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2024年4月の記事一覧
「人間の境界」
映画『人間の境界』公式|5月3日(金・祝)公開 https://transformer.co.jp/m/ningennokyoukai/ 映画を作る目的には何種類かあると思う。 当然、エンタテイメントをするものがその主をしめることは確かだが そのほかに 世に対して問題意識の提示や警鐘、啓蒙をも目的とするものも多い。 そして、ある意味ジャーナリズムの観点から 現在起こっている事実を世界に広く伝えることをそれとするものも。 本作は「知っているようで知らなかった」悲劇の『事実』を私たちに伝えるという事を目的とし 衝撃的事実を明白にしてくれている。 ヨーロッパ各国ではシリアをはじめアラブ諸国やアフリカから多くの難民の流入が大きな問題となっていることは メディアで多く取り上げられているから、皆も認識しているだろう。 それは移動の困難さや入国後の生活困窮にフォーカスされれいることが主である。 もちろん、それはそれで大きな問題ではある。 実はそれだけではないメディアでは伝えられていなかった、悲劇的事実があった。 この作品がそれを私たちに伝えてくれている、それが映画の役割の大きな役割の一つだった、と。 今もベラルーシとポーランドの国境では ポーランドへの亡命を望むもの、またはそこを通り過ぎ他のユーロ諸国への亡命を希望する難民たちでであふれている。 しかし、ここでは、亡命受け入れどころか、通過するだけでも、両国軍により実は多くの命が奪われ はてには、亡骸さえまるでごみのように、相手国へ投げ込みられるという 現実的悲劇が行われている。 もちろん、そんな場でも彼らを救おうとするボランティア団体の活躍も。 ともかく こうした事実を映像物語として伝える本作の重みは、とんでもないレベルである。 監督は、3度のオスカーノミネート歴を持つポーランドの巨匠アグニエシュカ・ホランド。 本作では2023年ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門で上映され、審査員特別賞を受賞。 2023年9月にポーランドで公開され、当時年間最高となる異例の大ヒットとなった。 ただし、公開にあたっては この事実が明るみに出ることを良しとしない政府による大きな圧力があったとのことだ。 2024年5月3日 公開
「ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ」
「ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ」公式サイト|5.3(金)よりROADSHOW !! https://www.zaziefilms.com/kurnaz/ この事実を題材に取り上げた時点で十分かと思いきや・・・ 2001年、アメリカ同時多発テロ9・11の直後。 ドイツのブレーメンに暮らすトルコ移民一家の長男が旅先で“タリバン”の嫌疑で あの過酷なグアンタナモにある米軍基地の収容所に収監される。 アメリカ本土ではない(キューバにあるアメリカ収容所)地区、 長男はドイツに長期滞在だがいまだにトルコ国籍 そして舞台はドイツ、裁判はアメリカ と 三重にも四重にも絡まった国際要素も事を複雑にする。 しかし無実の息子を救うために奔走する母親。 本作はこうした信じられないような事実と複雑さ、困難さをベースにした物語。 ではあるが、なんと、それを コメディー仕立てで組み立てている。 当に「ドイツのオカン」というべきふくよかなの母 奔放というか型破りな明るい性格、 食べることがすべての解決策とでもいう主義、しかも超甘いもの好き。 こうした設定が 時には現実の厳しさをやわらげ、 時にその厳しさ過酷さを観る者により強く訴える。 本作は この事実を題材に取り上げた時点だけではなく、 それをコメディーとして仕上げることで 見事に勝負がついたと言える。 戦争や迫害などのつらさを ユーモアを交えて描いた有名な作品に 「ライフ・イズ・ビューティフル」 https://eiga.com/movie/50458/ があるが もちろん、苦難の中身、コメディー仕立てなのかの違いはあるが どちらも苦しさの中に笑いを求めて描いている。 そして本作は 苦しさを笑い(ユーモア)で「和らげる」のと それを笑い「飛ばす」のとの違いに 気づかせてくれた。 資料から 監督を務めたのは、『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』(18)などで知られるドイツの俊英アンドレアス・ドレーゼン。 主役のオカンはコメディアン メルテム・カプタン。 トルコ系ドイツ人でありアメリカでミュージカル俳優として活動したのち、ドイツで人気のコメディアンとして活躍。 本作は、第72回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(主演俳優賞)受賞。 さらにベルリン国際映画祭では銀熊賞(脚本賞)のW受賞も果たし、 更に、ドイツで最も権威のあるドイツ映画賞では作品賞、主演女優賞、助演男優賞の3部門で受賞した。 題材である2001年のテロ そして ウクライナやパレスチナでの戦火を見る今 かつてテロリストを排除するべく強行に出たアメリカの行動が 改めてどうだったのか、考えさせられる作品でもある。 2024年5月3日 公開
「悪は存在しない」
映画『悪は存在しない』公式サイト - EVIL DOES NOT EXIST|監督:濱口竜介×音楽:石橋英子 https://aku.incline.life/ 僕はこう思う、、、 君はどう? と、 観た後に思わず問いてしまいたくなる作品。 試写案内には抽象的な事柄ばかりで 本来のストーリーなど内容が分かることは 全くと言ってよいほど書かれていなかった。 ???一体なんなんだろう? と思いつつ、試写。 自然が豊かな高原別荘地 都心からも近く、移住者も増えつつ地元の人々たちとの共存も進み穏やかな生活がそこにある。 そんな地で代々暮らす主人公の巧(大美賀均)とその娘・花(西川玲)は、 自然に囲まれながら湧き水を汲み、薪を割るような生活を送る。 その地にある日、グランピング場を作る計画が持ち上がる。 それはコロナ禍の助成金を目当にした、本来このような事業に理解も経験も無い芸能事務所の計画だった。 そうした事業主の未経験かつずさんな計画に森の環境や町の水源破壊を危惧する住民、そして巧。 双方の思いと思惑がくりなす自然保護ドラマかと思いきや・・・・ 物語はこれだけではない、 むしろその裏に流れるうねりのような題材と人間模様を 僕たちは観ることになる。 そして、先に書いた、試写案内にも公式HPにもこれ以上のことが書かれていない その理由も。 何なんだろう、この作品力は。 ともかく観てください。 監督の濱口竜介 前作「ドライブ・マイ・カー」でカンヌ映画祭脚本賞など4冠、アカデミー賞国際長編映画賞を受賞。 その彼の次作である本作が 第80回ヴェネチア国際映画祭では銀獅子賞(審査員グランプリ)を受賞 見事にその重圧を押し返してくれたと言える! 本年「極楽映画大賞」グランプリノミネート! 2024年4月26日 公開 PS そうそう、観終わってすぐに思ったもう一つの事 昨年(2023年)の 極楽映画大賞受賞作のスペイン映画 「理想郷」 との類似性だ。 それは、単に上辺が似ているということではなく ストーリー展開、裏に流れる問題意識、全体を覆うテイスト そして監督の力量すべてに。 映画『理想郷』公式サイト https://unpfilm.com/risokyo/ PSS 冒頭に エンディングの解明になる布石をおいているところも さすがです、さて貴方はそう思うか?気が付くか?