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読書感想文〜エヴリシング・フロウズ(津村記久子)〜

中学生の頃が、一番汚かったと思う。

外見もニキビができたりして、汚かったが、何よりも心の奥底が汚かった。あれは、何だったんだろう。

親への反発、兄弟仲、部活、異性、その他もろもろ。

今思えば、「あんな田舎の中学校、どうでもいいじゃん」と思えるが、あの当時は、それが全てだった。

そんなことを思い出させてくれたのが、「エヴリシング・フロウズ」。

「ジャケ買い」なんて言葉があった。図書館で借りたから、「ジャケ借り」だ。何だろう。心が惹きつけられた。

絵の好きな中学3年生のヒロシは、背が高くいつも一人でいる矢澤、ソフトボール部の野末と大土居の女子2人組、決して顔を上げないが抜群に絵のうまい増田らと、少しずつ仲良くなっていく。 母親に反発し、学校と塾を往復する毎日にうんざりしながら、将来の夢もおぼろげなままに迫りくる受験。

ヒロシの友達の矢澤が、あらぬ噂で、クラスの中で孤立していく。この感じ、自分にも経験がある。クラスの女の子からの告白を「部活頑張りたいから」で断った、次の日。クラスの女子全員から無視された。男子からも、距離を置かれた。
そこまで仲が良くなかった友達が1人、僕の側にいてくれた。そいつが言った、「こんなのおかしいよ」の一言が何よりも嬉しかった。

その女の子にしてみれば、「自分の思いが踏みにじられた」という感じだったのだろう。それを友達に伝えて、その友達が友達に伝えて・・・。冷静に考えてみれば人の話なのに、なぜあんなにも憎悪が沸き上がってくるのだろう。よく知らない女の子に、信じられないほど睨まれたこともあった。

そこから、僕は人と距離を置くようになった。その女の子のことが、大嫌いになった。1週間もすれば、クラスは元通りになったが、たまに、その女子のグループから嫌な視線を受けた。

僕は、地元から少し離れた高校に進学した。

「エヴリシング・フロウズ」は、そんなどうでもいいようなことを思い出させてくれた。何かをしたくて、でも何もできない自分にも気付いて、心の中が汚い気持ちでいっぱいになって・・・。体の発達に心が付いていかなくて、もう何が何だか分からなかった、そんな中学校時代。

爽やかだけではないのだ。少なくても僕はそうだった。
「中学校、最高だった!青春最高!!」という人には、おすすめできない本だ。でも多くの人は、共感するはず。胸が疼く感じを久しぶりにしたい方は、ぜひ読んでみるといいと思う。

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