"DIVIN" Vol.20
『DIVIN』(ダイヴィン)は、国内外の様々な記事や読んだ本、面白いinstagramアカウントなど、生活している中で得た「誰かに教えたい情報」をお伝えするニュースレターです。
歳下に教えを請う大切さ
自分よりも経験が豊富な年上の人に自らのキャリアや事業について相談し、道筋をともに立てていく。
「メンター」と呼ばれる”人生の先輩”の存在は、アメリカ・シリコンバレーをの起業家を中心に一般的となり、今では日本でも起業家、スタートアップ関係の人々だけでなく大手企業に勤める人の間でも広がっている。
さて、冒頭で「自分よりも経験が豊富な”年上”の人」と述べた。
やはり一般的には”メンター”というと、自分よりも5歳から10歳上の先輩たち、つまり5年後、10年後になりたい、もしくは追い越したいという人たちをロールモデルとして、アドバイスをもらうものだ。
しかし、”人生の先輩”に年齢なんて関係あるのだろうか?
IDEOの創業者Tom Kelly氏が提唱したことで有名な「リバースメンター」という概念。
歳下の人に教えを請うというものだ。自分よりも若い人を部下としてじゃなく、1人の個人として期待し、意見を聞き、ともに行動していく。
アメリカeBeyのCEOであったJohn Donahoe氏。PayPalの元会長で今はNIKEのCEOを務める。アメリカで、いや世界でも有数の経営者だ。
eBeyの時価総額が400億ドルに跳ね上がった2012年、JohnはベンチャーキャピタリストのMarc Lowell Andreessenに電話をかけ、『シリコンバレーで最も有望な若いアントレプレナーを紹介してほしい』と頼んだ。
既に経営者の中で知らない人はいない、トップ経営者であったJohnがわざわざ若い起業家を紹介してほしいと依頼したのは訳があった。
eBeyのWEBサイトは垢抜けず、もっと洗練されたデザインにしたいと思っていたJohnは若い有能な経営者のアドバイスを求めていた。
このときMarcが紹介したのが、Airbnbの創業者で、まだ30歳のBrian Cheskyだった。
JohnはAirbnbの本社まで車を走らせ、20歳も年下のライバル企業のトップを質問攻めにした。
常に変化を求める顧客のニーズをどうやって満足させるのか。サイトのデザインや考え方など多岐に渡る。
2時間掛けてメモをぎっしりとった後、Johnが帰ろうとするとBrianが慌てて彼を止め、「今度は僕が教えてもらう番ですよ!」と話を始めた。
今度はBrianが経営やチーム組織、リーダーシップなどについて、アメリカで最も有能な経営者の1人に教えを請うた。
その日以来、2人は定期的に会うようになり、お互いの考え方やノウハウを共有するメンター同士となった。
教えを請う相手は年上だけとは限らない。歳下と仲間との会話の中で、普段考えもしない新しい考え方や、彼らの世代では当たり前となっている常識、カルチャーを学ぶことができる。
自分も「年上のメンターを見つけたい」と思っていたが、そんな考え方も古いのかもしれない。
そして、そんな記事を読んでいた時にふと思い出したことがある。
自分は2016年から2019年にかけて海外で生活していたが、そのときに不定期にブログを更新し、自身のウェブサイトにUPしていた。
そのサイトのドメインやサーバーの更新のメールが届き、久しぶりに2年前に書いた自身のブログを読んだ。
そのブログにはその時に何を考えていたか、何をしたのか、そして将来どんなことをしたいのかが書かれている。
30歳のいまの自分にとっては28歳の”歳下”の自分。歳下の自分が当時感じ、考えていることを通じて学びになることは多い。
少し変則な「リバースメンター」ではあるものの、まずは今すぐできることとして、まさにこの"DIVIN”のようにその時考えていることをアウトプットし続けることをやっていこうと思う。
将来このnoteを読んだ自分自身へのメッセージとしても。
”GAP”を見つめて
先日、渋谷のヒューマントラストシネマで「行き止まりの世界に生まれて」を鑑賞した。
気付けば、春以降一度も映画館に行ってなかったため半年以上振りの映画館となった。
イリノイ州ロックフォードに、『行き止まりの世界に生まれて』の主人公となる少年たちは生まれ育つ。
白人のザック、アフリカ系黒人のキアー、そしてこの作品の監督でもあるアジア系のビンの3人がこの映画の主役だ。
出会った頃の10代から撮影を始めたビン。最初の頃は照れくさがったりするものの、長年撮影を続けているせいと何より彼らが親友同士ということもあり、撮影者/被撮影者という関係ではなく、とても自然な雰囲気で映像に写っている。
本編には彼らの喧嘩のシーンも入っており、そんなシーンも撮影が出来ているのはそれはいつもの日常としてビンが日々撮影をしているからだろう。
その姿が自然すぎて、ドキュメンタリーではなく台本がある映画のように見えるほどだ。
スケートボードを通して知り合った彼ら。彼らとその周囲の人々の成長や葛藤の12年間を、この映画は追っていく。
序盤のシーン。町中をスケートボードで疾走していく。美しい日差しを浴びて、観るものを一気に引きつけるテクニックを見せる。彼らはどう見ても”ストリートの主役”だ。
美しい映像のスケートボードドキュメンタリーかと思いきや、その映画は次第にリアルな、苦悶や葛藤が明るみに出るドキュメンタリーとなる。
邦題は「行き止まりの世界に生まれて」だが、原題は 「Minding the Gap」。
“Mind the gap”というのは、「足元に段差があるから気をつけて」と言うときの英語のお決まりのフレーズ。アナウンスやサインに描かれるような、一般的な言葉だ。
しかし、ここではギャップに敏感であること、もしくは人生の中のギャップに気を付けながら生きていく、歩んでいく姿を捉えていると思われる。
スラムのような荒廃した街、ロックフォードで暮らす彼らには様々なギャップが存在する。溝や段差を意味する”ギャップ”だが、経済”格差”という意味だったり、家族との信頼関係の“溝”だったりと、3人の主人公たちのそれぞれのギャップを映し出していく。
3人に共通するのは、ロックフォードで1/4の人が体験するという家庭内暴力の問題。義父や実父から受けた想像を絶する暴力や、両親間での暴力。
そして、主人公の一人であるザックも妻に暴力をふるっていることが分かる。
物語の序盤、キアーが語る出会った頃のザックのエピソード。スーパーヒーローであり、リーダーであったザックが大人になり、大人になることの葛藤の中で、自らも暴力について苦悶し、反省する。
ザックが泣きながらビンに語る言葉は、なんとも切なく、哀しくて印象的だ。
家庭内暴力の蔓延の深い問題・原因は、親世代から子世代への暴力の連鎖だ。
ザックもキアーも、そしてビンも、言ったように程度はさまざまだが、父親に暴力をふるわれて育っていた。
そしてビンの母親はビンの義父である、夫に暴力をふられていた。
自分の母親を招き、ビンは実の母にインタビューを始める。彼の母が語る言葉たち。このインタビューシーンは本作の中でも最も心を打つシーンのひとつだ。
黒人のキアーも同じく父親に暴力を受けていた。しかし、今は亡き父を思ったとき、彼は愛をもって厳しく教えてくれていたのだと考え、父のお墓に行き、涙を流す。同じ暴力を振るわれた者同士なのに、どうしてこれほどにも捉え方が異なるのだろうか。
家庭で問題を抱え、居場所が無かった3人にとって、スケート仲間は彼らにとって唯一の居場所、もうひとつの家族であった。
ビンの先輩であり、スケートボードショップの店長はカメラを向けられ、スケートボードが持つ力についてこう語る。
「スケートボードには単にカッコいいからとか友だちができるから、という以上の意味がある。ここから抜け出すことや、生きるか死ぬかといった類いのものなんだ。」
何度でも観たい、心に残る映画だった。
キノコでつくるパッケージ
パブ文化の本場イギリスで、ノンアルコールカクテル「モクテル」の火付け役となった「Seedlip」
可愛らしいパッケージデザインと、ミレニアル世代を中心としたノンアルの人気により、世界中で知られるブランドとなった。
Seedlipは砂糖や甘味料を使わず、自然由来のもので甘みを出している。ハーブ、スパイス、果物の皮、樹皮などを用いて、300年以上前の蒸留方法を参考に作っている。
そんなSeedlipの新しいパッケージは自然に簡単に戻すことができる、マッシュルームで作られたパッケージだ。
Seedlipは、段ボールやプラスチックが環境汚染、ゴミ問題になっている点を伝え、きのこを使ったパッケージを採用した理由を説明する。
世界の20億1,000万トンの都市ごみの44%がプラスチックと紙であるという世界銀行の調査結果を引用する。そして、段ボールは17パーセントを構成している。
このパッケージは、コンポストによる再生が簡易であり、生産するのに必要な資源が少ないとしている。
このパッケージはギフト用の一部商品で提供を開始。イギリスでは今月から、アメリカでは来月から予約ができるようになる。
今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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edited by Ayumu Kurashima
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