跡見葉

高校時代に創作活動を開始し、2023年に林見年と短歌同人誌「Authentic Summer Videos」を立ち上げました。早稲田大学在学中。X:@atomiyou

跡見葉

高校時代に創作活動を開始し、2023年に林見年と短歌同人誌「Authentic Summer Videos」を立ち上げました。早稲田大学在学中。X:@atomiyou

マガジン

  • 21年間の人生で聴いてきた邦楽(全2,280曲)全曲レビュー

    いま、私のSpotify「お気に入りの曲」には、2,280曲が登録されています。これについて、一番古いものから順に、全部言及します。

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21年間の人生で聴いてきた邦楽(全2,280曲) 全曲レビュー その6

いま、私のSpotify「お気に入りの曲」には、2,280曲が登録されています。これについて、一番古いものから順に、全部言及します。 #51 それはただの気分さ - Live - フィッシュマンズ かなり最後の曲。先輩がツイートしていて知った。ずっと、自分にはまだ早い曲という感じがする。いくつになっても自分には本当の意味で分かることがない曲だと思う。何と切なく、良い曲だろう。 疲れ、窶れることを肯い、愛すること。ただし、疲れているのは、「君」だけではない。歌っている彼も

    • 21年間の人生で聴いてきた邦楽(全2,280曲) 全曲レビュー その5

      いま、私のSpotify「お気に入りの曲」には、2,280曲が登録されています。これについて、一番古いものから順に、全部言及します。 #41 完璧な一日 - あるぱちかぶと 一人の(現在から見れば平成的と言えるかもしれないような)人生を5分余りで駆け抜けるリリック。間奏から先が、制作時点でのあるぱちかぶとの実年齢を超えた部分となっている。 高校時代の描写がとても短く、一瞬で通過していくことに、16歳当時の僕は励まされていた。 これは20代前半時点でのあるぱちかぶとの出

      • 21年間の人生で聴いてきた邦楽(全2,280曲) 全曲レビュー その4

        いま、私のSpotify「お気に入りの曲」には、2,280曲が登録されています。これについて、一番古いものから順に、全部言及します。 #31 プラスティック・ラブ - 竹内まりや 2019-20年ごろ、この楽曲の周辺が特に再流行したような時期があったような気がするが、気のせいかもしれない。見てきたような嘘の歌だと思う。電飾都市生活への集団狂気じみた執着と煽動があり空恐ろしくなる。この楽曲を何十回も繰り返し聴くことには諧謔的な狂気がある。80年代が分からない。 #32 少

        • 21年間の人生で聴いてきた邦楽(全2,280曲) 全曲レビュー その3

          いま、私のSpotify「お気に入りの曲」には、2,280曲が登録されています。これについて、一番古いものから順に、全部言及します。 #21 Pellicule - 不可思議/wonderboy 名曲。夭逝のラッパーは、まるで何かをあらかじめ見てきたように、心から言葉を吐く。 複数のアンサーソングが発表されている。「次交差点出たならば右に曲がれよ」と言葉が叫ばれるとき、ひとつのトラックを超えるものが現前する。 「世界征服やめた」も必聴。 #22 Monochrome

        • 21年間の人生で聴いてきた邦楽(全2,280曲) 全曲レビュー その6

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        • 21年間の人生で聴いてきた邦楽(全2,280曲)全曲レビュー
          6本

        記事

          都市空間のなかの記憶——写真とともに振り返るわたしの幼年期

          前田愛『都市空間のなかの文学』から影響を受けまくりの文章です。でも本当にしんどかった時期に僕は正当な文学にリーチすることができませんでした。文章が頭に入らなかったからです。それは幼年期に退行するような時間でした。その代わりに僕は何かから確かなものを受け取っていたような気がするのです。その何かは、もちろん複数あります。第一にして最大のものに、SpotifyやYouTubeを通じて無限にアクセスできた邦楽があることは疑い得ません。僕はこの雑文を通じて、第二の何かとして、都市空間を

          都市空間のなかの記憶——写真とともに振り返るわたしの幼年期

          未来を予感し、名前を付ける——民主的な認知のために

          七色目を示す言葉がない言語圏において、虹は六色として知覚される。人は言葉を得ることによってはじめて事物を認知できるようになる。「言(こと)分け」とは、まさにそのような事態である。流行語とは、すでにあったがまだ人々の認知の水平線上に浮かび上がっていない事象に名前を付け、言葉の経済性を高めながら事象に権利を与える創造的営為である。 「何ごとかを言葉によって伝え、広めたい」というのは人間の切実な思いである。本当に言葉を広めようと思ったならば、戦略的に語彙を考案しなければならず、韻

          未来を予感し、名前を付ける——民主的な認知のために

          すべての都市が祝祭である。すべての過ちはお囃子である。

          日本であれば『移動祝祭日』に相当するのは京都なのだろう。左京区で青春の数年間を過ごした人は、その数年間を大切に心の中にしまい込んで、あるいは密閉し隠匿して生きていく。僕もまたそのような京都に憧れていたもののひとりだった。 東京に進学した。大学に入ってからの毎日は要点を欠いたメモのようで、とても楽しく、それでいてさまざまなことを決定的不可逆的に間違え続けている。  * 駅を降りたらたまたま祭りをやっていて、神輿が大通りの一部を堰きとめて囃子のなかを通っていく。そのすぐそば

          すべての都市が祝祭である。すべての過ちはお囃子である。

          21年間の人生で聴いてきた邦楽(全2,280曲) 全曲レビュー その2

          いま、私のSpotify「お気に入りの曲」には、2,280曲が登録されています。これについて、一番古いものから順に、全部言及します。 #11 トーキョー難民 - あるぱちかぶと 「トーキョー難民」は、2010年以前のあるぱちかぶとの中で「完璧な一日」「日没サスペンデッド」とともに代表曲であり、唯一MVが公開されているという点では勝負曲とさえいえるかもしれない。MVは非常に手の凝った作りになっており、当時学生であったあるぱちかぶとがどのようにしてこれを完成に漕ぎ着けたのか、

          21年間の人生で聴いてきた邦楽(全2,280曲) 全曲レビュー その2

          21年間の人生で聴いてきた邦楽(全2,280曲) 全曲レビュー

          いま、私のSpotify「お気に入りの曲」には、2,280曲が登録されています。これについて、一番古いものから順に、全部言及します。自分は日本語の歌詞に強い興味があるので、紹介する曲は邦楽が中心です。 #1 井上陽水 - 夢の中へ 2,280曲の一番底(お気に入り登録したのが最古)にありました。陽水がパクられかけた時の曲という説がありますが、それが本当かどうかはさておくとしても、パクられそうな時の焦燥感のようなものが踊り出しそうな明るい音楽の言外にあると思います。そういう

          21年間の人生で聴いてきた邦楽(全2,280曲) 全曲レビュー

          日記 20240729

          見たことも聞いたこともないような忙しさの数ヶ月が終わりようやく夏休みに入った。とはいえ来月上旬は朝から晩まで働くので実際に自由な時間を手にするのはお盆の手前くらいと思われる。過去に例を見ないほど本気の夏にしていきたい。たくさん読書して苦悩して遠出したい。

          日記 20240729

          京の夢大坂の夢—Dream Machineについて

          機械文明の発展はとどまるところを知らない。ドリーム・マシーンというものが出てきて、古い写真を映像にしてしまう。思えば夢の文法というのはある種の破綻によってそれが夢であることを示すのであって、それは生成機械が時に見せる皮膚の光沢や文字の異常と類似する。しかしそれらは類似するのみで決して一致しえない。その限りにあって夢機械というのはあくまでも夢であることができず、夢の夢を見つづける。 何年も前に自分に満ちていたものはもう綺麗さっぱり失われてしまっているのだということがあるとき完

          京の夢大坂の夢—Dream Machineについて

          覚えたての言葉を——余韻と愛と引用

          「ULTIMATE BREAKFAST & BEATS」の一節が新曲「Pointless 5」で引用されたことには驚いたが、たしかに二つの曲はともに「なれのはて」を描写している。そして、「大通り」のイメージが、30年越しに繰り返される。 「Pointless 5」は執念と諦念の二重性を表現する。執念とはすなわち、もう慣れきってしまった「どこにも行けない」ということやそれがもたらす安心感に抗って、ここではないどこかへ向かおうとする強さである。あるいは、「出口のなさや安心感に抗

          覚えたての言葉を——余韻と愛と引用

          舎熊 YESTERDAY 治らない

          留萌本線舎熊(しゃぐま)駅。隣が信砂(のぶしゃ)駅。2016年に廃止された両者のあいだは800メートルしか離れていなかった。共通の音韻がその地の何かを示していたと思いきや、Wikipediaによれば地名の語源には共通する部分がない。しかし音が想像上に何かを生成(捏造)する。生成(捏造)され現前するそれは何か? 生活が苦しい。初任給に迫るような金額を稼ぎながら大学生をやっているのだから可処分時間は皆無に等しい。シャトルランの最後みたいな日々がずっと続いている。2回連続でバツが

          舎熊 YESTERDAY 治らない

          ドラえもんミュージアムは小田急の陰謀か?——生活の脱力感と詩的反抗

          小田急線の登戸駅は、藤子・F・不二雄ミュージアムへの窓口となる駅であり、あちこちにドラえもんの世界をモチーフにした装飾が施されている。駅名が書いてあるプレートはドラえもんの鈴になっているし、階段の壁にはタケコプターで空を飛ぶのび太やジャイアンが描いてあって乗客をプラットホームへと手招きする。また、電車が来たり発車したりするときのメロディがF先生のアニメ作品の主題歌になっている。(近隣の向ヶ丘遊園駅や宿河原駅もメロディがF作品にちなんでいる。)しかも、改札の前にはそれなりに大き

          ドラえもんミュージアムは小田急の陰謀か?——生活の脱力感と詩的反抗

          ドキュメンタリーの政治性

          NHKの「ドキュメント72時間」を見た。今回は大阪の有名なスーパー・スーパー玉出に3日間密着。午前5時過ぎに入店してきた68歳の清掃員の人。前職で過酷な働き方をして、次第に家族との間に溝ができていく。 一番下の子どもが大学を卒業すると、一人で家を出てしまう。その人は「自分のごほうび」としてビール2缶と半額のお刺身を買う。 この手の番組を自分は割と見てしまう。もちろん、この番組を見て「生活者たちの生の多様さ」などというナイーブな感想は持たない。電波に乗せる段階で捨象された生

          ドキュメンタリーの政治性

          実践的で大きな力

          郵便局のATMで9万4千円を引き出そうとして「94千円」と入力したら94枚の千円札が出てきた。あたふたしていたら局員の人に察してもらえて一万円札9枚に変換してもらえた。紙幣を一度に94枚も手にしたことがないから心が熱くなる感じがした。お札同士がぴっちりと密着している新札の束ではないので、94枚も重なればものすごく分厚い。こんな大金があれば世界が救えてしまうかもなと思った。世界の途方もなさを舐めすぎている。 今の町に引っ越すときに不動産屋から「虫が嫌いならこの町はやめておいた

          実践的で大きな力