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ムチムチの無知の知

ミスターセンクスに似た髪型のこの男性は
とても良い体をしている。

まるで作り物のような
石像になった昔の偉人が蘇ったような
その表情とイチモツは自身に溢れ
下半身に巻かれたマスクは今にも破れそうである。

いつか出てくるだろうという予想はしていた。
この混沌とした世の中で
この手の人間は確実に出てくるはずだと。

しかし実際に出てきた彼は
ミスターセンクスの想像を軽く凌駕した。
そのお姿はまさに神が作った神秘である。

おそらくベンチに座るカップルには
彼の存在は見えていないのだろう。

あるいはマスクテントから発射される
電磁波により幻惑をみていたのかもしれない。

世界は広い。
こう言った人を見せつけられてしまうと
ミスターセンクスもまだまだである。

精神的にもチン長的にも完敗。
ミスターセンクスはその無知さに乾杯する。

ソクラテスが説いた無知の知。
真理を探求すべきである。
自らの無知を自覚することこそが
真の認識に至る道である。

彼は自らの無知を自覚しているのだろうか。
自らの無知を自覚していたとしても
世間は彼の無知を認めないであろう。

無知じゃ済まされないわよと
ムチムチのギャルがスマホに話しかける。

それを見てセンクスはハッと気づく。
広い世界で起こる
一瞬のつぶさな出来事が
ムチムチギャルの端末に飛び込むのである。

世界は彼女の手中に収まっていると言っても
過言ではないのではないだろうか。

ああ、私はなんて無知なのだろうか。
世界にはこんな狂人が存在すると言うのに
彼から比べたら私はちっとも狂人ではない。

少なくとも彼は行動を起こしている。
ミスターセンクスは言っているだけのむっつりである。

そうだ。思想だけではだめなのだ。
高尚な考えを持ち
自ら汗をかけるものだけが
素晴らしいブランドを手に入れるのである。

無知が許されない男と
ムチムチギャルのおかげで
ミスターセンクスは無知を悟り
無知を承知で美女を追いかけることにした。

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