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稀人書店・新作オムニバスZine『しわしわ』文学フリマで発売します!

いよいよ、文学フリマ東京(12月1日@東京ビックサイト)が近づいてきました。わたしは今回も、川内イオさん主宰の〈稀人ハンタースクール〉のメンバーとともに、「稀人書店」で出店します。

昨年初出店してから、毎年恒例にしたいと考えているのが、スクール生でつくるオムニバスZine!みんなで毎年テーマを決め、原稿を書き、それをまとめてZineを制作するのです。

2023年は『喧嘩の生態』という、喧嘩をテーマにしたZineを制作しました。
わたしは、仕事でも紙ものの制作をしているということで、編集・デザインを担当しています。

表紙デザイン・甲斐イアン

「大変な作業…!」と言ってもらうのですが、これがめちゃくちゃ楽しい!(大変だけどね)ライター仲間たちが一つのテーマに向かってわーっと書いたものをわーっと集めて、それを一つにぎゅっとまとめる作業。
人が本気で書いたものを読むと、その人のことを好きになるんですね。なので、この作業をしていると、いっそう仲間たちのことが好きになる。わたしにとっては幸せな作業なんです。

「どうやってつくってるんだ?」という話は、またあらためてまとめたいと思っているのですが、今日は、新作『しわしわ』中身についてのお話を。

『しわしわ』は、紙にまつわる話をまとめたオムニバスZineです。
おもしろい響きだし、紙話紙話」で「しわしわ」とも読めるよね、という、そんな感じでタイトルが決まりました。

その『しわしわ』に収録している18作品の紹介文と、わたしの一言感想をまとめてみます。

今年はこんなデザイン(画像はイメージです)

1 せんべいの空き缶から青春 かたおか由衣

実家に呼び出され、部屋の片付けを命じられ。出てきたのはひとつのせんべい缶。中からは黒歴史や甘酸っぱい青春、カラフルな思い出が飛び出してきた!

<感想>
懐かしい!懐(なつ)いワードのオンパレード!
この文章自体がタイムカプセルみたい。自分もこんなふうに、ぎゅうぎゅうになった缶詰に残しておきたかった!黒歴史だろうけど……笑
「グレープフルーツジュースみたいな」フレッシュで苦い思い出……良い喩え。

2 十七歳の置き手紙 マエノメリ史織

高二の冬、置き手紙から始まる家出をした私。自分の殻をぶち壊し、初めての世界を知った時間。あの日があるから今がある、そんな記憶を振り返った。

<感想>
「クズみたいな日々がパワーチャージ」「パワーチャージの集大成」パワーワードが多いなあ……笑
もー、この人心配でドキドキする!親御さんたちが偉大すぎる!やっぱり文章って個性が半端ないね。真面目人間のわたしには未知の体験。家出のドキドキを味合わせてくれてありがとう。

3 情けは人のためならず ウィルソン麻菜

「情けは人のためならず」って、本当にあったんだ——。一冊のノートから蘇る私の、姉としての黒歴史。冷や汗をかき、胃が痛くなりながら、誰かにやさしくすることを誓った記憶を振り返る。

<感想>
体育会系ジャーナル「反省ノート」の話。笑う……  序盤からニヤニヤが止まらない。いいなあ…… わたしもこういう、人をニヤニヤさせる文章が書きたいよー!ブラボー!

4 白やぎさんからのプリント 奥村サヤ

子どもの小学校入学とともにゴングが鳴った紙をめぐるドタバタ。 重要な情報はその紙に書いてある。さあ、渡すんだその紙を。 不毛なやりとりに、だんだん我が子が白やぎさんに見えてきて……。

<感想>
サヤヤらしいほんわかワールドから始まったかと思いきや、すごいリアルな話でその対比に引き込まれた。「わかるわかる!」「それな!」すぎる。
ものすごいスピードで駆け抜けてった感。読みやすくておもしろい!
「しかたがないので」の箇所、「上手い!」と唸った。

5 クララのメモ 堀江知子

なんでも捨ててしまう私が、手放せない紙切れ。 アフリカで出会ったクララからのその一枚を見るたびによみがえるのは、「あたりまえ」が違う世界で教わった心を豊かにするヒントだった。

<感想>
静かに始まって、胸が熱くなるような終わり。クールに見えるほりともさんの胸に秘めた熱さが伝わってくる。ほりともさんの存在や、ほりともさんとの時間が、クララにとっても希望をもたらすものだったんだ。そう思うと、最後のクララの言葉がいっそう胸に響いた。

6 卒乳証書 弓橋紗耶

抱きあげるとふわっと漂う、やさしい香り。少し高い体温。七年の時を経た今でも、必死にお乳を求める我が子の姿が、まぶたに焼きついている。母の切なさと喜びが交差する、卒乳の記録。

<感想>
忘れかけていた気持ちを思い出した。授乳のあいだ、子どもを見つめていた時の気持ち、この時間が失われる卒乳が怖かったこと、卒乳した時のこと。
この文章を読んで写真を見ると泣けてくる… これは、写真があるZineの醍醐味!

7 忙しないジャズ喫茶とマニュアルノート タオ

憧れていた喫茶店スタッフだったのに……。ピリピリした空気から抜け出すため、わたしはマニュアルノートに救いを求める。

<感想>
このタイトル好き。こういうタイトルのものはよんじゃう。笑
自分にこういうタイトルをつける才能がないので羨ましい… すごく雰囲気のある文章で、ジャズ喫茶の雰囲気が伝わってくるみたい。
ただ、ぴりっとした空気にドキドキする…タオさんがめっちゃ怒られた話を読みたくなる自分がいた。笑 最後はほっとする結末。よかったー!

8 平行線 サオリス・ユーフラテス

神様が本当にいるのなら、なんてイジワルなのだろう。天から私を見て、面白がっているようだ。仕方ないから神様のイタズラを、面白がって生きていく。ドンとこい。

<感想>
この作品は最初の段階で読ませてもらって、こうしたらもっと良くなりそうという提案をさせてもらった。すごくすてきな作品。このオムニバスの中で唯一の恋愛もの。こんな恋… 実際あったら… 嫌だなぁと思うのに(笑)、素敵だなあとも思う。読んでこのモキモキしたものを感じてほしい。

9 気が済むまで、破りましょう 野内菜々

バサッ!バシッ!ザザッ!ぐしゃぐしゃ!ビリビリ!バッサアアアアアアーッ!……壊れてしまった高校生のワタシを受けとめてくれたのは、いつもそこにあるモノトーンの紙だったーー。

<感想>
息がつまるような始まり。わたしも化学がちんぷんかんぷんだった。タオルを投げて放棄した。でもななこは泣きながら頑張ったんだね。新聞紙を破るシーンがすごく気持ちいい!わたしの脳内では大好きなドラマ「SPEC」が再生されてしまったよ。ビリビリビリビリッて音が聴こえてきそうな描写。真似したい。「こういう方法だってあるんだよ」と、教えてくれるような作品。

10 とどめる ホッポウミユキ

残されたチラシと消えたメモ紙。二人のおばあさんたちの若い日は、消えても残り、残っても消える。抗うことのできない死で消える記憶を、一瞬だけでもとどめたい。メインテーマは、アホな女子高生の与太話。

<感想>
びっくりした。なんだこれは!おもしろい!あっという間に読めるけど、不思議な余韻が残る。ジャッキーの話ウケる……笑
こんな小説を書けるってすごい。もっといろいろ書いてみてほしい!

11 リアル点つなぎ ロマーノ尚美

娘が「点つなぎ」をして遊ぶ姿を見て蘇る記憶。 それは、四半世紀以上前にイタリアをゲーム盤に楽しんだ「リアル点つなぎ」の旅。 もう一度タイムマシンに乗って、スマホではなく紙の地図を持って旅に出られたら......。

<感想>
めちゃくちゃ良い…… スマホ後の便利極まりない時代が、旅の安全を保障してくれる一方で、楽しさを奪ってしまった。「リアル点つなぎ」に勝る旅の楽しさってない。わたしは旅人間ではないけれど、なんでも事前にリサーチして、良いとわかったものだけつまみ食いするような時代を生きてる一人として、この話が心に響いた。

12 かりんとフェルナンデスの公開書簡 白石果林・きえフェルナンデス

埼玉とスペイン、1万キロの距離を隔て交わした書簡。真面目でおバカで不器用な書き手ふたりが紡ぐ言葉は、深いようで浅く、浅いようで深い……? 言葉を交換する楽しさがここにはあった。

<感想>
往復書簡ズルい!でもおもしろい!二人でやりとりしてるからこそ生まれるものがちゃんとあるね。
「歯にはさがった青さ粉」って、誤字?方言?(A.藤井風さんの曲の歌詞)最後やっぱり上手いなあ。

13 最後の年賀状 宇乃さや香

大切な人からの年賀状が急に途絶えた。昔、期待を裏切り傷つけたことさえ許してくれたあの人。ある日届いた手紙の文字は、筆圧が弱くなっていた。 「縁」の終わりは、どこにあるのだろう。1枚の年賀状が呼び起こした記憶の記録。

<感想>
さやかさんは、起きた出来事とか、その時の心情に丁寧に「なんでだったんだろう?」と向き合っているんだなと思った。人柄がつたわる。
人と人との縁って不思議だなと。その終わりはどこなのかな、と考えさせられる余韻がありました。

14 トリセツ みつはらまりこ

心が疲弊してどうしようもなくなった時、わたしは14年前から「ある行動」をするようになった。起源となった場所の写真は1枚もない。その代わりに、"紙”だけは白いクリアファイルに丁寧に挟んである。トリセツが生まれ、とある意識が芽生えた、約15分の出来事。

<感想>
タイトルが好き!冒頭もいい!
心がぽかぽかになる。この話は、読む人の心をあたためると思うなあ。
なんていい話なんだ…とつぶやいてしまった。自分のしんどかった時期を素直に振り返り、書き切っているのがすばらしい!

15 「写ルンです」に救い出された日のこと 柳澤聖子

20年前に書いた反省文から呼び起こされる、海辺の町で起きた「まさか」な記憶。背筋も凍るような体験を、時間が愛おしい記憶に変えてくれました。小説風味のエッセイでお届けします!

<感想>
最初、小説かと思いました。小説にしてしまってもよいくらい、不思議で、ちょっと怖い話。まさか写ルンですに助けられるなんて……
おばあちゃんは手紙を捨ててないだろうなと想像しました。
この写ルンですは現像していないのでしょうか…もし現像していたら…そこに写っていたものは……気になる!

16 尻に愛を 無香無柄のダブルが好き 永見薫

紙巻。またの名をトイレットペーパーという。誰かとトイレットペーパーの話をしたことなんてそうはない。だからこそ語らせてくれ、紙巻の思い出とこだわりを。切々とつづったストーリーから見えてくる思いがあった。

<感想>
二人でやりとりをしている時、彼女はふいにトイレットペーパーについて話しはじめた。そのトピックについては意外にも、わたしも確固たるこだわりがあり、きっとそれぞれにあるよね、というか、そのこだわりこそが自分を大切にすること…という話にまで飛躍した。それをこんなふうに軽やかにおもろくまとめる薫さんに脱帽。

17 赤 黄 青 正井彩香

紙片と言われてふと思い出すのは、子どもの頃に入退院を繰り返したベッドの名札。当時は自分の弱さをゆるせなかったけれど、40年近くしぶとく生きながらえた今は。

<感想>
わたしはマサイさんのファンなので、正常な判断が下せない。タイトルからしてもう良いよね。一文目から良いよね。(誰に言ってる?)
文章が上手いからこそ伝わる腹立つこの教師……!きぃ!
やっぱりマサイさんの本が読みたい!って思いました。(本、発売中です)

18 紙のボート 木下綾

“こんな薄くて頼りないものが、「家族になります」という、拠りどころになるなんて。けれどもよく考えてみれば、家族そのものだって、実は紙のように頼りないものかもしれない。”
婚姻届を書きながら思い出したあれこれ。家族について考えたこと。

<感想>
静かななかにも、身近な人や自分の傷とひりつきに向き合っていて、そのまなざしが柔らかいなあ。
家族をボートに見立てて考えてみるアヤヤの横で、いろんな人が一緒に考えていることでしょう。(正井さんより)


以上です!
キャラクターの異なるメンバーが、それぞれにチャレンジして書いているので、読んでくださった方にはかならずどの作品か、気に入っていただけるものが見つかるはず。
ニヤニヤしたり、笑えたり、さわやかな気持ちになったり、温かい気持ちになったり、ちょっとぞわっときたり、じーんときたり。読んでいろんな感覚を味わっていただけることまちがいありません。

『しわしわ』のお求めは、文学フリマまで

12月1日(日)の文学フリマ39、「行ってみようかな!」という方はぜひ、『稀人書店』のブースP49-50へお越しください!とにかく気の良い人たちがお待ちしております!

会場広い!P列はここです!

イベント詳細はこちらから https://bunfree.net/event/tokyo39/

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