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がっこうはじごく


夏休みが終わる日に
「学校はどう?いけそ?」と、長女に聞いた。
「うん!大丈夫!また冬休みまで頑張るよ!」という。

長女は頑張りすぎるところがあるので
「まぁ、テキトーにやんなよ」と声をかける。
長女は、
「テキトーにやったらママが怒るくせに!」と、ニヤニヤしながら悪態をついた。

今はきっと、まだ良い。
小学校三年生なのだ。うちの娘の通う小学校は、のんびりした子供が多く、
今のところイジメの話などはきかないし、
問題児がいる、というような話も聞かない。

なんか、困ったことをしてる生徒はいない?というようなことを聞いた時に、
男子が土いじりの時に「ち◯こ〜!!」と言って、ちん◯の話しかしてなかったくらいかな〜と言ってて、少し安心した。
困ったやつではあるけれど、私がイメージしている困った生徒に比べると可愛いじゃないか。

私が初めて「あれ?自分、いじめられてる?」って思ったのは、小学校高学年のころだった。
私のことを気に食わない、クラスの女子のボス的存在の子が、私のことを「ターザン」と言うあだ名をつけて悪口を言っていることを知る。
自分が、ターザンに出てくるゴリラに似てるからだろうなと、察しがついた。
まず、話しかけてもシカトをされた。
私がぼんやり口を開けていると、陰でクスクス笑いながら、私の顔真似をした。誇張したそのモノマネは私が見ても私のモノマネをしているんだなということがわかった。

クラスの中の、誰かが、面白半分で教えてくれた。
「ターザンって、あやかちゃんのことだよ笑。」
私は今もその光景を覚えていて、薄暗い学校の廊下で、教室のドアは開いていた。
クラスでは誰かがゲラゲラ笑いながら悲鳴をあげていて、うるさいなと思った。
うるさいな。どうして、こんなこと私に言うんだろう。
私は知りたくなかったよ、って。

ただ、このイジメが、順番に回ってきているものだと言うことも理解していた。
2週間前までは、別の子だったし、その前も違う子が標的だった。
自分に回ってこないように、ボス的な女の子に気を遣いながら過ごしている。そんな雰囲気が漂っていたのだ。


私は“子育て”というのは、
子供を通して、もう一度小さい頃の自分の向き合う作業でもあることを知った。
私のこの歳の頃はこんなことを考えていたなぁ、とか。
私もすごくそういうことに敏感だったんだよ、とか。
長女と話しながら思い出して、
長女は、私よりも、人と群れることへの執着がないなぁと感じたりする。
「友達と遊ぶのも好きだけど、1人で本を読んでるのも好きなの」
という。それが、強がりではなく、心の底からそうであるならいいなと思う。
私は、「うんうん、すごく良い時間だね。」と言ってあげることしかできない。
私が学校で娘と一緒に遊んであげられたら良いのにと思うけど、
本人の気持ちを尊重して、話を聞くことしかできないのだ。


私が「ターザン」と呼ばれていた頃、
私はよく学校を休まずに行ってたなと思う。
学校は行くものだった。行かなくてはいけないものだったし、きっといじめられてることを親に相談したりもしなかった。
時が過ぎるのを待って、なんとか楽しみを見つけ出していたと思う。

今考えれば、何日も、休んでやればよかったのだ。
学校なんて、数日間行かなくても、大丈夫だったのに。 

それ以降の学生生活は、ラッキーなことに楽しかった記憶の方が多い。
中学に入ると生徒会の活動を通して先輩の友達もたくさんできた。未だに連絡を取り合う一つ上の先輩や、同級生もたくさんできた。

娘のこれからはどうだろう?
私のように、辛い経験もするんだろうし、それを乗り越えて楽しいことも見つけられると良いなと思う。
良い友達や先生に恵まれると良いなと思うけど、こればかりは、わからない。
わからないからこそ、
学校が地獄になってもいいんだよって言ってくれる大人がいることに救われると思う。
私が最近読んだ「がっこうはじごく」
という本は、現役の教師である堀静香さんが書いた一冊だ。
教師だけど「がっこうはじごく」だという。
学校が嫌いなのに教師になってしまったのだと話す。

学校って地獄だよと、言っている大人が、学校の先生であるという皮肉は、
だけどとても、心に響くもので、
この本を読むことで、“学生の子供をもつ母親”である私を助けてくれるな、と思った。

いつか、きっと、子供達も読む一冊にも読んでもらう日が来るだろう。

いろんな考えがあるよ。
いろんなことにみんな悩んでるし。
それを、ちゃんと聞かせてよって、言ってくれる大人は、絶対いるんだよ。

私と娘だけでなく、“学校”に対して、色々な思いがある、あなたへ、届けば良いなと思って、これを書いてる。
辛くて仕方ないんだって、言えない人は、この本が味方になってくれたらいいなと思う。

あの頃辛かったなという人もそうだ。
あの頃学校が地獄だと思っていた人は、それを肯定してくれるこの一冊を、読んでみて欲しい。
そして、学校地獄だったよなぁ!と、思い返して、当時の自分を抱きしめてあげてほしい。

ターザンだった私を、私は今、抱きしめる。
辛かったよ、と。この本を読んで、思い出したのだ。

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