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探検!ゲーム条例制定後の香川県議会の議事録を暴こう!(2020年版)3/6

香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(以下、ゲーム条例)制定後、香川県では、その影響を受けた施策が次々と施行されている。
ゲーム条例を成立させた根源的な考え方とは何か。その考え方の何が歪んでいるのか。公開されている議事録を精査することで、それを少しでも把握したい。本稿は、それを目的に作成した。
当然、良い点があれば紹介したかった。しかし、「探検」の結果、それは叶うことはなかった。むしろ、頭が痛くなる内容ばかりだった
その頭の痛くなる発言が詰まっている議事録を、解説付きで暴く。

この階層では、ビデオゲームの時間規制といったゲーム条例の象徴的な問題に捉われていると見えない、実務面における致命的な問題点を中心に探索する。特に、依存症回復支援を仕事とする方は心して挑みたい。

[ おことわり ]
議事録は、できる限り原文のまま掲載していますが、文章の前後関係の意味を通すため、文意を崩さないよう編集をしています。何卒ご了承ください。

登場人物

前提となる事実

本稿では、ビデオゲームの時間規制、パブリックコメントや制定過程が問題点として大きく取り上げられるゲーム条例において、それらに匹敵するがあまり触れられていない問題点について触れる。その問題点とは、ゲーム症(医学的に正しい『ゲーム障害』の名称、以下はこちらで記述)になった当事者へのアプローチ、および、ケアに関する思想と、行政の支援/保障制度の杜撰さだ。それを議事録を介して見る前に、以下の事項を把握いただきたい。これが、本稿執筆時点におけるゲーム症の取扱いの真実だ。

・WHO及び日本国政府、そして、日本国の医療行政を管轄する厚生労働省は、ゲーム症を疾病(病気)と認めていない
・上述の組織は、ゲーム症の正式な診断基準を有していない
・2022年に発効される、ICD-11(国際疾病分類 第11版)の正式版を世界各国が持ち帰り、そこで初めて病気として認めるか否かの検証が開始される。日本の場合は、厚生労働省によってそれが検証され、結果、疾病と認定された場合にのみ、医療従事者向けに優先して診断基準と治療ガイドラインが公表される。

以上の事実を踏まえて、議事録を見ていこう。

第3階層-1:予防措置と、依存症当事者へのアプローチ

工代 祐司:
ネット・ゲーム依存予防対策のための学習シートを作成し、学校で児童・生徒が自らスマートフォンやゲーム機の使用時間等のルールを考え、それを家族と話し合う取組を行います。(中略)また、幼児の保護者を対象としたスマートフォン等の適正利用に関する啓発活動も昨年から開始していますが、2020年度はDVDを作って啓発していくということです。それから、医療機関と連携して、教員やスクールカウンセラー等向けの予防対策マニュアルの作成にも着手しているところでして、2020年度に実施を予定している事業については、着々と進めていきたいと思います。
工代 祐司:
2020年度までに、ネット・ゲーム依存予防対策マニュアルを作ります。

日本国の医療行政を司る厚生労働省からしてゲーム症の診断基準や治療ガイドラインを有していない*1 のに、どのように香川県独自で「予防対策マニュアル」を作るのだろうか。論理的ににおかしい。それにもかかわらず、教員やスクールカウンセラー等向けの「ネット・ゲーム依存回復プログラム」は、実際にもう現場に出されてしまっている。このマニュアル一式の内容が気になる方は、本文終盤にあるリンク先から入手されたい。
一方、DVDについては、以下で紹介したものだ。

本稿では、監修者について詳しく触れる。
コンテンツの監修者の1人、鈴木 裕美氏は、親学の思想を盛り込んでICT機器の運用ルールを作るよう促している。ICT機器の運用ルールの作成に一切関係ないにもかかわらず、「愛着の形成」という親学特有のワードをそこに混入させるほか、ITサービスの使用と脳内分泌物質との関係についてウソの情報を平然と述べている*2。ちなみに、ペアレンタルコントロール機能は、子どもの自制心を育てるために開発されたものではない
コンテンツの監修者の1人、海野 順氏も、ゲーム症/インターネット依存症の対策に関する助言内容がおかしい。「年齢の早い時期から、リアルの世界がつまらないと思うときに好きな動画を見ていれば早く時間が過ぎてくれると認識してしまうことが、ゲーム症/インターネット依存症につながる」*2「思ったよりも長くインターネットを使っている機会が多くなると、ゲーム症/インターネット依存症につながる」*2など、健常者でもよくあるシチュエーションまで、ゲーム症/インターネット依存症になる原因と書いている
ちなみに、ITサービスを過剰に長く利用しているとゲーム症/インターネット依存症になると断定した科学的根拠は、本稿執筆時点で、世界中のどこを探しても存在しない。つまり「ITサービスを使いすぎると、ゲーム症/インターネット依存症になると断定する表現」は、ウソだ。

土岐 敦史:
なお、具体的な回復プログラムの作成に当たっては、現在、ネット・ゲーム依存の外来を開設している三光病院の海野医師に原案の作成を依頼しており、医療機関や学識経験者などに御意見を伺いながら作成を進めているところです。2020年度中に作成して、医療機関や相談機関に配布することとしています。

そのような「とんでもない思想」を持つ人が、ゲーム症回復プログラムに関するマニュアルの原案を作成している。なお、「医療機関や学識経験者」というが、香川県の言うネット・ゲーム依存症界隈でコネがある「医療機関や学識経験者」は、以下の通りだ。

医療機関・識者一覧

なんと、思考がまともではない人たちばかりだ。これは、とんでもない内容の診断基準や治療ガイドラインが、香川県内の医療機関や支援施設向けに配布される恐れが否定できないことを示唆する。
ちなみに、ゲーム条例では、予防措置に関しては、第4条で定められている。しかし、この内容も悪い意味ですごい。親学が混じっているなど、ツッコミだらけの内容だからだ。それが何をもたらすのかは、後述する。

[ 香川県ネット・ゲーム依存症対策条例 第4条 ]
1. 県は、前条の基本理念にのっとり、ネット・ゲーム依存症対策を総合的に推進する責務を有する。
2. 県は、市町が実施する施策を支援するため、情報の提供、技術的助言その他の必要な協力を行う。
3. 県は、県民をネット・ゲーム依存症に陥らせないために市町、学校等と連携し、乳幼児期からの子どもと保護者との愛着の形成の重要性について、普及啓発を行う。
4. 県は、子どもをネット・ゲーム依存症に陥らせないため屋外での運動、遊び等の重要性に対する親子の理解を深め、健康及び体力づくりの推進に努めるとともに、市町との連携により、子どもが安心して活動できる場所を確保し、さまざまな体験活動や地域の人との交流活動を促進する。

第3階層-2:依存症当事者へのケア

岡野 朱里子:
ネットやゲームに対する依存傾向の改善のために有効な手段の一つであるデジタルデトックス、具体的には文部科学省の委託事業として、国立青少年教育振興機構が行っている青少年教育施設を活用したネット依存対策推進事業について勉強会を開催しました。

岡野氏には大変残念なお知らせになるが、デジタルデトックスに効果がある旨の根拠はなかったことが科学的に実証されてしまった。

世界的にも、ビデオゲームを含めたITサービスから強制隔離させるのではなく、むしろ、ビデオゲームを含めたITサービスを橋頭保として、それと対等な位置で自由に乗り換え可能な依存先(他の趣味)を探すケアの方針を採用する流れにシフトしている。

岡野 朱里子:
ネット依存傾向の青少年を対象に、青少年教育施設を活用してキャンプ(自然体験や宿泊体験プログラム)を実施するもので、この事業の狙いは、以下のとおりです。
1.ネット依存状態からの脱却のきっかけづくり
2.集団宿泊生活による失われた基本的生活習慣の回復
3.仲間と活動することによる低下したコミュニケーション能力の向上
2014年に始まったこの事業は、独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターと連携し、治療としてだけでなく、教育的観点も取り入れた体験活動プログラムを実施し、教育と治療の融合による事業を行ってきました。
キャンプの日数や参加人数、対象年齢は様々ですが、各地域の報告書によると、キャンプ中に、そしてキャンプ終了後にも子供たちの言動やネット・ゲームとの関わり方や意識に変化が見られ、リアルの友達をつくる努力をしたり、家族とコミュニケーションが増えたり、学校に行けるようになったなどの成果が出ています。また、新たな気づきとして、発達障害の傾向にある子供たちとネット依存傾向にある子供たちに親和性があることや、ネット依存傾向にある子供たちの低年齢化、家族の持つネットとの関係性と子供のネット依存傾向との親和性などが挙げられています。
ネット・ゲーム依存は、ネット・ゲームを取り上げて解決するものではなく、自分の生活を大切にしながら家族や人との関わりを深められる人生を送るために、ネット・ゲームと関わるルールを自らつくるようになることがまず第一歩ですので、そのきっかけづくりとなるこのキャンプは大変有効だと思います。

岡野氏が熱烈に推している「ゲーム症/インターネット依存症治療キャンプ(以下、『キャンプ』と記述) 」についてだが、こちらについてもほとんど意味がないことが、きちんとした学術調査を行った中国人科学者からレポートされた。

キャンプに意味がない理由を、その科学者は「親が子どもたちの依存症の原因を探っていないから」と言い切っている。
国内でも、子供・若者育成支援推進大綱案の中で、ゲーム症の治療を行うために、キャンプをほぼ強制させることに言及されていたが、こちらについても、中国と同様に、効果がないと推察される。中国でのキャンプの調査でもあったが、治療の名のもとに人権侵害に等しい行為が平然と行われる恐れも否定できない。加えて、集団生活自体がストレス過多の原因になっているなど、当事者ごとに異なる病状の背景を一切無視したケアプランでもある。それ以上に、当事者本人の「やってみる」旨の強い意志がない限り、キャンプによるケアは有効に作用しないのが現実だ。結果、当該部分は削除される方向になった。岡野氏は、当然、そのようなことは知らないのだろう。

内容の修正

土岐 敦史:
2021年第1四半期までに、医療機関等が依存症から回復を図るための支援ツールとして作成しているネット・ゲーム依存回復プログラムは、当事者向けのワークブックと家族等の支援者向けのマニュアルの2種類を作成することとしています。そのうち、心理療法の一つである認知行動療法を活用した当事者向けのワークブックは、精神科や児童精神科を標榜する医療機関などでネット・ゲーム依存の治療の一つのツールとして使用していただくことで、専門的に依存症治療に取り組む医療機関を増やしていきたいと考えています。一方で、支援者向けのマニュアルは、家族等の身近な支援者が、当事者にどのように接すればいいかなど、支援者が知っておくとよい内容を取りまとめたもので、この内容について、かかりつけ医が学んでいただくことで、家族等の支援者にアドバイスを行うほか、専門の依存症治療機関につなぐこともできるかと思います。そうしたことで、早期発見、早期治療につなげていきたいと考えています。
なお、具体的な回復プログラムの作成に当たっては、現在、ネット・ゲーム依存の外来を開設している三光病院の海野医師に原案の作成を依頼しており、医療機関や学識経験者などに御意見を伺いながら作成を進めているところです。2020年度中に作成して、医療機関や相談機関に配布することとしています。
土岐 敦史:
回復プログラムの作成後、今年度中に開催を予定している回復プログラムの使い方研修会には、精神科医に加えて、小児科医も案内し、受講していただくことにより、依存症についての理解を深めていただいて、依存症専門医との連携を図り、早期にネット・ゲーム依存防止につなげられるよう、医療提供体制の充実に取り組んでいきたいと考えています。

「支援者用のガイド」「かかりつけ医師用のガイド」というが、専門外の分野を扱うことは医師にとってもリスクが高いだろう。ゆえに、業務として、小児科医に児童精神医学を扱えるとは、私にはとても思えない。支援者の立場でも同じだろう。誤った知見に基づいた回復プログラムなら、当事者の家族、および、支援者や医師は、以下のスライドで示す行動をとることが予想される。

なお、医療行為を行う点においては、立場は関係ない。ゆえに、医師免許を有していない支援者が、香川県謹製の回復プログラムに従って治療行為を行うリスクを香川県は想定しているのか、疑問に思う。科学リテラシーを備えている人は、そこについて相当の危惧を抱いている。

ちなみに、教員やスクールカウンセラー向けの「香川県謹製ゲーム症回復プログラムガイド」は、以下のリンクから入手できる。プログラムガイドの後半部は、後述する「CRAFT(クラフト)」をもとに記載しているのだが、個人的には、前半部の内容は、マニュアルとして使えないレベルの欠陥が多いと感じた。過剰なアプリ内科金の問題を語るうえで絶対に欠損させてはならない内容(クレジットカードの運用に関する規定)が完全に欠損している、子どもがお小遣いを貯めて自分のPCを買うことを病気(ゲーム症疑いがある)と扱うなど、まったくまともではない記述が目立つからだ。

中三階:CRAFTとゲーム症/インターネット依存症

「CRAFT(Community Reinforcement and Family Training=コミュニティー強化と家族訓練の略称)」は、USAで開発された、アルコール依存症になった当事者がいる家族の人用の教育用プログラムで、認知行動療法がベースになっている。これは、以下の目的のために作られている。

1. 当事者と激しく対立して家族間の人間関係が壊れ、さらに状況が悪化することを防ぐこと
2. 当事者の「支援を受けたい」動機を自然に高めさせること

アルコール依存症は、ゲーム症/インターネット依存症と「当事者の置かれた背景」が似ているため、応用するための研究が進んでいる。
依存対象から確実に切り離さないと当事者が医学的に死亡しかねないアルコール依存症と違い、ゲーム症/インターネット依存症は、依存対象からの切り離しは必須ではない。機器の故障もない状態で普通にICT機器を使っている限り、機器の使用者が医学的に死亡することはないからだ。これらのことから、個人的には、似てはいるが、最終的には対アルコール(薬物)依存症のものとはプログラムの内容が異なるものになると予想している。
さて、日本では、引きこもりからの回復でCRAFTの応用を試みている事例が見受けられる。これにしても、当事者の置かれた背景の分析と理解が前提となる。なお、ゲーム症/インターネット依存症になった人へのケアにあたっては、特に、ゲーム症/インターネット依存症になった背景「不登校」だった場合は、引きこもりになった人のケアと重なる*4 部分があるため、そこから当事者にアプローチする方法の模索も進んでいる。いろいろ調べたが、CRAFTを使うか否かにかかわらず、ゲーム症になった人のケアについては、以下のことは確実に言えると推測する。

1. 当事者の置かれた背景を理解することがケアの始点であり中心であること
2. 施設への隔離、ITサービスからの切り離しは必須ではないこと
3. 家族間の愛着とは関係がないこと
4. あくまでも、ITサービスは、行動嗜癖の「触媒」であり、それへの長時間の接触やその存在自体が行動嗜癖を起こした原因ではないこと

第3階層-3:行政の支援/保障制度

現時点では、厚生労働省による治療ガイドラインや診断基準が存在しないため、医療従事者であっても「診断ミス=医療ミス」を犯す恐れが高い。ゲーム症のICD-11への正式登録を議論する際、日本を除く世界中の研究者がおおむね反対した理由もそこにある*3。
今回は、特に、香川県が独自の疾病「ネット・ゲーム依存症」を定義したので、治療、社会復帰を含めた当事者のケアに関して、香川県の責任は凄まじく重大となる。
しかし、当事者のケアと、そこに関する各種支援・保障制度の子細に関する規定については、規制や予防の方針と打って変わって、具体性に欠け、適当にあてつけただけの貧弱な内容にとどまっている。下記の内容で「すべて」なのだ。記述内容の貧弱さは、この領域について香川県が知見を備えていない、あるいは、眼中にないことを意味する

[ 香川県ネット・ゲーム依存症対策条例 第3条 ]
3.ネット・ゲーム依存症対策は、予防から再発の防止まで幅広く対応する必要があることから、県、市町、学校等、保護者、ネット・ゲーム依存症対策に関連する業務に従事する者等が相互に連携を図りながら協力して社会全体で取り組む。
[ 香川県ネット・ゲーム依存症対策条例 第14条 ]
県は、ネット・ゲーム依存症である者等がその状態に応じた適切な医療を受けることができるよう、県民がネット・ゲーム依存症に対する医療提供体制の整備を図るために必要な施策を講ずる。
[ 香川県ネット・ゲーム依存症対策条例 第15条 ]
県は、ネット・ゲーム依存症である者等及びその家族に対する相談支援等を推進するために必要な施策を講ずる。
[ 香川県ネット・ゲーム依存症対策条例 第17条 ]
県は、第12条から前条までの施策の効果的な実施を図るため、市町、学校等、保護者、ネット・ゲーム依存症対策に関連する業務に従事する者等の間における連携協力体制の整備を図るために必要な施策を講ずる。
[ 香川県ネット・ゲーム依存症対策条例 第19条 ]
県は、ネット・ゲーム依存症対策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努める。

そのような法令の内容の充実性に関係なく、実務として、ゲーム条例で「世界初の疾病」を独断専行して決めたことが、ほかならぬ香川県に対して、ブーメランとなって跳ね返る。
“ネット・ゲーム依存症”なる「世界初の疾病」を独断専行して定義した以上、香川県は、それに対して、法的保障(障碍者認定、それに伴う給付金制度の設立、関連法規の変更など)、治療から社会復帰までの全面的な支援を含め、その全責任を、香川県の持つリソースのみで賄わないとならないからだ。これには、誤診だった時の精神的苦痛(差別を受けるなど)に対する民事及び刑事補償への対応も含まれる。もし、ゲーム条例が、真にゲーム症に苦しむ子どもやその家族を支援する目的で作られているなら、この部分の条項が最も充実していなければならないはずだ。しかし、実際はそうではない。
ゆえに、ゲーム条例は、実務面で重大なリスクをもたらしうる欠陥法令と断言できる。

第3階層:議事録内大探検の暫定結果

ゲーム症に苛まれる子どもや、その家族の支援を早く行いたい気持ちはわかる。しかし、香川県は、完全に勇み足を踏んでしまった。科学リテラシーと情報リテラシーに乏しいことも作用し、誤った知見をふんだんに取り込み、法令として制定してしまったからだ。
実際、香川県が依存症回復支援者に頒布する回復マニュアルには、その誤った知見が充満している。学校関係者向けで以下の有様なので、医療従事者向けの内容を考えると、頭が痛くなりそうだ。

教師用マニュアル問題点_例

このような内容で仕事を強いられることとは、作業手順書なしで産業機械の整備を行う業務に従事することと同じで、極めて危険な代物としか言えない。皮肉だが、その被害を受けるのは、ゲーム条例が本来救わないといけない、ゲーム症に苛まれる子どもやその家族なのだ。
また、また、ゲーム条例では、ITサービスの使い過ぎという「状態」と、依存症という「精神病理」が完全に混同されて扱われている。乱暴に言えば、違憲云々を問う以前に内容が壊れているのだ。

問題点_02

そして、「万一のこと」に対する措置をまともに決めていないのだから、依存症回復支援者が当惑するのは当然の反応だ 。

しかも、議事録を見る限り、香川県は、県謹製の回復プログラムに従えば、誰でも「ネット・ゲーム依存症」を確実に予防、治療できると捉えている。分野にかかわらず、技術を行使する仕事で、このような慢心は、重大インシデントを招く危険な考えだ。
以上のことから、本稿に書いた一連の憂慮は、現実化する雰囲気しかしない。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ご意見やご感想は、著者 (Twitter:@Attihelo37392M)までいただけると幸いです。

キミは無事に第3階層を踏破できた。
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参考資料

・香川県議会議事録 2020年7月2日:令和2年6月定例会、文教厚生委員会[教育委員会]、本文
・香川県議会議事録 2020年9月29日:令和2年9月定例会、文教厚生委員会[健康福祉部 病院局]、本文
・香川県議会議事録 2020年9月30日:令和2年9月定例会、文教厚生委員会[教育委員会]、本文
・香川県議会議事録 2020年10月6日:令和2年9月定例会(第3日)、本文
・吉川 徹『ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち』
・アルコール依存症ナビ「家族のためのプログラム『CRAFT』」(http://alcoholic-navi.jp/follow/craft/)
・NHKハートネット「“依存症”からの回復【後編】 新たな家族支援「CRAFT」とは?
(https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/265/)
*1 音喜多 駿参議院議員による「香川県ゲーム条例質問主意書」デジタルコピー(https://drive.google.com/drive/folders/11lccVgb0kp0iCv7-yhfq0DVwkO0l-c9f)
*2 香川県「ネットパトロールぴっぴ隊」(https://researchmap.jp/tanzukimama/misc/20963790/attachment_file.pdf)
*3 IGDA日本アカデミックブログ「ゲーミング障害の政治とゲーム開発者ができること」(http://igdajac.blogspot.com/2020/01/blog-post.html#more)
*4 小山 秀之、鈴木 太 「ひきこもりと行動嗜癖:地域での経験から」児童青年精神医学とその近接領域 60巻 2019年2号
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscap/60/2/60_180/_article/-char/ja/)

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