
山梨県甲府市 五味醤店〜発酵文化を発信する「まちのおみそやさん」
中央線ユーザーはよく目にする、フリーザ色の電車。未だ利用したことがなく、ある時ふと思い立ちデイトリップへ出発!
行き先は山梨県甲府市。かの武田信玄ゆかりの地、信玄餅のふるさとです。大河ドラマ「どうする家康」の阿部寛さんのビジュアルを頭にちらつかせながら往路に着くこと1時間半。近い。
◎米麹と麦麹の合わせ技が冴える甲州みそ
今回訪れたのは、甲府駅から車で10分ほどにある五味味噌醤油株式会社。明治元年に創業し、みそとしょうゆを製造されていましたが、現在はしょうゆの製造は中止し、みそを醸造する家庭的なみそ蔵です。
甲州みそは、米麹と麦麹の両方を使って仕込むみそ。この珍しい2種類の麹を使う理由は、この土地の特性にあるそう。
どうして甲州みそが生まれたの?
みそのバリエーションは「麹の種類」がポイント。
そして、麹の種類は、「主食が何か」で決まります。
甲府は狭い盆地で斜面が多く、稲作に適していません。
なので、お米の収穫が少なく、関東みその特色である米麹だけでは、お味噌を作るのには足りなかったのです。
時は遡って戦国時代。
武田信玄の兵隊が進軍する時に食べ物の腐敗を防ぐおみそは、携帯食に欠かせない調味料でした。おみその増産を考えた信玄は、冬にほったらかされていた田畑の裏作として、麦を育てることを考えました。
大麦をおにぎりに混ぜて麦飯にし、さらに麦麹をたくさん作り、米麹不足を補ったのではないか。
こんなストーリーが浮かんできます。
甲州みそは、主食の不足を補うための知恵から生まれたのです。
なんと、武田信玄が命じて作られたみそ!阿部寛考案のみそ!戦国時代から現代までその時代に生きる日本人が同じ製法で作られる同じおみそを食べている事実。
学生の頃、歴史の授業はさっぱり頭に入らなかったのに、食文化を絡めた途端、どうしてこんなにも興味深く感じるのでしょうか。
こういった歴史に触れるたびに、代々変わらぬ製法を引き継ぎ、食文化を継承しているみそ蔵さん、しょうゆ蔵さんを尊敬せずにはいられないのです。
◎おかいもの
甲州みそ 1kg 740円(税込)

◎甲府の郷土料理
具沢山のほうとう
甘すぎない甲州みそにかぼちゃの甘みが煮汁に溶け込んで、心も体もあたたまるほうとう。この料理も米と麦の栽培に適さないこの土地だからこそ生まれた名産とのこと。幅の広いほうとうの麺は塩が練り込まれていないので、一度ゆでる必要もなく、そのまま煮込んでOK。

五味醤油店では、毎年手前みそ教室を開催されていて、今年も12月に始まっているようです。同店は、直売所をはじめ、このような体験教室が開かれるKANENTEや、カフェTaneも運営されており、若い人たちが発酵文化に触れる場所を作り出しています。直営店で買い物している時も、みそや麹を買い求める幅広い年齢層の地元の方々がいらっしゃっていました。まさに「まちのみそやさん」。地域で生まれた文化を現代に受け入れられるようにわかりやすくアレンジし、親しみやすい方法で伝える発信拠点。
また近々フリーザに乗って、みそを買いに行きたいと思います。
※トップ画像は五味醤油店にご提供いただきました。
五味醤油店
山梨県甲府市城東1-15-10
【営業時間】 10:00~17:00
【定休日】 日曜、祝日(お盆、年末年始)
https://yamagomiso.com/