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本と映画

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いろんな色彩に満ちた世界 - 『PERFECT DAYS』

いろんな色彩に満ちた世界 - 『PERFECT DAYS』

東京のトイレの清掃員として働く1人の男性の日常。
映画の説明を読んで、私は彼に興味を持ち、彼の見ている世界を知りたいと思った。

平山さんの見ている世界は美しかった。彼は無口で、人と積極的に関わろうとはしていないように見える。それでも、世界と関わる中で彼の心はいろんな色彩に満ちて、揺れ動き、たくさんの物を捉えて、受け取っている。彼の心はいろんな色で満ちていて、とても豊かだ。

彼の世界が心から美し

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「ちゃんと呼吸をして生きたい」 -『裸足になって』

「ちゃんと呼吸をして生きたい」 -『裸足になって』

内戦の傷跡が残る、アルジェリア。これは、そこで生きる女性たちの物語。声と夢を奪われた主人公のフーリアが、踊ることを通して再生していく物語。

この作品のすごいところは、簡単に物事を完結させないところだ。内戦の影が蔓延るアルジェリアで生きる。簡単に解決しない物語。日常を生きるということ。傷を抱えて生きていくということ。

フーリアが施設で出会ったろう者の女性たち。
彼女たちはそれぞれに異なるストーリ

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Purple feeling -『地上で僕らはつかの間きらめく』

Purple feeling -『地上で僕らはつかの間きらめく』

彼の小説の中に入っていくと、そこはなぜだか1番しっくりくる場所だ。

過去に書いた日記を読んでいて、こんな一節が目に飛び込んできた。
オーシャン・ヴオンの「地上で僕らはつかの間きらめく」という本を読んでいた頃の話。

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幼い僕を連れ、母は祖母と共に太平洋を渡った。戦争に人生を狂わされた祖母と、新天地アメリカでの生活に翻弄される母。二人の苦難は少年の僕

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