【読書日記】語学は何歳でもマスターできる『台所から北京が見える ──36歳から始めた私の中国語』
語学学習のモチベーションを維持するのは、なかなか大変です。自分がイギリス人だと思い込んでいた12〜18歳までは英語の勉強が「勉強」ではありませんでした。自分の国へ帰る手段、母国の言語を習得していると思っていたので(私は神奈川県生まれ、神奈川県育ちの純ジャパです。当時は頭がかなりおかしかったようですが、うらやましくもある)、英語を学ぶことは純粋な喜びだったのです。
この「私はイギリス人」時代に、英検準1級を取り、TOEICでも945点を取り、早稲田国際教養学部にAO入試で受かりました。それもこれも、イギリスに「戻って」、優しいイギリス人と結婚する、ただそれだけのためです。
ところが大学に入ると、呆気なくその魔法はとけ、なぜかいまはバルセロナに住んでスペイン語とカタルーニャ語と格闘しているわけですが、もうあのときの勢いはまったくありません。さすがにスペイン語はある程度できますが、まだ最後の壁を越えられていない感じがするし、カタルーニャ語にいたっては3歳児レベル。いまは現実にカタルーニャ人のパートナーがいるにもかかわらず、妄想イギリス人彼氏がいたときのほうが語学学習に対するモチベーションは遥かに高い。
こんな意識低めの私にやる気と勇気を与えてくれたのが、長澤信子さんの『台所から北京が見える ──36歳から始めた私の中国語』です。
何がすごいって、彼女のバイタリティーには、とんでもないものがあります。ずっと専業主婦をしてきた著者が、36歳でいきなり中国語を勉強しはじめて、夢中になります。とはいえ旦那も子供もいるし、専業主婦なので自分の稼ぎもない。でももっと勉強したい。ということで、中国語を勉強する資金を調達するために、なんと准看護師の資格まで取ってしまう。
たった4年間で中国語をマスターした長澤さんですが、その後も通訳ガイドの国家試験に挑戦(そして合格)。さらに、「単に会話ができるだけでは、なんとなくあきたらない」と、和光大学の中国文学科に入学し(その間もお母さんの看病をしながら、病院で准看護師として働いていた)、48歳で卒業します。
巻末には、長澤さんの勉強方法も紹介されていて、彼女が限りある時間をどれだけ無駄にせず、創意工夫して勉強していたのかがわかります。語学学習者だけでなく、夢に向かって頑張っている人に読んでほしい名著です。