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【読書日記】本を読む意味ってあるの? 2024/12/15


本を読む意味ってあるの?

読書好きが必ずぶつかるこの疑問。今週、野崎まど先生の『小説』を読んで、ちょっとだけ自分なりの気づきが得られました。

読書が趣味ですよって人に言うと、すごーい、頭良さそう!みたいに言われるんですが、本人にとっては読みたいから読んでるだけだし、むしろ人間の憎悪や欲望まるだしの物語が好きだったりして、なんとも恥ずかしい思いをする。

読書がどのように役立っているのかってのは、誰でも一度は考えてしまうこと。確かにビジネス書でもエンタメ小説でも学ぶことは多いのですが、人生の糧になってるかどうかは、どうも現実味がありません。

本作『小説』の主人公である内海と一緒に文章の大海を泳いでいくうち、不安だったのは自分一人じゃないんだと気づかされるのです。

すぐに説明やエビデンスが求められ、どんなことでも合理性で判断される現代社会。読書に向き合うってことは、そんな現代へのアンチテーゼかもしれません。0でも1でもなく、正解でも不正解でもなく、読んだ人それぞれの感度で、量子コンピューターのように解釈が広がり続ける。

本を読む意味を明確にすることなんかより、何も考えず文字の宇宙に飛び込んでいい。書き手との対話を楽しめばいい。感じたことを言っても、言わなくても、どんな解釈を持ってもいい。人それぞれに無限の意味があって、その意味自体も無限にあるものなんですよね。


新しく出会った本たち

永劫館超連続殺人事件 魔女はXと死ぬことにした/南海遊(星海社FICTIONS 2024/3/28 発売)【今週イチ推し】

何度もタイムループしながら殺人事件と魔女の秘密を探る、特殊設定本格ミステリー。今年も多くの特殊設定ものが出ましたが、謎解きとストーリーのバランスが取れていて、どなたにもおすすめできるイチ推し作品です。

「信頼」の難しさを描いた作品で、読むほどにこれまでの自分の行動を振り返ってしまう。誰と生きるかという重要なテーマを教えてくれました。

小説/野崎まど(講談社 2024/11/20 発売)

読書が寝食よりも好きな主人公とその友人の物語。小説家の先生との出会いや友人との関係性を通じ、小説の内側にある虚構と小説の外側にある現実の乖離に困窮していく。

クライマックスでの主人公と友人の会話に無限の愛を感じました。第172回(24年下半期)の直木賞候補になってほしかったんだけど残念。そのくらい高次元の文芸作品、控え目に言って必読です。

有栖川有栖に捧げる七つの謎/アンソロジー(文藝春秋 2024/11/6 発売)

有栖川有栖、作家デビュー35周年を祝うオマージュアンソロジー。青崎有吾、一穂ミチ、織守きょうや、白井智之、夕木春央、阿津川辰海、今村昌弘(敬称略)といった、今一番脂がのってるミステリー作家陣による作品集。

有栖川先生の人気シリーズのコピーかと思いきや、それぞれの先生がもつ強みがしっかり入ってるし、本家には書けない読み味も出てる。プロが本気で遊ぶとこうなるっていう良い例。

モウ半分、クダサイ/愛川晶(中央公論新社 2024/10/21 発売)

落語の噺を背景に、人間の欲や惨めさを描いた連作短編集。人間がながらく生きてると陥りがちな甘えや隙に対して、ブラックユーモアで包み込む。

日本の伝統芸能である落語の楽しみを教えてくれる良い作品。自分も含めて、いかに人間が弱いかってのが骨身にしみる。


各作品の詳しいレビュー

各作品の詳しいレビューはブクログで記録しています。お時間があるかたは、ぜひ遊びにきてね。読んでいただき、ありがとうございました。


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