グラスの氷は溶けてしまって
艶めいた珈琲色の溢れる肌に触れて、素直になれたり、捻くれたり、素直にさせられて思うことは珈琲はおいしいということ。
僕らはいつまでも待つ、縋るように燻るように灯火を求めて。希望的観測に打ち崩されないように、可能性の裏側に隠れてしまう。
カップに注いだ珈琲の水面には僕が映る。
そこには誰もいなくて、けれど確かに誰かを感じる。珈琲は不思議な飲み物だと思う。
失った時間は取り戻せないけれど、これ以上奪われてしまわないように靴紐を結ぶ。呆れるほどの無知も誰かを傷つけないよう、この身ひとつにしまっておきたくなる。
そうやって生きた中でまた新しい出会いがあり、別れがあり寂しさに震えて眠る。朝がくれば珈琲を淹れて、この気持ちを滲ませないよう暮らしを学んでいたい。
とりとめのない会話のフレーズや、文脈における呼吸だったり。大切な人と過ごす時間を思い返す瞬間だったり、きっとアルバムには映らない今を心に秘めて。この先もずっと変わらないよう、変わっていきたい。
今日はここまで、またいつか。
この場所で