法隆寺大工の口伝を守って、西岡の生活は貧しくて厳しいものだった。家族である息子たちは後を継ごうとは思わなかった。そこにやってきた小川である。西岡にも、西岡の家族にも大切にされたようだ。
学者のなかにはさまざまな意見を言うものがいて、西岡棟梁と幾つもの論争になった。
西岡棟梁から聞く木のいのち木のこころの話も素晴らしいが、一番近くにいた小川から聞く西岡棟梁の人となりの話がまた素晴らしいと思う。
以前、ホリエモンが書いた本を読んだ時に、寿司職人に弟子入りして掃除から修業をするのは無駄だ、寿司の修業は○○時間で習得できるという文章を読んで、それはそれで、アリだな、と思ったのだが、この二冊の本を読んで、それとは全く別な徒弟制度の時間の流れを感じるのであった。
西岡棟梁の教えが小川の体の中に流れていき、そして、宮大工の伝統が教わった小川の中で、新しい芽を吹き育っていく。(つづく)