才能を発揮する豊かさを知ってほしい
英語が得意とか、医学に邁進しているとか、法的思考回路が出来るとか、そういった様な専門知識を活用できる、それだけではない。
ひとりぼっちの人に気が付いて声をかけてあげたり、
業務超過の同僚を手伝うことに見返りを求めなかったり、
さり気なくサポート出来たり、
プレゼンが上手かったり。
自分の光る部分を見つけて、活かすことが出来る、それが仕事なのではないだろうか。
……
もちろん、専門知識が強いことは言うべきにあらずで、持っているに越したことはない。しかし、その専門知識があるにせよ、ないにせよ、それを活かすことができるのは各々のキャラクター次第ではなかろうか。
会社から支給されたアイフォンの操作がままならない。入社したてで誰にも聞けず、説明書と睨めっこしている私に声をかけてくれたのは、取締役だった。近くの席の人に、
「君、あやとがアイフォン使えないから、ちょっと教えてあげてくれない?」
と。すると、取締役の人望から簡単に人が集まってくる。結果、悩みはものの数分で片付いてしまったのだった。
こうして組織全体に目が行き届き、即ご対処してくださるから、社長の次に偉い取締役でいらっしゃるのだろうと思った。もちろん、その思いやりを支える後ろには経営学についての知識と教養もお持ちであるが。
入社したばかりで、人の顔も名前も分からない。フリーアドレスだから、どこに同じ部署の人がいらっしゃるかも気が付かない。だから、お土産があたらない。
誰とも話さず座っていた私に、自分の分のお土産のおせんべいを渡してくれたのが部長だった。それは何処からともなくいらっしゃり、とても嬉しかった。
座席固定でなくとも、部下の様子を把握し、優しくできるから、部長でいらっしゃるのだろうと思った。もちろん、リスクマネジメントのノウハウはお持ちでいらっしゃるが、それだけではない。
……
人間社会は残酷なもので、見返りなんて殆どない。一度、楽しみや喜びを与えてしまえば、もっともっとと求められることはあっても、「ありがとう」で返して貰えることは殆どない。
それでも会社はプライベートな場所とは違い、人を見渡せる能力や人を気遣う思いやりを発揮することで、自分の専門知識を活かすことができる。
自分は、仲間はずれや好きな人だけと仲良くすることが苦手。呼ばないと可哀想と思い、プライベートの飲み会は、みんなに声をかけるから、目立ってしまう。故にかえって私が悪口の的になり、最終的には私が外される。
しかし、仕事では異なる。全従業員、一人の漏れもなく参加してもらうコンプライアンス意識調査を始める。コンプライアンス事務局だけのコンプライアンスにならないように、まずは従業員と対話を始めようとの思いからであった。この時、好きな人だけとか、役職者だけとはしない。みんなで一丸となって、意思形成をしようというものであった。
きっと、プライベートなら失敗しただろう。しかし、仕事だから、その取組は功を奏し、バリューあるデータとして、数百もあるグループ会社の中で最高の取り組みとの評価をいただいた。
ただ仲間はずれは嫌いとの思いが、会社への貢献になったのだった。決して法的知識が成した成果ではない。
……
人を思いやれる優しさ、行動力、気配り、配慮、見渡す力。
それらの才能はプライベートだと、搾取されがちであろう。しかし、仕事であれば活かすことができる。そんな自分のキャラクターを活かすことで、自分の教養が役に立ち、組織に貢献出来ることは、思いやりのキャッチボールがに他ならない。
こうやって、自分の正義や考えを多くの人とキャッチボールしながら、世の中と繋がり、結果として自分の専門知識が活きることは、アピールの必要のないリア充で、目には見えないが、豊かである。なぜなら、自分が自分であるがために出来た居場所なのだから。
それが、私の仕事での気づき。