「食べる」と「眠る」
「いってきまぁぁす」
朝日が山の狭間から顔を出して、空の中をぐんっと昇り詰める頃。
まだ正常に起動していなくて重たい頭をなんとか持ち堪え、鍋に入れられて少し経ったあさりくらいにしか開かない目をどうにか開ける。
そしてジェンガのごとく積み重なった服の山から、昨日乾いて畳んだばかりの自分の服を器用に抜き取り着替える。
そして、うさぎやらケーキやらが日付と共に並ぶカードを首からぶら下げて、サンダルに足を突っ込み、冒頭の一言を呂律の回らない口で、なんとか家族に告げると急いで団地の坂道を登っていく。
道の脇から見知った顔が、同じような目と動作をしながら、
「おはよぉぉう」
また同じように呂律の回らない口で次々と挨拶を交わしていく。
そうして小さな身体が40人ほどは集まることのできる公園に着くと、思いきりの良い動き、恥ずかしさゆえに小さめな動き、未だ動かぬ脳を懸命に動かしている動き、そんなバラバラなようでどことなく同じ動きが、公園中に広がっている。音楽と顔も合わせたことがない毎日聴く声に釣られて。
そして音楽と声が終わると、ものの数十分前には起動していなかった頭が脳内を風が通り抜けるように爽快感を伴い、とりあえず首からぶら下げた紙に、またひとつ今日の日付のところへ新たな動物が仲間入りする。
そして朝は靄がかかったような登り坂が、気持ちのいい風の吹き抜ける下り坂へと進化して私を迎えてくれて、道の真ん中にレッドカーペットが敷かれたような気分に、少し頬を緩ませながらその道の歩みを進めていく。
「ただいま!!!」
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