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キャンセルカルチャーとか遡及とか
キャンセルカルチャーやら遡及やら、言ってしまえば「過去に遡って過去の言動を断罪すること」です。軽くて「糾弾すること」です。
※追記
キャンセルカルチャーはおもに現在進行形のものに当てはめるようです。が! 東京オリンピックのときのように、ラーメンズ小林賢太郎さんやコーネリアスこと小山田圭吾さんのように過去に遡ってキャンセルされることもあります。
民主的な政治体制で遡及してはいけません。いや、どの政治体制でもダメなんですけどね、
たとえば過去、ヒロポンは合法でした。ですが今は覚醒剤として取り締まりの対象となっています。しかし、過去にヒロポンを常用していたからといって、今の法律を適用して逮捕起訴投獄なんてしてはいけないのです。
なぜなら、為政者のやりたい放題になってしまうから。たとえば政権交代して、1990年代にチャイルドシートを設置していなかったことを理由に政敵を逮捕してしまうような社会は勘弁です。住みたくありません。
で、キャンセルカルチャー。一応、Wikipediaを引用します。
キャンセル・カルチャー(英語: cancel culture)は、2010年代後半から使われるようになった用語で、「容認されない言動を行った」とみなされた個人が「社会正義」を理由に法律に基づかない形で排斥・追放されたり解雇されたりする文化的現象を表す。この排斥は対象者の社会的・職業的な領域に及ぶこともあり、有名人に関するものが最も注目されやすい。排斥された者は「キャンセルされた」と言う。
簡単にまとめると、「過去の発言をあげつらってみんなで叩く」です。人間なんて簡単に変わるし、反省するし、昨日の自分と今日の自分は違うわけです。にも関わらず、みんなでよってたかって叩くわけです。しかも法律によらず、です。
法律によらずに解決することを、自己救済と言うのはご存知かと思います。もっとありていに言うと、リンチ=私刑です。これをやる人たちははっきり言って法治国家を理解していません。放置国家です。はい、滑ったー。
映画や小説などの物語世界では、警察に頼らず自ら復讐するものがあります。ジャンルとしては「ビジランテもの」なんて言われたりします。
南米やアフリカの国々では、マジのマジで村人がよってたかって、泥棒の手を切り落としたりぶっ殺したり、リンチを加えるような地域があります。法が存在しているのにもかかわらず、リンチする、これはものすごーく狭い世界で生きているということです。だって、その村でのルールしか知らないんですもの。
キャンセルカルチャーをやっちゃう人、つまりキャンセルする人たちって、物理的なリンチを加えている人たちと同じで、狭い世界で生きている証左なわけです。SNSの中とか。って言うか、ほぼSNSの中。
以前、薬物で逮捕された芸能人がいました。そのとき、ワイドショーのコメンテイターを務めていた麻木久仁子氏がこう言ったんです。
「芸能界は復帰できてしまう。だからダメなんだと言われてしまう」
一言一句同じではありませんが、ようするに、犯罪を犯しても復帰できる芸能界を批判したわけです。
しかしこれって非常に差別的なんですよね。
なぜかと言えば、「どの職業が復帰を許されて、どの職業が復帰すら許されないのか?」という職業差別が、言葉の裏側に隠れているからです。
であるなら死ぬまで生活保護をもらうかホームレスでいるかしかありません。
罪を犯して復帰できる仕事の何が悪いんでしょうか? 復帰すら許さない社会であっていいのでしょうか?
ちなみに『底辺の仕事ランキング』という、職業差別に関する怒りを書いた記事があるので、よろしかったらそちらも是非。
志井永子