が死んだと公表。
正史では秀政は夏の陣で戦死となっていますが、本当は死んだのは家康だったということ。
総大将が死んだとなると士気に関わり、東軍総崩れ、それこそ豊臣方にミラクルが起きる恐れありということで偽装?


ピンクペッパーを散らして、ローズマリーを飾りに置く。

大阪府堺市の南宗寺に徳川家康の墓が存在。
討ち死にした家康の遺体をそっと埋葬したと言われています。
昔、訪れた時、
「何故、ここに?」とお寺の方に問うてみましたが、
「分骨したんです」との答え。
嘘ですな。
知らないか、面倒くさいからそう答えたのか。どちらかでしょう。
事前に調べて知っていたのにわざわざ訊いた私も人が悪い。
二代将軍秀忠や三代目の家光もここに墓参したと伝わることから、南宗寺にはやはり何かある。


偽ヴィーガンと影武者

里芋のねっとり感に塩バター味がよく絡む。大蒜のパンチ力の強さよ。
ローズマリーの香は好き嫌いが分かれるかもしれない。
黒とピンクのペッパーがよいアクセント。
ローズマリーには記憶力や集中力を高める効果。消化や血行も促進してくれる。
里芋の食物繊維、ガラクタンもしっかりと摂取。

「元の木阿弥」という言葉。
語源は影武者。
大和(奈良県)の大名、筒井順昭が亡くなった時、跡を継ぐ息子はまだ二歳。そこで木阿弥という僧を影武者にして、息子の順慶が成長するまで凌いだ。順慶が成人すると用済みということで、木阿弥は元通りの僧に戻ったという故事から出来た言葉。
影武者が必要だったのは家臣達ということ。主君という核がなくなれば、家中はバラバラになり、他国から侵略される。家康の場合でもそれが当てはまる。

それにしてもヴィーガンバターの代わりによつ葉バターを使ったが、ヴィーガンバター自体が代用品と考えると、偽料理ではなく本物を作ったことになるのか?何だかよくわからなくなってきた。そんなことを妄想しながら、偽ヴィーガンと影武者をご馳走様でした。

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