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自分で発見

 ある日の調理実習で、子ども達が「ご飯と味噌汁」を時間いっぱいを活かして頑張って作りました。私の方も、段取りがちゃんとしてあれば、何とか時間内で終わらせることができますが、なかなか思うようにいかないこともあります。冷や冷やしながらも子ども達の状況を細かく見ながら、調理の流れに全体を乗せていくことが私の仕事。調理の手応えを十分感じさせてあげながらも、リズムよく安全にフィニッシュできるイメージを描いて授業を進めていきます。かなり神経も使いますが、子ども達の満足げな顔を見ると、よかったなあと思うのです。

 味噌汁の出汁取りに煮干しを使います。料理研究家の《まゆ》先生が「出汁が生命」とおっしゃっていて、煮干しをしっかりと水で漬け込んでから煮て、出汁を十分に取ります。この出汁を味わうだけでもとても美味しいので、具材をそれに足していき、味噌と火のタイミングを間違えなければ、ほとんど抜群に美味しい味噌汁が出来上がります。

 子ども達は、本物の味に出会った喜びを十二分に味わい、歓喜の声を上げます。初めて手作りで自分で作る味噌汁がとっても美味しかったら、きっと大きくなっても舌に残っているのではないかと思い描き、この授業には力が入ります。

 出汁を取った後のたくさんの煮干しをそのまま捨てるのは忍びなくて、いつも手の空いている子ども達に手伝ってもらって、煮干しの内臓と骨を取り、実だけにする作業を手伝ってもらいます。まだ少し熱いですし、生臭いですし、めんどくさい作業なので、嫌がるかなあと思うのですが、子ども達はだいたい喜んで手伝ってくれます。

 今日、その作業を手伝ってもらっていた時、一人の男の子が、得意げに自分の発見をみんなに伝えていました。
「頭の方からこうしてぴーっと引っ張って骨を実から外していくととても綺麗に簡単に取れるよ!」
みんないろいろなやり方で四苦八苦していたので、男の子が教えてくれたやり方に飛びつきました。
「本当だ!こうやってやると簡単に剥がれるね。すごい!すごい!」
と言って素早く綺麗にできる方法を伝授されて作業のスピードがアップしました。まるで職人技のように手際よくどんどん作ってくれました。

 山ほどの煮干しの実が出来上がったところで、砂糖と醤油で美味しく手早く佃煮が出来上がりました。子ども達には、ご飯のお供にとグループに配ると大好評で、
「何杯でもご飯が食べられるよ!」
このクラスの担任の先生からも
「これ、売れますよ!」
と、ホクホクと食されていました。実だけにするのを手伝ってもらった子ども達にはお礼に少しだけ多めの佃煮をあげました。

 実だけにする時に手早くする方法を発見したことは、子ども自身から出てきた工夫。私がアドバイスをすることは簡単ですし、効率も良かったのかもしれませんが、自分達が大変な思いをする中で簡単にする方法を発見したことが素晴らしいし、それを友達と共有してチームのように一丸となってスピードアップして頑張ったことが素敵だと思うのです。本当の教育って、押し付けられて記憶して鵜呑みにしてテストに合格することではなくて、自分で体験の中から工夫して発見して力にしていくことができたなら、そこに喜びがあり、満足感があり、その一コマの思い出は一生忘れないような力になっていくような気がしています。

 家庭科は受験科目から遠い存在ですが、生きていく中で本当はとても大切な教科だと感じています。誰でもできるところで発見と喜びを享受できる自信を持つことができる大切ななくてはならない教科だと思うのです。

《れい》

わかったよ
 自分で見つけた
   喜びに
知恵と工夫の
   才能開く

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