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職場でステレオタイプに直面すると起きること
特定の集団に対する否定的なステレオタイプ(固定観念)が存在する状況において,その集団に属する個人がそのステレオタイプを意識することで,実際のパフォーマンスが低下してしまう現象のことを,ステレオタイプ脅威(Stereotype Threat)といいます。
女子生徒が数学や物理の試験を受ける際に,「女性は理系科目が苦手」というステレオタイプを意識すると,実際に試験のパフォーマンスが低下するという現象が知られています。これも,ステレオタイプ脅威のひとつの例です。
ステレオタイプ脅威の影響
ステレオタイプ脅威がどのように影響を与えるのかについては,特に学校場面やテスト場面でよく研究されてきました。
しかし,ステレオタイプ脅威がどれくらいの影響力を持つのかについては,研究によって一貫しない部分があるようです。また,学校場面以外での仕事の場面では,どのようにステレオタイプ脅威が影響をおよぼすのか,まだわかっていない部分があります。
慢性的なステレオタイプ脅威
勉強場面だけでなく,現実のさまざまな場面でもステレオタイプ脅威が何らかの結果に影響をおよぼすのではないかという研究結果は,いくつか報告されています。たとえば,高額賞金のかかるチェスのトーナメントにおいて,ステレオタイプ脅威が女性選手のパフォーマンスを低下させる可能性を報告する研究があります。
環境が,個人のアイデンティティを脅かすものとして認識すると,ステレオタイプ脅威が生じやすくなり,パフォーマンスの低下,意欲の喪失,さらに脅威となる領域からの長期的な撤退につながる可能性があることが示唆されています。ステレオタイプ脅威を避けるひとつの方法は,個人のアイデンティティを肯定する環境を作りだすことにありそうです。
また,認知面,感情面,生理面のプロセスが組み合わさることで,ステレオタイプ脅威がパフォーマンスに影響を与えるという考え方もあるようです。ステロタイプ脅威を経験すると,ワーキングメモリに負担がかかり,感情のコントロールが難しくなり,ストレス反応が引き起こされます。これらがすべて関係して,結果的にパフォーマンスが低下するというプロセスです。この考え方からすると,ステレオタイプ脅威はストレスのかかる職場で,よりパフォーマンスが低下しやすいという現象が生じる可能性があります。
メタ分析
ステレオタイプ脅威の研究は,実験室環境で研究されてきました。しかし近年では,現実世界での研究も広がっています。職場環境には,実験室での管理された状況とは大きく異なる独特の課題が存在しています。 継続的なプレッシャー,複雑な対人関係,そして即時のパフォーマンスを越えた長期的な影響の可能性もあります。
はたして,仕事の場面でステレオタイプ脅威はどのように影響をおよぼすのでしょうか。メタ分析で検討を行った研究があります。こちらの論文を見てみましょう(Stereotype Threat at Work: A Meta-Analysis)。
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