退職の練習㊹読書感想文「生きるかなしみ」山田太一 編
ときめきの片付け祭りで私の部屋からはじき出された本「生きるかなしみ 山田太一編」を読んでいた。
自分の部屋から、もういいんじゃないとはじき出された本を読んでみると、「この本は、貴重!」という本と、「一回読んで気が済んだ!さようなら!」という本に分かれる。
さようならと思う本にも、なんとなく重要なメッセージがある。
だから、この自分が選んだ本には、今、君がもう一度、読みなさい!というようなメッセージが込められているように思った。かなりグレイゾーンの本なのに笑!それって、面白いことだ。
山田太一さん。子供時代、「男たちの旅路」っていうドラマを観ていたな!と思う。下北に単身赴任した時に、見つかったとても素敵な友だちが、沢田研二主演の「悪魔のようなあいつ」と、「男たちの旅路」のDVDをダビングしたものをくれた。
中学生の時に見ていた三億円犯人をモデルとした「悪魔のようなあいつ」このドラマは山田太一さんじゃなく久世光彦さんだけど、なんていうか、激面白い!今では大御所となった人ばかりの出演。
それが、実験的なドラマでいろんな役をやっている。
主人公の沢田研二と藤竜也とか、どうみても、BLでしょ?みたいな感じだ。中学生の自分が見ていたのに、男色、近親相姦、不倫、売春、ストリーキング、なんでもある題材だ。大人になってみると、また、全く面白いと思って見た。たまりません笑。
「男たちの旅路」は、とても硬派のドラマだと思う。
身構えてみるドラマって、そうないと思う。
ドラマに求めるのは週末の癒し、みたいな。
「男たちの旅路」は、これでもかと、エッジの立ったリアルな物語を視聴者にぶつけてくる。この、真面目で、スキのない感じ、ヤバい。
けれど、中学生とか高校生の頃の自分はこのドラマが大好きで、凄いなと思って見ていた。これが、いい年になってみても、凄い!と思うのである。
そんなふうにドラマの脚本家としてすでに好きな人の本だから、私はこの文庫本を買ったのだと思う。
彼が色んな作家の好きな文章を集めた文庫本。
もともと私の好きな作家が選ぶ、好きな文章だからして、そうとうに面白い。自分が好きな章は。
「私のアンドレ」時実新子
ベルサイユのばらのアンドレを嫌いな少女なんているはずがない。時実さんは、自分の新しくできた恋人をアンドレと呼ぶのである。恋人で、よそよそしくも愛しくあったアンドレが、彼女の押しに負けて結婚してから、結婚して現れるような、普通の男になった。その文章の、アンドレに対する嫌悪ではなく愛おしさが、胸を打つ。これは、何歳になっても読みたいと思った。永久保存版であろう。うちには私のアンドレがいるし笑!
「兄のトランク」宮沢清六
あの宮沢賢治という有名な兄を語る弟。山田太一は「こういう弟さんを持ったということは、やはり賢治の幸せの一つだったと思う。」と述べている。ゴッホと同じで、賢治も、やはり生前に認められた人ではない。
トランク一杯の賢治の原稿がどこの出版社にも受け入れられずに、賢治の寿命がつきたということに胸が塞ぐ。しかし、弟は、そのトランクに、あの有名な詩が書かれたメモ帳を発見するのである。
2日ぐらい前、ココロの時代と言う渋い番組で、まさにこの文章が取り上げられていた。シンクロニシティである。
「二度と人間に生まれたくない」宇野信夫
「太宰治ー贖罪の完成」五味康すけ。
この2本も相当に胸に迫った。とくに太宰の、入水自殺が、殺人だったのではないかと言う話には、特に胸を掴まれた。今まで、太宰は運よく助かってきたのだと思っていたが、そうではないということを五味氏の文章から感じた時には、まるで納得した。そうだ、太宰は狙って、女を殺したのだという気がした。真実はわからないけど、五味氏の直観はまるで正しい気がする。良かったら読んでみてください。
中でも、一番、驚いたのが
「山の人生」柳田國男
である。私はこの話を小林秀雄の講演で聞いていた。
しかし、この本があるということは、私はこの話を知っていたはずである。ところが、読んでいたのにもかかわらず、印象に残ったのは小林秀雄の講演で初めて知ったと思っていた。自分の心が育っていなかったとも言えようが、講演を聞いた時も、正直言って、小林秀雄の解説を聞いてから感動した話だった。
その、ショッキングな内容の話を、自分はもっと前からこの文庫本で読んでいた気配を知ってから、さらに、ショックをうけた。
これは、みなさん、よかったら、読んでください。
凄い話です。実話です。
この本を読んでみたら、全く、卒業できる本ではなく、いまの自分が読んでも、墓場まで持っていきたい本であるということに気が付いた。
なんだろう。そんな本をグレーゾーンにアップする自分の感性って、めっちゃ正しいってことだよね笑
自分の直観正しいじゃん(⋈◍>◡<◍)。✧♡