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ついついながら見しちゃう今日この頃、一つも見逃したくないと思った。〜ルックバックを観て〜

 最近、読書をしていても途中でスマホを触ってXを開いてしまったり、YouTubeやテレビなどもながら見してしまうことが多々ある。SNSの普及の影響もあり、集中力がなくなっているのだろう。この映画ルックバックは、一つひとつの描写が繊細で見逃せないので、ながら見していては本来の良さも見逃してしまうと感じた。だから、映画館で映画にだけ集中して観るのは必要な機会なんだなと思った。今回はアマプラで、家で観たが、もし映画館で観れていたら、もっといろいろなことに気付けて、この映画に浸れたかもしれないなと思う。

 まず、映像が良い。最初、藤野の後ろ姿で、机に置いてある鏡に横顔が映っているだけというのが斬新に感じた。藤野の鏡越しの表情と手元がちょっと動いているだけで、当たり前だけど部屋のものが何も動いていない、というのが映像というより絵を見ているみたいにも思った。普通だったら、漫画を描いている手元とか、顔のアップとかになりそうな気がする。藤野が席を離れた後に、机の上の漫画にカメラが寄っていく感じは、映画のように感じた。絵のようなところと、映画のようなところが入り乱れているのが惹かれる一つの理由かもしれない。

 そして、台詞が少なかったり、心情を述べるモノローグがないのも、いいなと思った。私は普段、小説をたくさん読むので、モノローグがないというところが非常に新鮮に感じた。映像の中の藤野や京本の仕草や表情を見て、行間を読んで、心情を把握する必要がある。一番素敵だと思ったのは、京本の「藤野ちゃんはなんで描くの?」という質問に対する答えが言葉では語られず、藤野が京本と漫画を一緒に描いた日々や、藤野の描いた漫画を読んだ時の京本の笑顔という回想で表されていたところだ。あぁ、藤野はこの笑顔のために、自分の最初のファンである京本のために、もしくはその笑顔で得た嬉しさを原動力に、漫画を描いているんだなと思うと、思わず涙がこぼれた。

 はじまりと同じ、藤野の漫画を描く後ろ姿で終わるところも、変わっていくところもあるけど、漫画への情熱は変わっていない、というのを表しているようでいいなと思った。

 1時間という短時間なのに、そうとは思えないほど満足感を覚えた。1時間であれば、映画館ほどの集中力には至らなくても、ながら見せずに観ることができるかもしれない。ぜひ、この映画にだけ集中して観てほしい。

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