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『経理フロー』のチェックポイント一覧 ~購買管理プロセス(発注⇒仕入⇒支払⇒仕訳⇒月次チェック⇒支払)~

『経理フロー(購買管理プロセス)』でチェックすべきポイントを一覧にしています。

もし、会社がIPOを目指すとか、監査法人からの監査を受けるということになった場合は、これらのポイントを『会社がチェックしているか?』について監査法人が確認することになると思います。

また、経理フローの中でチェックしたことは、その『チェックをした』ということが、第三者が分かるようにしておくとよいです。

例えば、請求書をもとに仕訳を会計システムに入力した後に、入力した仕訳の金額と請求書の金額が一致していることを確認した場合は、請求書の金額が書いてあるところ(仕訳金額と照合した箇所)に、赤ペンなどで✓(チェックマーク)をつけるといった具合です。

こうやっておくことで、IPO準備や監査を受けるときに、監査法人から『会計システムに入力した数字(仕訳金額)が正しいかどうかは、どのようにして確認していますか?』などと聞かれたときに、請求書を見せながら『会計システムに入力した仕訳(仕訳金額)は、請求書と照合しています。両者が整合していることを確認できたら、請求書の金額の横に✓(チェックマーク)をつけています』と、実際に請求書を見せながら説明することができます。

監査法人としては、その説明を受けた後に実際に請求書がつづられているファイルを見てみます。
全ての請求書に✓(チェックマーク)が入っていることが確認できれば、『この会社はすべての請求書を会計システムに入力した仕訳と整合しているか確認しているんだな。これだけ、ちゃんとチェックしていれば、会計システムへの仕訳入力の入力ミスなどは防げていそうだな。この会社の会計データ(会計システムに入力されたデータ)は正しそうだな。』という判断ができます。

このほかにも、『経理フローでチェックすべきポイント』を✓(チェックマーク)として目に見える形で残しておくことで、経理部の新入社員に対してチェックすべきポイントが説明しやすくなりますし、経理人材の育成にもつながります。


1.購買管理プロセス(発注⇒仕入⇒支払⇒仕訳⇒月次チェック⇒支払)


【発注時】発注内容に誤りがないか確認する

発注数量、発注する商品内容に誤りがないか確認します。
特に発注作業を発注システムを使って発注している会社で『発注データを手動で作成している場合』や、『エクセルで作成した発注データを発注システムに取り込んで発注している』場合には要注意です。
手作業だとヒューマンエラーが発生する可能性があります。
なので、発注データを作成した人とは別の方が発注データの作成が正しく行われているかチェックする作業を『経理フロー』に入れます

【仕入時】発注した人とは違う人が『発注書控え・納品物・納品書』の3つを照合する

次のような間違いを発見するめに『発注書控え・納品物・納品書』の3つを確認します。

  1. 発注した商品とちがう商品が届いた

  2. 発注した商品が届いたけれど、納品書に書かれている商品名がちがう

なお、発注した人とは違う人が『発注書控え・納品物・納品書』の3つを照合する理由は、商品の横領を防止するためです。
もし、発注した人と同じ人が『発注書控え・納品物・納品書』の3つを照合するフローだった場合、自分が欲しい商品を発注して商品が届いたときに、商品と一緒に発注書控えと納品書を隠してしまえば、書類として何も会社に残らないため、盗んでもバレないという具合です。

【支払時】請求書と納品書を照合する

届いた商品(購入した商品)の分だけが請求されているか確認するために、請求書と納品書を照らし合わせます。

理由は、届いていない商品(買っていない商品)の請求書が送られてきているかもしれないからです。

【仕訳時】請求書と仕訳伝票を照合する

経理では請求書の内容を『仕訳』にして会計システムに入力します。
具体的には、次のようなことを経理担当者が請求書から判断していき、請求書の内容を『仕訳』として会計システムに入力していきます。

  • 取引の内容(何を買ったか)

  • 取引日(伝票日付)

  • 勘定科目(正しい勘定科目は何か?)

  • 消費税区分(「課税仕入」「課税対象外仕入」など消費税がかかる取引か?)

  • 消費税率(10%、8%、経過措置10%・8%などの税率の選択)

  • 取引金額

  • 支払予定日

その判断を基に、会計システムに仕訳を入力していきます。
なお、入力された仕訳には『仕訳伝票』が付きます。
請求書を紙で保管しているときは、この『仕訳伝票』を請求書の右下に書いておくと便利です。

次の『【月次チェック】会計システム上の買掛金や未払金の金額が正しいかチェックする』ときに、月末時点の買掛金残高と請求書を照らし合わせる作業をするのですが、請求書の右下に『伝票番号』を書いておけば、仕訳から請求書が見つけやすくなります。

会計システムに入力した仕訳は請求書と照合して、取引金額や消費税の課税判定(消費税がかかる取引か?かからない取引か?)、消費税率の判定(消費税率は何%か?)など、作成した仕訳が税金や企業会計の面から正しいか確認します。
この確認作業は、仕訳を入力した人よりも経験が長い人、つまり、正しいかどうか判断できる能力がある人が行います。

会計システムによっては、入力された仕訳に対して経理部長などの権限者が会計システム上で『承認』ボタンを押さないと仕訳が確定しない機能(会計システムに正式に登録されない機能)があります。

【月次チェック】会計システム上の買掛金や未払金の金額が正しいかチェックする

『月次チェック』というのは、月末時点の会計システムに入力された数字を使って、その数字が正しい数値か(請求書の金額と一致しているかなど)を確認する作業です。

日々の仕訳入力は『【仕訳時】請求書と仕訳伝票を照合する』のところで書いた通りするのですが、それとは別に、月末時点の買掛金や未払金の残高が正しいか確認することが大切です。

『木を見て森を見ず』ということにならないように、月次チェックで全体的にチェックをします。
【仕訳時】請求書と仕訳伝票を照合する』のところで書いたチェックが『木を見る』で、『月次チェック』が『森を見る』というイメージです。

月次チェックの方法には2つあります。
1つ目が『買掛金回転期間をチェックする』、2つ目が『買掛金残高と請求書の照合』です。

まず、1つ目の『買掛金回転期間をチェックする』についてです。
これは、月末時点での会計数値(会計システムに入力されている数値)を使って分析します。

具体的には、事業年度の開始月から当月末までの『試算表』を会計システムから出力して、その試算表にある『仕入金額、買掛金残高』を使って買掛金回転期間を計算します。
そして、その『計算された回転期間が、会社の支払いサイトと整合しているか』を確認します。

例えば『今月仕入れた商品の代金は、翌々月までに払う』という方針を会社が採っていた場合、支払いサイトは2か月です。
なので、買掛金回転期間を算出すると基本的に2か月になるはずです。
もし、支払いサイト2か月の方針をとっている会社なのに、買掛金回転期間が4か月となった場合は、会計システムに入力した内容(入力した仕訳の内容)に誤りがある可能性があります

その場合は『なぜ、会社が支払いサイト2か月の方針をとっているのに、買掛金回転期間が4か月になっているのか?』その理由を、会計システムに入力された仕訳伝票((借方)仕入/(貸方)買掛金)を一つ一つ見て、原因を突き止めます。

2つ目の『買掛金残高と請求書の照合』は、月末時点の試算表にある『買掛金残高』が、月末時点で未払いとなっている請求書の金額と一致しているかを確認する作業です。

この作業をするためには、会計システムに仕訳を入力するときに『取引先』を入力しておく必要があります。
実際に、試算表の買掛金残と請求書の金額を照合するときには、会計システムから『取引先別の買掛金残高』を出力します。
手順としては次のようにしていきます。

  1. 月末時点の『試算表』と『取引先別の買掛金残高』を会計システムから出力する。

  2. 『試算表』と『取引先別の買掛金残高』の金額が一致していることを確認する。(出力ミスなどにより両者の金額が一致していない場合があるので、念のため確認します。)

  3. 取引先別に、月末時点で未払いとなっている請求書の金額と『取引先別の買掛金残高』が一致していることを確認する。

【支払時】支払金額が正しいか確認する。

請求書で請求されたお金を支払うときには『支払う前』と『支払った後』の2回チェックをします。

まず『支払う前』についてです。
支払をネットバンキングを使って行うケースを前提に解説します。
まず、会計システムから『支払予定日』をキーに『支払いデータ』を抽出します。
抽出した『支払いデータ』をもとに、ネットバンキングで振込み用のデータを登録します。

次に、ネットバンキングで登録したデータが、会計システムから出力した『支払いデータ』と整合しているか確認して、振込金額や振込先などに誤りがないか確認します。
払おうとしている金額が正しいか確認するのが『支払う前』のチェックです。

次に『支払った後』のチェックです。
ネットバンキングで支払った後に、支払済みの金額が確認できる画面が表示されると思います。
その『支払い済みの金額』と、会計システムから作成した『支払いデータ』(支払うべき金額)が整合しているか確認します。
払った金額が正しかったかを確認するのが『支払う後』のチェックです。


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