「パリタクシー」
心温まる時間をありがとう。
まことに気持ちの良い作品といえる。
タクシー運転手とそこに乗り合わせた客との
映画としてはごくありがちな設定。
ゆえに、展開次第ではごくありふれた作品になる危険は伴う。
そこが、、、
もろもろの事がうまく行っていない中年のドライバー
そこに乗客として乗ったのは終活に向かう老女。
乗るなり寄り道を求め、遠回りだと嫌ったドライバーに
「長い人生で10分の寄り道なんて短いものよ」と。
ある時は
渋顔をしたドライバーに老女は
「微笑むたびに人は若返る」とも。
ハートフルな言葉が満載されている二人の社内での会話の数々、
そこには人生訓というか。
そしてここに
これが映画、ともいえる展開が加わるからたまらない。
国民的シャンソン歌手のリーヌ・ルノー、94歳の彼女が92歳のマドレーヌを演じ
フランスを代表する大人気コメディアンのダニー・ブーン、
1966年生まれの彼がドライバーを演じる。
この二人は実生活でも親交が深く、
ルノーは「ダニーは私の息子よ」と公言し
「これは私の遺言になる映画よ」と宣言しての本作への出演となった、ということだ。
そして本作の名わき役とすれば
パリの名所。
エッフェル塔、シャンゼリゼ通り、ノートルダム寺院、凱旋門、パルマンティエ大通り等々
僕にとって単なる観光名所としてしか認識がなかったこれらの場所が
このタクシー目線で映し出され、そこで繰り広げられる二人のストーリーにより
こんなにまでも素敵な場所だったのかと、この街が好きになってしまった。
最後に待ち受ける大きな驚き
温まっていた心に
この展開は十分すぎるインパクトだった。
2023年4月7日 公開