「ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ」

「ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ」公式サイト|5.3(金)よりROADSHOW !!
https://www.zaziefilms.com/kurnaz/


この事実を題材に取り上げた時点で十分かと思いきや・・・

2001年、アメリカ同時多発テロ9・11の直後。
ドイツのブレーメンに暮らすトルコ移民一家の長男が旅先で“タリバン”の嫌疑で
あの過酷なグアンタナモにある米軍基地の収容所に収監される。
アメリカ本土ではない(キューバにあるアメリカ収容所)地区、
長男はドイツに長期滞在だがいまだにトルコ国籍
そして舞台はドイツ、裁判はアメリカ

三重にも四重にも絡まった国際要素も事を複雑にする。
しかし無実の息子を救うために奔走する母親。
本作はこうした信じられないような事実と複雑さ、困難さをベースにした物語。
ではあるが、なんと、それを
コメディー仕立てで組み立てている。
当に「ドイツのオカン」というべきふくよかなの母
奔放というか型破りな明るい性格、
食べることがすべての解決策とでもいう主義、しかも超甘いもの好き。
こうした設定が
時には現実の厳しさをやわらげ、
時にその厳しさ過酷さを観る者により強く訴える。

本作は
この事実を題材に取り上げた時点だけではなく、
それをコメディーとして仕上げることで
見事に勝負がついたと言える。

戦争や迫害などのつらさを
ユーモアを交えて描いた有名な作品に

「ライフ・イズ・ビューティフル」
https://eiga.com/movie/50458/

があるが
もちろん、苦難の中身、コメディー仕立てなのかの違いはあるが
どちらも苦しさの中に笑いを求めて描いている。
そして本作は
苦しさを笑い(ユーモア)で「和らげる」のと
それを笑い「飛ばす」のとの違いに
気づかせてくれた。

資料から
監督を務めたのは、『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』(18)などで知られるドイツの俊英アンドレアス・ドレーゼン。
主役のオカンはコメディアン メルテム・カプタン。
トルコ系ドイツ人でありアメリカでミュージカル俳優として活動したのち、ドイツで人気のコメディアンとして活躍。

本作は、第72回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(主演俳優賞)受賞。
さらにベルリン国際映画祭では銀熊賞(脚本賞)のW受賞も果たし、
更に、ドイツで最も権威のあるドイツ映画賞では作品賞、主演女優賞、助演男優賞の3部門で受賞した。

題材である2001年のテロ
そして
ウクライナやパレスチナでの戦火を見る今
かつてテロリストを排除するべく強行に出たアメリカの行動が
改めてどうだったのか、考えさせられる作品でもある。

2024年5月3日 公開

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