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【読書日記】ミステリー好きに読んでほしい手塚治虫のマンガ三選 2025/3/2


ミステリー好きに読んでほしい手塚治虫

『鉄腕アトム』『火の鳥』『ブラック・ジャック』などの名作マンガを生み出した手塚治虫。ディズニーに影響を受け、映画的なコマ割りや独自のストーリーテリングを確立し、その後の漫画家たちにも多大な影響を与えたという「漫画の神様」です。

そんな手塚治虫のマンガですが、ミステリーファンが愛せる作品があるんですよ。いやいや、お子様向けじゃないの… 50年以上も昔のマンガなんてつまんないでしょ… なーんて、思ってませんか?

手塚治虫は青年、成人向けの作品もいっぱい書いてますし、令和でも十分に楽しめる密度の濃い作品ばかりなんですよ。あなたが思ってる10倍くらいは面白いから、絶対に読んでみてほしい!


奇子(あやこ)

東北の名家・天外家に生まれた奇子は、家の不名誉を隠すために土蔵に閉じ込められる。そこから20年間も監禁され続け、ついに外の世界へ出るが、彼女が目にしたのは、人間の醜さと欲望の渦巻く社会だった。封印された少女・奇子(あやこ)の壮絶な運命、戦後の日本の闇をえぐる衝撃作。

4歳の女の子を20年間も土蔵に閉じ込める話です。これマジですからね、今なら絶対発売できないと思うわ。

とにかくストーリーも、登場人物も、エロい描写も、戦後の時代背景も、何から何までインパクト鬼高。一度読んだらマジで寝られなくなるので、覚悟して読んでください。

戦後最大級の未解決事件としても有名な「下山事件」も扱っている本作。社会派ミステリーとしての読み応えもたっぷりです。手塚作品の中でもトップクラスに大好きな作品。

アドルフに告ぐ

1936年、ベルリン五輪の取材で訪れた峠草平は、弟の死の真相を追ううちにヒトラーの重大な秘密を記した文書の存在を知る。一方、神戸ではドイツ総領事館員の息子・アドルフと、ユダヤ人のアドルフ・カミルが親友として幼い時代を過ごすも、時代の波が二人を引き裂いていくことに… 歴史の渦に翻弄される「三人のアドルフ」の物語。

弟が殺されたのは、アドルフ・ヒトラーの重大な秘密を知ってしまったため?! いきなりミステリーな展開から始まる本作。戦時中のユダヤ人差別を中心に、人間と戦争と醜さを生々しく描いた社会派歴史ドラマです。

そのままハリウッドで映画にしてよってくらい完成度が高い、名作ですね。例えば『同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬』あたりが好きな方には、めっちゃオススメできる作品です。

火の鳥 異形編

戦国の世、男として生きることを強いられた少女は、父の死を願いながら伝説の尼・八百比丘尼を討つ。しかし彼女は寺から出られないようになってしまい、やがて彼女はある運命に気がつく…

『火の鳥』って、読みました? 聞いたことあるけど、まだ読んでないって方、結構いるんじゃないでしょうか。

未読の方は、ぜひ死ぬまでには読んでくださいね。なぜなら『火の鳥』を読むと、死ぬのが少し怖くなくなるんです。生命とは何か、少しだけ理解できる気がするんですよね。

さてそんな『火の鳥』から、ミステリーファンに向けて『異形編』をオススメしたい。世にも奇妙な物語のような不思議なストーリーで、読み進めるほどにゾワゾワ感が襲ってきますよ。イヤミスが好きな方はぜひ!


新しく出会った本たち

📖パンドラブレイン 亜魂島殺人(格)事件/南海遊(星海社FICTIONS 2025/2/19 発売)【今週イチ推し】

本格×特殊設定×青春が絶妙に融合したミステリー。

孤島の館でまき起こる、過去と現在の2つの密室事件。さらに人格転移をめぐる特殊設定要素を絡めつつ、コミカルな会話とシリアスな展開が絶妙に交差するという、バランス感覚が優れた作品でした。

名作ミステリーへのオマージュが随所に散りばめられ、ファン心をくすぐる仕掛けも満載。さらに終盤の怒涛の展開には度肝を抜かれること間違いなし。今年を上半期を代表する国内ミステリーだと思いました!

📖遥かな夏に/佐々木譲(新潮社 2025/1/16 発売)

映画と人生が交差する、青春の追憶。

本庄裕也のもとに現れた若き女性・真紀。「あなたは、わたしの祖父ですか?」この問いが、50年前の記憶を呼び覚ます。かつて映画に命を懸けた仲間たちを訪ね歩く旅の中で、忘れかけていた情熱と青春が甦るのです。

夢を追いかけたすべての人に響く、切なくも温かい物語。あなたも青春時代を振り返ってみませんか?

📖謎は花に埋もれて/宇佐美まこと(光文社 2025/1/22 発売)

生花店を営む志奈子、その夫であり刑事の昇司を中心として、関連する様々な人々の日常を切り取ったミステリー短編集です。

各話、視点人物が違う群像劇で、中心となっている人物の人生丸ごとを描いていて解像度がすんごく高いんです。

ミステリーらしい謎解きも難しすぎず、多種多彩なので読み飽きることがありません。構成も文章も洗練されていて、安心して楽しめる作品でした。

📖世界でいちばん透きとおった物語2/杉井光(新潮文庫nex 2025/1/29 発売)

ミステリー愛にあふれた物語。

作中作『殺導線の少女』の未完の結末と、その裏に隠された秘密を追う物語。ミステリーへの愛情がにじみ出ていて、さらに読者を楽しませながら奥深さを教えてくれるんですよね。

編集者・霧子の面倒見の良さや、女子高生・琴莉の魅力的なキャラ描写が光るのもポイント。終盤の謎解きと美しい幕引きに、読後は心が洗われるような感覚になる。前作『世界でいちばん透きとおった物語』を読んでない人は、本作とセットでまとめて読みましょう!


各作品の詳しいレビュー

各作品の詳しいレビューはブクログで記録しています。お時間があるかたは、ぜひ遊びにきてね。読んでいただき、ありがとうございました。


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