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2023年3月の記事一覧
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「パリタクシー」
https://movies.shochiku.co.jp/paristaxi/ 心温まる時間をありがとう。 まことに気持ちの良い作品といえる。 タクシー運転手とそこに乗り合わせた客との 映画としてはごくありがちな設定。 ゆえに、展開次第ではごくありふれた作品になる危険は伴う。 そこが、、、 もろもろの事がうまく行っていない中年のドライバー そこに乗客として乗ったのは終活に向かう老女。 乗るなり寄り道を求め、遠回りだと嫌ったドライバーに 「長い人生で10分の寄り道なんて短いものよ」と。 ある時は 渋顔をしたドライバーに老女は 「微笑むたびに人は若返る」とも。 ハートフルな言葉が満載されている二人の社内での会話の数々、 そこには人生訓というか。 そしてここに これが映画、ともいえる展開が加わるからたまらない。 国民的シャンソン歌手のリーヌ・ルノー、94歳の彼女が92歳のマドレーヌを演じ フランスを代表する大人気コメディアンのダニー・ブーン、 1966年生まれの彼がドライバーを演じる。 この二人は実生活でも親交が深く、 ルノーは「ダニーは私の息子よ」と公言し 「これは私の遺言になる映画よ」と宣言しての本作への出演となった、ということだ。 そして本作の名わき役とすれば パリの名所。 エッフェル塔、シャンゼリゼ通り、ノートルダム寺院、凱旋門、パルマンティエ大通り等々 僕にとって単なる観光名所としてしか認識がなかったこれらの場所が このタクシー目線で映し出され、そこで繰り広げられる二人のストーリーにより こんなにまでも素敵な場所だったのかと、この街が好きになってしまった。 最後に待ち受ける大きな驚き 温まっていた心に この展開は十分すぎるインパクトだった。 2023年4月7日 公開
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「生きる LIVING」
映画『生きる-LIVING』公式サイト https://ikiru-living-movie.jp/ ノーベル賞作家カズオ・イシグロの文章力が輝く。 背筋を伸ばして本作の試写臨んだ、 そのくらい是非とも見たかった作品だ。 1952年公開の黒澤明監督原作、志村喬主演 名画中の名画「生きる」のリメイク。 生きる(1952) : 作品情報 - 映画.com https://eiga.com/movie/4446/ 原作を長年リスペクトし続けてきたカズオ・イシグロ 彼が満身の力を込めて書き上げた脚本。 舞台を第二次世界大戦後のイギリスに移し 見事な脚本に作りあげられている。 僕の黒澤作品に込めた思いが どうしてもリメイク版には逆の下駄をはかせてしまうためなんだろうか、 そして あまりにも本作への大きな期待がなせるためなのか、 黒澤独特の深みとそしてリズム感と比べると 演出のフラットさを感じた。。。が、、、、 いや そこが本作のイシグロの描きたかった世界と気づかされた。 イシグロ、原作を彼なりにアレンジし洗練され繰り出された文章、 それを生かすには今回の描き方が必要だったんだと。 更に特筆する点は 本作でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた ビル・ナイだろう。 彼のことはよく見かけるが 特筆して、という認識は薄かった。 資料によると 「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」のデイヴィ・ジョーンズ役 とある。 パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト : 作品情報 - 映画.com https://eiga.com/movie/1806/ 本作が彼の代表作になることは間違いない。 70代でさらなる代表作と。 2023年3月31日 公開
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「屋根の上のバイオリン弾き物語」
http://www.pan-dora.co.jp/yanenoue/ ああ、そうだったんだ。 あの名ミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」 のバックストーリー、製作ドキュメンタリー。 不覚にも僕はこのミュージカルの監督に関してまったく知識がなく というか なんとなく見た当時このこてこてのユダヤ人社会を描いた映画の バックグラウンドを見ることをあえて避けていたかもしれない。 そして今このドキュメンタリーを見て 「ああ、そうだったんだ」と心底思った。 「屋根の上のバイオリン弾き」の監督ノーマン・ジュイソン 驚くことにこの作品の前には シドニー・ポワチエの「夜の大捜査線」 https://eiga.com/movie/50413/ その後に 「ジーザス・クライスト・スーパースター」 https://eiga.com/movie/45072/ 更には シェールとニコラス・ケイジの「月の輝く夜に」 https://eiga.com/movie/46847/ の監督だった。 全て僕のフェイバリット作品だ。 と並べると 実に芯が通った監督であることは明確だ。 「夜の大捜査線」黒人差別真っ盛りの南部アメリカを舞台にした黒人刑事のストーリー 「月の輝く夜に」ニューヨークのイタリア系アメリカ人の人間模様を描いたロマンティック・コメディ 「ジーザス・クライスト・スーパースター」はすばりそのもの そして 「屋根の上のバイオリン弾き」ロシア革命前夜のウクライナにおけるユダヤ人社会の葛藤を描く 全てにおいてテーマに芯がありそれを見事に描いてきた監督であると。 本作の中では 「屋根の上のバイオリン弾き」の 音楽を担当した作曲家のジョン・ウィリアムズがこのミュージカルの音楽と映像をリンクさせる手法を 劇中歌「Sunrise, Sunset」を作詞したシェルドン・ハーニックがその意味を その他本当に多くの逸話がこんなにも詰まっていたのかと驚かされる。 何よりも 監督のノーマン・ジュイソンが語るバックグラウンドが。 そして 「夜の大走査線」を公開当時に見た ロバート・ケネディがノーマン・ジュイソンに直に語った 「大事なのはタイミング、政治もアートもそして人生そのものも」 ・・・公民権運動を指示したロバートが彼にこう語った数日後、弾丸に倒れたという事実も。 2023年3月31日 公開
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「マッシブ・タレント」
https://massive-talent.net/ ニコラス・ケイジの新たな代表作! こりゃ笑える。 あのニコラス・ケイジが架空の自分を演じるアクションコメディー。 改めて 「月の輝く夜に」(87)、「ハネムーン・イン・ベガス」(92) 「リービング・ラスベガス」(95)でアカデミー主演男優賞を受賞。 以降、「ザ・ロック」(96)、「フェイス/オフ」(97)、「60セカンズ」(00)、 「ナショナル・トレジャー」(05)などなど周知の大スター。 しかし、私生活ではハチャメチャともいえる浪費と金銭トラブルなどで多大な借金を抱え、 2010年代にはその返済や結婚生活に苦労していると ゴシップニュースでお騒がせしてたことも事実。 その彼がほぼ自身じゃないの?といえる(というか本人がニコラス・ケイジで)役で 出演している本作。 ニコラス、ニックは 多額の借金返済に何十本もの低予算映画に出演することで完済、 そのあとに舞い込んだ謎の映画オファー。 その陰には国際犯罪組織とCIAの攻防が。 まこともって、奇想天外なストーリーだが 実のニコラスの履歴と重なり、それを吹き飛ばしてしまうストーリー展開、 どこからどこまでが現実で映画なのか ちりばめられた過去作のジョークなどなど。。。 「67ヵ国で初登場TOP10入りのスマッシュヒット!」 のキャッチ・コピーはうなずける。 助演の ペドロ・パスカル チリ出身の役者、本作で初めて見たが 今後活躍するんじゃないかな。 妻役の シャロン・ホーガンは 先にこのブログでも紹介した 『シング・ア・ソング!~笑顔を咲かす歌声~』(19) で主演を演じた実力派。 PS 実は フランシスコ・コッポラの甥っ子であることは 知られているようであまり知られていない。 映画の中で「ニコラス・コッポラ!」 と呼ばれているところではさらに笑ってしまった。 2023年3月24日 公開
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「メグレと若い女の死」
https://unpfilm.com/maigret/index.html さすが、ジェラール・ドパルデューですね。 原作はフランス作家ジョルジュ・シムノンのベストセラー ご存じパリ警察のメグレ警視の警察サスペンス物であり フランスの名匠パトリス・ルコント監督が映画化し 見ごたえは約束される。 書きたいポイントはやはり主役のジェラール・ドパルデュー。 メグレ警視役といえば ジャン・ギャバンをすぐに思い起こすが(いつものごとく、古いねぇ僕の場合は) ・・・というかメグレ警視と言えばジャンしかないだろう、と思っていたが さすがフランスを代表する名優ジェラール・ドパルデュー 彼の手にかかるとこの固定概念をすっかり覆して すべてドパルデュー物にしてしまうんですね。 ドパルデュー 1990年の「シラノ・ド・ベルジュラック」 や「グリーン・カード」といったコメディーから 『レ・ミゼラブル』、『ナポレオン』、『巌窟王〜モンテ・クリスト伯』 までを演じるフランスを代表する不動の役者だ。 彼に関して僕なりにいつも思うのだが、 見かけは悪くとも 演技力で 広く人の心を鷲掴みにする その力量が 国を代表するレベルでの名優という評価を得ているという点だ。 これはもちろん彼の力量に帰するものなのだが それだけではなく、そうした役者の神髄を正しく評価する 「フランスの人たちの素晴らしい目」が彼のことをそう評しているということだ。 羨ましい目だ。 僕が彼の作品を初めてみて(これは!)と思ったのは 1986年に見た 「愛と宿命の泉 PART I /フロレット家のジャン」 https://www.allcinema.net/cinema/154 これでジャン役のドパルデューに完全にはまってしまった。 因みにこの作品は二部構成で 「愛と宿命の泉 PART II/泉のマノン」 https://www.allcinema.net/cinema/155 の二部構成で 当時映画館で4時間以上を続けて見たが 時間を感じさせない大作だった。 あの感動は36年以上たった今でも鮮明に覚えている。 また、本作主演のイヴ・モンタンがまた良いんですよ! それと ドパルデューはほかにもあの トラとの漂流したとんでもなく面白い映画 「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」 http://www.kinenote.com/main/public/cinema/detail.aspx?cinema_id=70224 にも出演していたという事を 改めて(そうだった)と。 見ていない方はぜひ是非、これぞ面白い映画だっ。 PS 漫画「コナン」の目暮 (メグレ)警部の名は メグレ警視から・・・。 2023年3月17日 公開