キミの心臓をたべたい
某有名作品のようなことを本気で思ったのは初めてだった。お察しの通り、娘は心臓に疾患がある。
この世に産まれてまだ1ヶ月しかたっていない。それなのに。
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娘は1ヶ月健診で「動脈管開存症」の疑いがあると言われた。産まれてから本来閉じるはずの心臓の管が閉じていないという。
先日、先天性の甲状腺機能低下症だと言われて治療を開始したばかりなのに。ようやく、薬をうまく飲めるようになったのに。この疾患と一生付き合う覚悟が、やっとできたというのに。
「どうして、うちの娘なんだろう」
通院と毎日の服薬で十分すぎるくらい頑張っている娘に、さらに頑張れというのか。比べるのは違うというのは分かっているけど、それでもなんの異常もない友人の子、親戚の子を思うと、羨ましくて仕方がなかった。
神様は、意地悪だ。
しかも今回は心臓。一番重要な臓器と言っても過言ではない。万が一の悪い想像をしてしまい、気が気ではなかった。
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精密検査の結果、幸い命に別条はなさそうだった。ただ、やはり心臓に小さな、いや、心臓にしては大きめの穴がある。今のところ症状や数値に異常が出ていないので、内服して経過観察をすることになった。
今後自然に穴が閉じるかもしれないし、閉じないかもしれない。もしかしたら症状が出るかもしれない。そうしたことが起こった場合は、手術になる。こんなに小さな身体で。
親としては覚悟というか、心構えというか、とにかく気持ちを強く持たなければならない。(と思う)本当に苦しいのは、娘本人だ。今は折れそうになるガタガタな気持ちを、夫の優しさと、娘の可愛さでなんとか保っている。
本当に、心から、キミの心臓をたべたい。
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妊娠して、出産する。簡単に聞こえるが、それは紛れもなく奇跡だ。さらに医療を介さず健康でいるなんて、もっと奇跡。娘を産み、2つの疾患が分かって、痛いほど実感した。
その奇跡のような娘に、毎日全力で向き合って愛を注いでいる。毎日顔が変わって、表情豊かになっていく娘が、愛しくて仕方ない。
うん、今日も最高に可愛い。お薬増えたけど、頑張ろうね。