眠れない夜のために/千早 茜
ここ最近、寝つきが悪い日々が続いていた。
体は明らかに疲れているのに、夜になると何故か目が冴えてしまいなかなか眠れなくなってしまう……そんな毎日を送っていたある日、たまたま本屋に立ち寄った際に目に入った「眠らなくてはと、まぶたを閉じる。けれど、目の奥にすこんとした空洞がある。」という文に心を惹かれ本を手に取った。
【読んだ感想】
人々が寝静まった夜にひっそりと読みたい本と思った。
窓の外からの薄ぼんやりとした月明かりを感じながら、パラパラと屋根に当たる雨音を聞きながら、陽の光を浴びた洗いたての布団に包まりながら読んでいたい….と感じるような一冊だった。
''眠れない夜のために''というキャッチコピーの通り、宵闇の濃さに比例するかのような文章とじんわり圧しかかる重量感が上掛けのようで心地良い読後感であった。また、どのお話も登場人物1人1人の心理描写が丁寧に描かれており【夜の冷たさ】や【一人で好きな事をできる自由さ】をどう感じ取るのかがそれぞれのエピソードで描かれていて、眠れない仲間はここにもいるよ。近くにいるよ。と伝えてくれているような錯覚を覚えた。
「空洞」「森をさまよう」「水のいきもの」
「あめ」「しじまの園」「木守柿」
「夜の王」「繡しい夜」「寝息」「仕舞いの儀式」
….眠れない夜は、から始まる10作品。
まるで隣にそっと寄り添ってくれるような言葉ばかりで心が温かくなった。
千早茜さんの本は以前から気になっており【透明な夜の香り】や【男ともだち】などを購入したいと思っていたところだったので、こうしてこの本を手に取る事ができて良かった….と思った。
''眠れない夜のために''というテーマなので、個人的にとても好きなおやすみソングを1曲共有して終わろうと思う、機会がある時に聴いてみてね。