美容院が好き
新しい土地に住むことで困ることランキングの上位は、病院と美容院探しだと思う。
特にその土地に縁もない場合、頼りはネットの情報とGoogleマップの口コミと、そして自分の勘だけ。
今日、新しい土地に来て3回目の美容院へ行った。私はこの約7ヶ月間、3回とも別の美容院に行っている。
今まで行った2つの美容院、劣悪なサービスがあるわけでも、怒りが湧き上がるような気持ちになったわけでもない。ただ、なんとなく、「違う」という感覚が強かった。
たぶん私自身、美容院に対する目が肥えてきたのもあるかもしれない。
以前の土地で通っていた美容院が良すぎたのだ。4年間担当してくださった美容師さんとの相性があまりにも合いすぎた。そしてこの美容師さんはものすごくホスピタリティに溢れる方だったので、毎回通うのが楽しみになる程心地よいサービスだった。
いずれ自分のメディアを持つようになったら、彼女を取材したいと思うほど。
そんな信頼関係まで出来ていた美容師さんのもとを離れて新しい土地に来たがために、「なんだか合わない」という感性のアンテナはなかなか敏感に反応していた。
そして今日は3回目。3箇所目の美容院。
緊張しすぎて、昨晩の睡眠時間は2時間。心臓のばくばくと鳴り止まない音が気になって、なかなか寝付けないでいた。
「次、合わなかったらどうしよう」そんな不安を抱えて美容院の扉を開く。なんともおしゃれなモダンとナチュラルな素材が調和した空間だった。
出迎えて下さった担当の美容師さんは、とても朗らかで穏やかに声をかけ、椅子へ誘導して下さった。
髪色も、髪型も、丁寧に私の希望を聴いて、そして何度も確かめて下さり、少し安堵の気持ちが心を覆う。ひとつひとつ丁寧な説明と確認、そして何より会話の中でちょうど心地の良い距離感を保って下さっていることが分かり、ますます心を覆う気持ちは暖色を帯びていた。
ひとつひとつ本気でお客さんの目線に立ったその心遣いがひしひしと伝わる。シャンプーの時なんて、寝そうになった。いや、多分途中少し寝ていた。
そして仕上がった後も、アレンジの提案やスタイリング剤やオイルの提案も分かりやすく教えて下さった。
そんな暖色を帯びたホスピタリティを受けた帰宅途中、街並みの店のガラス扉を思わず覗いてニヤけてスキップをしてしまう。
こんな心遣い溢れるサービスを自分も提供したいと、学びと刺激で心は飽和していた。
新しい街に来てずっと悩み続けていたけれど、ようやくここだと思える美容院に出会うことができて、またひとつこの街に自分が調和していくのを感じる。一生に今しかないその瞬間をひとつひとつ味わいながら、この約半年間その感覚を記せている自分を俯瞰して、ゆっくり歩くことの尊さを再認識した。
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