退職の練習㊴読書感想文④「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」ブレイディみかこ
この本のことは大分前から気になっていた。タイトルに色がついているし、イギリス在住の日本人が書いた本なら、かなり面白そうだ。
私の所属する読書会の課題本になったので、読んでみた。
面白かった!
ときめきの片付け祭りで、捨てようかどうしようかと思った本で、
「新説・明治維新」西 鋭夫(スタンフォード大学フーヴァー研究所)という本を読み直してみた。去年買った本で、おさらばしようかなと思ったのだが、気になってもう一度読んでみた。読んだ結果、ちょっとこの本は自分の手元に残しておこうと思った。
この本で一番気になったことは、学生時代、歴史の教科書で教わったアヘン戦争って、なんだかよくわからなかったのだが、この本ではっきりわかったことだ。
中国の紅茶が欲しい英国。それも中国の美しい陶磁器で紅茶を飲みたい。それで中国に対してはずっと貿易は赤字。それをなんとかしようとアヘンに目を付けた。インドを侵略し、そこでアヘンを作り、中国をアヘンでメタメタにした。それに気づいて怒った中国の皇帝が、英国のアヘンを焼いた。それに因縁をつけて怒ったのが英国。そしてアヘン戦争。
西鋭夫教授は、アメリカで勉強している時、最初に教授に習ったのは「お金がどう動いたか、そのあとを追いかけろ!」と言われたそうだ。人間関係、政治関係、いろんな問題でわからないことが出てくる。そういう時は「follow the money!」
英国は世界各地の植民地で起きた反乱に、負けたことが無い。諸外国が槍や弓で戦っていた時代にすでにライフル銃と軍艦を持っていた。
第一次アヘン戦争でも莫大な賠償金を手に入れて、ついでに香港も手に入れた。「おいしい戦争」はやめられない。
イギリスの大英博物館に行った時の違和感。
「どうして世界各国の美術がイギリスにあるのだろう?」ギリシアの彫刻やエジプトのミイラ。なぜ?イギリスにある?
放って置くと盗掘に会って、そこから無くなるから?でも、なんか胡散臭い。そんな大義名分のまま、こうやって、各国からいろんな美術品を略奪してきたのだろうか?それはルーブル美術館でも感じた。
これって、各国からの戦利品?
大英帝国も凄かったし、フランスのナポレオンも凄かった。そういうことが、美術館に残っているってことか。
実際見てみると、博物館や美術館が所蔵する美術品の凄さよりも、そういうことが、実感として迫ってきた。
今になってみると、私は私の好きな美術と言う分野で、西洋文明の殺戮のレキシを感じてしまったのかもしれない。
他国を蹂躙して全てを奪っていくということを。
こうやって西教授の本で読んでみると、自分が昔に行ったロンドン旅行。ロンドンのホテルで、素敵なアフタヌーンティーを体験したといったことが、なんだか、あほくさい。アヘン戦争をしかけて中国からいろいろ奪った英国の片棒を担いでるみたいな気分になる。
紳士の国を名乗っているけれど、そのくせ世界各国で英国が行った植民地政策は、ひどいものである。紳士のカケラもない。
そんな気分の時、この「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」を読んだ。
この本を推薦した方のお孫さんがこの本を滅法気に入って、喜んで読んでいるっていう話だった。中学生でも読める本ですよ!
読んでみると、母と息子の話は中学生でも読めるかもしれないが、母が立っている場所とか考えとかは、意外に、大人の世界だ。
明るく深いというのか。
でも、それが日常的な親子の会話からビシビシ、我々読者に伝わってくることがこの本の魅力だと思った。LGBTとか、貧富の差とか、移民とか、人種差別とか、私立と公立の学校の違いとか。息子が私立の敬虔なカトリックの小学校から、公立の中学校に進むと決心したことから、彼を取り巻く身辺に色々なことが起こる。殺伐とした英国社会を反映するリアルな学校。
降りかかってくる問題を、体験して、話し合って解決して前に進んでいく親子の成長物語が、面白い。
「正直、中学生の日常を書き綴ることが、こんなに面白くなるとは考えたこともなかった。」
と、前書きにあった。
元底辺中学校で問題をキャッチしてくる息子の感覚もいいし、それをすぐ母に相談する2人の距離感がいい。日本人の母と外見が東洋人寄りの息子。
差別から息子を過剰に守ろうとする英国人のお父さんのスタンスもいい。
イギリスで国際結婚した家族のリアルが描かれている。この愛すべき家族の話だと親しみを持って読む話がそのまま現代の問題を抱えている。
西教授の本を読んで英国をほとんど嫌な国として毛嫌いしそうな自分がいたが、英国の庶民は、みな、真摯に頑張って生きてることを実感した。
もう一度英国に親しみを持つことになったきっかけが、この本であると思った。そう考えると、国家と国民は別なものかもしれない。
国家は別に国民を絶対守るって言うものでもないし、各国の国民は、どこの国でも親しみのわく日常を懸命に生きる人たちなのだろうと思った。
この本を借りた元職場で、2も発見したので、読んでみます💛
この絵もまるで、黒板とは思えない、線の美しさと色の綺麗さと。
不思議だなあ、作者の持っている線の美しさとか、そういうことが黒板にチョークっていう割と粗雑な画材に出てしまうってことが。
ここに言葉で表現してしまうと当たり前のことなんだけれども。