【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】東洋医学からみるキクの世界
千葉市内、千葉駅すぐ、女性と子ども専門鍼灸院『鍼灸 あやかざり』です。いつも【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事をお読みいただき、ありがとうございます。
年中行事の節句と言えば3月の桃の節句と5月の端午の節句が有名ですが、秋には「重陽(ちょうよう)の節句」 というのがあることはご存知でしょうか。
「重陽の節句」 は9月9日で、菊の花をを使って不老長寿を願うことから「菊の節句」とも呼ばれています。
9月9日と言えばまだまだ夏の気配が残る頃で菊の花とは結び付きにくいのですが、旧暦の9月9日は10月23日にあたることから、菊の花も見頃を迎えます頃ですね。
今回は、この「重陽の節句」と東洋医学からみるキクの世界をご紹介していきます。
それでは、どうぞ最後まで、お楽しみください!!
1.節句と陰陽五行
節句とは年間の節目となる年中行事や節目の日のことです。
日本ではひな祭りやこどもの日、七夕などがよく知られていますが、これらは奈良時代に中国から伝わったものです。
中国から伝わった当時はたくさんの節句がありましたが、江戸時代にそれまでの節句を元に祝日として制定されたものが五節句です。
【五節句】
●1月7日:人日の節句(七草の節句)
●3月3日:上巳の節句(桃の節句)
●5月5日:端午の節句(菖蒲の節句)
●7月7日:七夕の節句(星まつり)
●9月9日:重陽の節句(菊の節句)
節句は中国に起源をもつ、陰陽五行論の考え方に基づいています。
陰陽五行論とは、全てのものは陰と陽の相対する性質をもつと考える陰陽論と、自然界に存在するすべてのものは木、火、土、金、水の5つの元素に分類できると考える五行論からなり、古くは生活の様々な面に影響を与えるものでした。
この考え方の中では、奇数が縁起の良い陽の数とされており、奇数が重なって偶数になる日は、陽から陰に転じる日として邪気を払う風習として節供が始まり、後に節句というようになったと言われています。
2.重陽の節句とは
重陽の節句は9月9日。
”9”は1から9の奇数の中でもっとも大きい陽数で、その”9”が重なる9月9日は「陽」が「重なる」ことから『重陽』と呼ばれるようになりました。
古来中国ではキクが邪気を払う力をもつと信じられていたこともあり、ちょうど重陽の頃に花を咲かせるキクを飾って愛でたり、キクの花びらをお酒にうかべて飲んだりして、無病息災や不老長寿を願ったとされています。
この風習は日本にも伝わっており、キクは今でも不老長寿を願い邪気を払う花として知られています。
また、重陽の節句にまつわる日本独自の行事もあります。
●くんち
九州地方の秋祭り。「くんち」とは九州の方言で9日を意味します。重陽の節句がちょうど収穫時期に重なるため作物の収穫祭として受け継がれており、有名な長崎くんちは例年10月7日~9日の3日間で開催されています。
●後の雛(のちのひな)
雛人形を重陽の節句に再び飾り、健康、長寿、厄除けなどを願う風習です。江戸時代に庶民の間に広がったといわれています。
3.キクの由来
キクの花は、日本国のパスポートの表紙にも描かれているように、日本を代表する花の一つですが、原産地は中国で、その気品のある姿は吉祥文様のひとつ四君子にも挙げられています。
キクには様々な品種がありますが、中国名「菊花」は栽培種のイエギクの花を指しています。
イエギクは野生種のハイシマカンギクとチョウセンノギクの交雑種と考えられています。
そのイエギクが日本に伝来したのは諸説ありますが、古くは奈良時代以降で、遣唐使が薬草としてもたらしたとも言われています。
中国では春秋戦国時代の頃から食用に利用されていましたが、日本では観賞用としての利用が盛んで、平安時代には貴族たちが持ち寄った菊の優劣を競い、和歌を詠い合う菊合わせを行っていたようです。その後、江戸時代になると品種改良によって黄色や桃色など多数の品種が生まれ、菊細工や菊人形へと発展しました。
江戸時代になると食用としての品種改良も行われ、キクの花びらを食べる習慣が普及したといわれています。
4.東洋医学的な効能
生薬としての菊は、花の部分を乾燥させて用います。
東洋医学的な性質、効能は次のとおりです。
【性質と味】 甘・微苦、微寒
【関連する臓腑経絡】 肺・肝経
①疏散風熱(そさんふうねつ)
風熱の邪を追い払い、体内の熱を冷ますことで、発熱や頭痛、咳、のどの痛みなどの風邪症状を改善します。
②清熱解毒
熱を取り、解毒を促す、皮膚の化膿を抑えます。
③平肝明目(へいかんめいもく)
風熱や肝火による目の充血や脹れを抑え、視力を改善します。
微寒性のキクは肝熱を収め、気滞鬱結体質や肝陽亢盛体質で熱っぽくめまいのある高血圧の方には適すとされています。
気血両虚体質の方のめまいの場合には気血の不足が原因ですので、補虚が必要となります。
この場合、微寒性の菊花には補虚の働きがありませんので、むしろ控えたほうがよいかもしれません。
食積痰湿体質の方のめまいの場合には、体内に溜まった余分な水分を排泄する機能が低下していますので、排泄作用のない菊花はやはりあまり効果は期待できません。
5.身近なキクの仲間:カモミール
ノンカフェインの飲み物として人気が高いカモミールティ。
その原料である「カモミール」もキク科の一年草および多年草です。
ヨーロッパから西アジアにかけて分布しており、カミツレ、あるいはカモマイルと呼ばれることもあります。
ハーブとして有名な植物ですが、 歴史はとても古く、4000年以上前のバビロニアですでに薬草として用いられていたとも言われています。
日本には19世紀の初頭に、オランダから伝わり、その一部は野生化し日本に定着しました。
中国でも生薬として扱われており、東洋医学的な性質、効能は次のとおりです。
【性質と味】 辛・微苦、涼(甘、平、無毒)
①解表(かいひょう)
体の表面の邪気を除き、感冒による発熱や肺熱による咳を改善します。
②祛風湿(きょうふうしつ)
主に関節や筋肉などに溜まった余分な水分を取り除き、リウマチ性の神経痛や関節の腫脹を改善します。
5.千葉駅周辺の鑑賞スポット
キクは国内で最も多く生産されている花で、切り花、鉢植え、花壇植えなどいろいろな形で栽培されています。
普段は花屋さんで見ることが多い花ですが、見頃となる10月~11月頃には各地で菊花展が催されます。
中には珍しい菊や、手の込んだ飾りつけの菊人形を見られるところもありますよ。
鍼灸院『鍼灸 あやかざり』のある千葉市内では以下の2か所で近々開催されます。
●千葉市都市緑化植物園:2023年10月31日(火)~11月12日(日)
ボランティア団体「菊作り市民の会」の方々が丹精込めて育てられた大輪菊・可憐な小菊などが展示されます。
●稲毛記念館前庭:2023年10月31日(火) 〜 11月10日(金)
菊花の展示、菊の鉢・苗の販売があります。
千葉市の隣にある佐倉市の国立歴史民俗博物館 くらしの植物苑では珍しい古典菊(江戸時代までに日本各地で楽しまれていた伝統的な菊)を見ることができます。
千葉県内ではあいにく菊人形飾りを見ることはできなさそうなのですが、少し足を延ばして東京都内であれば、湯島天満宮の文京菊まつりで見られます。
なかなか日中の暑さが抜けきらず寒暖差の大きい今年は、紅葉が一段と鮮やかになるそうなので、街中の街路樹でもきれいな紅葉が見られ鵜かもしれません。
秋の休日、ぜひ菊と紅葉を楽しんでください。
6.まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
東洋医学からみるキクの世界、お楽しみいただけましたでしょうか?
このように、身の回りにあるいろいろなものを東洋医学的にみていくと、鍼灸ほかにも、身近なところに自然治癒力を高めるヒントがたくさんあることに気づかされますね。
それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!
鍼灸 あやかざり
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参考文献:『東方薬草新書』、『食材効能大事典』、『基本と仕組みがよくわかる東洋医学の教科書』