人の語りを聴いて、伝えていきたい。 インタビュー記事、エッセイ、日記を書きます。

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毎日を記そうと決めた日の記録

日記を毎日書くことにする。 毎日が消えていかないように、心身の状態にしっかり目を向けて毎日を生きていけるように。 今は疲れているから、この日記が私にとってどんな意味を持つのか、どうして書き始めることにしたのか、たくさんの背景があるから言葉にはできない。また言葉が浮かんできた日に書こうと思う。書き続ける中でそんな発見をしていけたらいい。こうやって日常の記録をすることは全然慣れていなくて、人生でほぼ初めてに等しい。 昨日今日はたくさん歩き、よく話し、よく食べた。屋外と室内の気温

    • 歴史とわたしの狭間で

      8/9 実家に帰るために早く起きる。地震の影響で電車が遅れ、バスを逃してしまい、お金を追加で払う羽目になった。バスもお盆の帰省ラッシュで遅れ、2時間ほど遅れて長野に着いた。道端の緑が濃くなっていて、夏が来たことを知る。家に着いたら、母と祖母が作ってくれたご飯を食べた。肉じゃがとなすと鶏肉の煮物、きゅうりの漬物、梨。おいしい。 新聞をぼんやり見ていたら、「平和を愛するあなたへ展」の告知が飛び込んでくる。終戦や原爆投下のことがSNSでも流れてきて、終戦の時期であることが頭の片

      • あの日から、たしかに何かが

        瀬尾夏美さんの「声の地層」を読んだ後、導かれるようにして東北へ旅をした日々の記録。 8/21 石巻駅で友人と合流し、車で気仙沼へ向かう。彼女は北海道でのフォルケホイスコーレの思い出をとても楽しそうに話してくれた。地元の有名な居酒屋で魚をこれでもかと食べ、夜のドライブへ向かう。夜道を運転していると、きらきら光る港と神社を見つけて、散歩をしてみる。彼女とわたしはどちらも怖がりなのに、一緒に旅をするときはいつも夜道をドライブし、散歩して、お互いの声と動きにさらにビビる、というの

        • 傷を抱えた私の弱さとともに

          家族の声が聞こえる部屋で、人の気配を感じながら怠けものみたいにごろごろしている。お母さんが紅茶を入れてキウイを切ってくれて、半額セールのロールケーキと一緒に食べた。一緒にいつもの温泉に入りに行く。木や湯気を見つめながら、身体の力が抜けていくのを感じていた。自然と身体の力が抜けていって、凝り固まっていた思想が柔らかく目の前に現れてくる。 ここ数日は、ずっと苦しくて、その正体が何なのか分からなかった。触れることを避けてきた傷に触れて、人を傷つけたり、関係性をうまく築けなかったり

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          高校生だった私へ

          最寄駅の待ち合い室。周りにはほとんど高校生しかいない。音楽を聞きながら待っていると、友人が「お待たせー!」と颯爽と現れる。彼女はバレンタインだからとお菓子をくれて、お菓子作りが得意なところは変わってないなあと懐かしく思い出す。 何百回も歩いた高校までの道のりを歩く。 「懐かしいと思うけど、戻りたいとは思わないな」 「そうだね。でも私たち3年もここにいたんだよ。それって長いよね」 高校生の私は、広い世界を見に行きたかった。地元は私には狭すぎて、早く飛び出したいとずっと思って

          高校生だった私へ

          いろんな色彩に満ちた世界 - 『PERFECT DAYS』

          東京のトイレの清掃員として働く1人の男性の日常。 映画の説明を読んで、私は彼に興味を持ち、彼の見ている世界を知りたいと思った。 平山さんの見ている世界は美しかった。彼は無口で、人と積極的に関わろうとはしていないように見える。それでも、世界と関わる中で彼の心はいろんな色彩に満ちて、揺れ動き、たくさんの物を捉えて、受け取っている。彼の心はいろんな色で満ちていて、とても豊かだ。 彼の世界が心から美しいと思ったのは、彼が日常の中で出会う、些細な、それでいて美しい瞬間をたくさん見つ

          いろんな色彩に満ちた世界 - 『PERFECT DAYS』

          お守りのような幽体離脱体験

          あ、またこれか。 思いっきり殴られてぼやーんとしている心と対照的に、どこか冷静な私の一部がそう呟いている。はきはきと元気に、丁寧に話す私をもう1人の私が宙に浮いて見つめている。 そんな感覚を感じたのはこれが初めてだった。これはきっとリアル幽体離脱体験。それは私に何かが自分の中で起こっていること、自分の言動と感情がマッチしていないことを伝えていた。 私はいつも他者を理解しようとして、受け入れようとして、彼らにとって何がベストなのかを考えてしまう。たとえ自分自身が傷ついていて

          お守りのような幽体離脱体験

          「ちゃんと呼吸をして生きたい」 -『裸足になって』

          内戦の傷跡が残る、アルジェリア。これは、そこで生きる女性たちの物語。声と夢を奪われた主人公のフーリアが、踊ることを通して再生していく物語。 この作品のすごいところは、簡単に物事を完結させないところだ。内戦の影が蔓延るアルジェリアで生きる。簡単に解決しない物語。日常を生きるということ。傷を抱えて生きていくということ。 フーリアが施設で出会ったろう者の女性たち。 彼女たちはそれぞれに異なるストーリーがあって、それぞれ異なる傷を抱えて生きていた。 年長の女性が、豪雨の中川に入

          「ちゃんと呼吸をして生きたい」 -『裸足になって』

          誰も私たちを知らなくても

          朝6時にアラームが鳴り響く。1時間しか寝ていなけれど、長い間の眠りから覚めたように感じる。もう、空港に向かわなければならない。心の準備は永遠にできないまま、私たちは身体だけを動かす。急いで荷物を詰め込み彼の車に乗り込む。最初から最後まで、彼に車を出してもらってどこへでも連れていってもらっていたことに気付く。1週間前に空港でピックアップしてもらってから今空港に送ってもらうまで、ずっと。 空港までは渋滞ができていて、到着時間を大幅にすぎる予想。焦る気持ちも感じるけれど、私のこと

          誰も私たちを知らなくても

          I’m nobody

          やっと言葉が浮かんでくる。2:14。 心臓がどきどきしている。服を着替えるだけの準備を済ませ、チャックアウトをした。外はまだ薄暗い。成田空港行きのバスを待つ。こんな時間に起きたのは久しぶりだ。世界が始まる前の静けさで満ちている空間。空港に辿り着き、ほぼ眠ったままチェックインカウンターまで歩く。 誰もいない朝の空港。朝日が飛行機に反射している。徐々に太陽が上がってきて、背中に暖かさを感じる。友人に、飛行機の写真を送ったら、すぐhave a safe flight!というメッ

          I’m nobody

          バス停にて

          「今から帰るの?」 「はい、飛行機で。」 「あともう2、3日いたら地元のお祭りがあるからいればよかったのに。みんな見に来るんだよ。私の家の近くで。」 「山は登った?」 「白谷雲水峡に行きました。すごく綺麗で。」 「私はガイドをやっていたんだよ。縄文杉にも200回以上登ったことがある。」 「200回!!!」 「女の子は甘えてくる人が多くて。ちょうどあんたと同じ歳くらいの女の子だったかな。途中で足が痛いから歩けないって言うから、ずっとおぶって山を降りて来たことがある

          バス停にて

          開いていく

          今日という1日をどうしても言葉で残しておきたい。でも今言葉が降りてこない。どうしよう。 沖縄料理のお店で、友人がアメリカでの幼少期の経験を話している。彼がどう今まで自分の物語を紡いできたのか、生き抜いてきたのかを聞く。 ゲストハウスに戻って、少しベットに横になる。知らない内に寝ていた。意識のどこかで誰かが知らない言語を話している。スペイン語かな。クメール語にも発音が似ている。ちょくちょく知っている単語が出てきて、空港への行き方の相談をしているのかなと思った。 待ち合わせ場

          開いていく

          かつて立っていた場所

          3時間しか寝ていない。寒すぎて、ずっと布団で寝ていたいと思う。重すぎる身体になんとか力を入れて起き上がり、準備をする。全然寝れていないから、頭は冴えているけれど、ぼーっとしている。 準備を済ませて自転車を漕ぐ。前に進まないし寒いし人は多いしで、ちょっと泣きたくなる。バス停に着き、バスに乗り込む。運転手さんがすごく丁寧に言葉を紡ぐ人だなと思った。ほっとした気持ちが広がりながら、これが本心でありますようにと願う。ある時から、働く人が何を思っているのだろうとすごく考えるようになった

          かつて立っていた場所

          あなたに届きますように

          彼のことをいつかちゃんと思い出して、ちゃんと書きたいと思う。 なんでこんな風に思い出すのだろう。 私たちは特別なことは何もしていない。 彼のことを思い出す時に、思い出すのは風景や情景ではなくて、その時私が感じていた気持ちと安心感、一緒に過ごした図書館、カフェ。 ただ、図書館で、カフェで、一緒に過ごしただけなのに。 彼と過ごした時間は私にとって本当に特別だった。 彼が「一緒にいること」「聴くこと」の大切さを理解していて、それに長けた人だったからだと思う。 いや、分

          あなたに届きますように

          Purple feeling -『地上で僕らはつかの間きらめく』

          彼の小説の中に入っていくと、そこはなぜだか1番しっくりくる場所だ。 過去に書いた日記を読んでいて、こんな一節が目に飛び込んできた。 オーシャン・ヴオンの「地上で僕らはつかの間きらめく」という本を読んでいた頃の話。 ーー--------------------- 幼い僕を連れ、母は祖母と共に太平洋を渡った。戦争に人生を狂わされた祖母と、新天地アメリカでの生活に翻弄される母。二人の苦難は少年の僕にも影を落とすが、ある年上の少年との出会いによって、僕は初めて、生きる歓びを知る

          Purple feeling -『地上で僕らはつかの間きらめく』