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ドラマは現代社会を描く、認知症と障がいについて

こんにちは。
福岡でテレビショッピングを中心に映像ディレクターをしている別府です。3児の母、共働きのフリーランスです。

今日は「ドラマは現代社会を描く」シリーズ
私は常々、ドラマは社会を映す鏡だと思っていてその視点で興味深くみています(仕事の映像ディレクターと趣味を兼ねて)。

今まで妊娠出産中絶や障がいについてなど、時期によって別のドラマなのにモチーフが被ることがあるので関連して違いなど考察するのが楽しいです。

そんななか多様性について。特に認知症。
現在もうすぐ終わるんですが共にNHKのドラマ「虎に翼」そして「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」の認知症の描き方から、障がいとハードルについて書きたいと思います。


「認知症」を描く今のドラマ"とらつば"と"かぞかぞ"

「虎に翼」第23週、主人公の佐田 寅子(伊藤沙莉さん)が再婚した星 航一(岡田将生さん)の実家で共に暮らす義理の母、星 百合(余 貴美子さん)の認知症が進むエピソードが登場します。

百合は、もともと後妻で星家に入り航一の父と結婚。
航一の2人の子供(百合からは孫)も実子ではないが食事など家事全般を受け持つしっかりした大人の女性として描かれていました。

そして「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(以下かぞかぞ)の第8話では、主人公の岸本 七実(河合優実さん)が母ひとみ(坂井真紀さん)の高熱がきっかけで実家に帰ると祖母の芳子(美保純さん)の様子がおかしいことに気づきます。

芳子はもともと奔放な性格で、車椅子で生活する障がい者になった娘とダウン症の孫の世話をしに岸本家に手伝いに来ています。料理が茶色いものばかりでズボラでガサツだけど愛のある関西弁でとにかく陽気な大阪のおばちゃんという印象です。


きっかけは"日常の違和感"

すごく自然なのが、認知症になっていく様子のリアルな描かれ方
どちらも主人公が中心なので主人公が祖母の異変に気づく場面が秀逸です。

あれ?と思いながらもまだ大丈夫、そんなまさか、いや、おかしい。
でもどうする?維持、いや、これは大変だわ!そして事件勃発!
という感じがドラマなのでそこは脚本と演出で端的に見事に描かれています。

秀逸な"戸惑いの空気感"

もちろん本当に家族が認知症になったら個々の状況や本人の個性などで千差万別だと思います。しかしこの本人と家族の戸惑いの空気感がすごく切ない。

ポイントは背中の演技。
これがベテラン女優さん、お二人とも秀逸。
涙と背中で演じる。すごかったです。

特に余貴美子さん演じる百合は、自分の行動が思い出せなくなり、伊藤沙莉さん演じる寅子に泣きつき「ごめんね、ごめんね」と嗚咽しながら訴えます。そこで寅子は「謝る理由はひとつもない、そんな弱い人の力になりたくて法律の道へ進んだ」と泣きながら宥めながら自分に言い聞かせるようなシーンへ続きます。

星家の家族も、孫3人が一緒に暮らしていますがその対応をめぐって孫同士も喧嘩。昔の百合との関係もあり寄り添いたいけど手に負えず悔しい孫と関わりたくない孫の違いなど様々なケースを丁寧に描いています。

一方、かぞかぞの方は、最初は河合優実さん演じる七実が母の高熱に気づかなかったりダウン症の弟のご飯を作ってなかったりすることを責めてしまいます。
しかしだんだんとこれは違うという違和感が感情移入させます。

昔と今の時間の狭間で葛藤で"個人の尊厳"

そして純粋で優しい祖母の後ろ姿を見ては気持ちを持ち直そうとします。
おそらく次回は認知症が進行して描かれる神回になりそうな予感ですが、この昔の恩と今の怒りの心の葛藤がすごくこちらの心を揺さぶります。

一緒に住んでいなかったから気づかなかった祖母の認知症。
一緒に住んで分かる対応の大変さと怖さと面倒さ。

ここで大切なメッセージはどちらも「個人の尊厳」
どちらも認知症が進行しても、長年生きてきた歴史があり今認知症が影響しないときの人間としての尊厳があるという大切なことに気付かされます。

特にかぞかぞは家族全員が大変な状況。(しかも実話!)
七実の周り、母は車椅子、弟はダウン症、父は学生時代に他界。
ここにおばあちゃんの認知症もくるかい!
と現代版「渡る世間は鬼ばかり」という印象すら感じます。

なのでそもそもが個人の尊厳を大切にしないと家族が壊れてしまうというすごい設定。しかも実話です。(岸本奈美さんはnoteもされている売れっ子作家さん)

だからこそ、個人を大切にすることをよくわかっている、笑い飛ばせる家族のなかでもひっそりと霞のように家族に不安な影を落とす認知症の怖さというか大きい出来事なんだということを思わせます。

私が思う認知症と障がいについて

私は過去、眼内コンタクトICL手術を行い、視力0,04から今は1.5に回復しました。何かのキャッチコピーで見た「眼鏡がなければ障がい者」という言葉。私も昔は眼鏡やコンタクトなしでは文庫本ひとつ目から20cm離れたら読めないほどのど近眼でそれら無しに生活は確実に出来ませんでした。

そのど近眼の私と弱視の人の違いはただ社会との距離感だけで線引きなんて本当はないんじゃないか?と思います。

それは足が義足で歩きにくい人と妊娠臨月の女性のように。
私も3度妊娠経験しましたが暮らしにくさこの上無し、ただ生きているだけで呼吸が苦しい、歩く立ちあがる、爪を切る、靴下を履くという日常の動作もつらい。

だから社会の方の心と仕組みが寛容で便利で過ごしやすい社会になれば、障がいを持つ人だけじゃなくて全員に暮らしやすい社会になる。

自分が痛みを経験して、強く感じます。
それが私が表現する活力かもしれない。それは怒り。
他人に厳しい大人が多すぎる。

ドラマを見て、自分ごと化できる人が増える、そして少しでも心のハードルが下がるといいなと思うので、2つのドラマを是非とも見てもらいたいなと思いました。


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