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2022年に読んだ本の振り返り(番外編)
2022年に読んだ本のシリーズですが,年が明けてしまった今回は番外編です。いまでは絶版になっている本で,2022年に読んだ本を集めてみました。
ピアジェ晩年に語る
1冊目は,『ピアジェ晩年に語る』(ピアジェ,J.C.ブランギエ 大浜幾久子(訳),1985年,国土社)です。
実はこの本について,以前,記事にしています。こちらの記事を読んでもらうと,心理学でもよく知られている,ピアジェの幼い頃の記憶の取りちがえ(虚記憶)のエピソードがよくわかると思います。別の本なんかにも,よく取り上げられている事例ですね。何かに使うときには,この本を引用しましょう。
ちなみにピアジェは若い頃,一時期パリへ行き,次に紹介するビネの共同研究者シモンと出会って研究をしています。
ビネの生涯
2冊目です。『ビネの生涯 知能検査のはじまり』(T.H.ウルフ 宇津木 保(訳),1979年,誠信書房)を読みました。
「ビネ」というのは,世界ではじめて知能検査を開発した,アルフレッド・ビネです。この本はビネの業績,知能検査開発の様子だけでなく,ビネの人となりや研究者としての姿勢などもよくわかる一冊です。
ビネには親友がほとんどいなかった。シモンでさえ,個人的なことがらについては,信用されないことが珍しくなかった。しかし,シモンやラルギエにあてた手紙には,しばしば,深い愛情が言葉のはしばしに示されている。
ビネは広く興味をもち,多くの研究を行った研究者です。もちろん世界中で知られているのは知能検査なのですが,とても精力的に,いろいろな問題に取り組んでいったようです。
ところが,本国フランスでは,ビネは評価されませんでした。
このテストは,フランスを除くヨーロッパ諸国とアメリカ合衆国とでは,重要な貢献として受けとめられたけれども,フランスでは概して無視されただけでなく,ときには実際に,笑いものにされたり,あざけられたりした。
フランスで知能検査が評価されなかったことから,ビネは国外で知能検査が大きな話題となっており,次々といろいろなことが知能検査に追加されていこうとしている様子について,あまり知らなかったようです。でも,国外の動きを知ったときには嘆き,批判もしています。いまの私たちは,ビネの意志をほとんど受け継いでいないように思えてしまいます。
オルポートとの対話
3冊目。『オルポートとの対話』(リチャード・エヴァンズ 宇津木保・青木孝悦・青木邦子(訳),1974年,誠信書房)です。
アメリカの心理学者ゴードン・オルポートの晩年にインタビューをしてまとめられた本です。多岐にわたる話題が展開しているのですが,オルポートが当時考えていたことが,インタビューに反映していて興味深い内容になっています。
どうしても我々は,いまの心理学の枠組で当時の研究を見てしまうのですが,当時の心理学者たちが何を考えていたのかを知ることは,当時の研究を理解するうえでとても重要だと感じられました。
いろいろな類型が提出されていますが,私が満足できるものは一つもありません。私が一番良いと思う概念は,特定のあらゆるパーソナリティのすべてを,あえて包含しようとはしない理想的類型概念です。あらゆる類型学に共通する難点は,さまざまな個人から,よく似た特定の性質を切りとって,外向性とか,口唇性格とかいった類型をつくりあげることです。しかし,類型はけっしてパーソナリティ全体をふくみません。なぜかというと,ある人の外向性は,他の人の外向性よりもむしろ,その人自身の知能,服従性,指導性,および不安と,より多く関係しているからです。ある人格が示す特性は,人格の一部ですから,パーソナリティ全体のパターンに関係づけられなければなりません。ところが,心理学者のなかには,パーソナリティをこま切れにして,類型のなかにおしこみ,そのために,類型的な特徴と残余のパーソナリティとの統合性を見失っているものがいるように,私には思われます。私は,なんらかの意味で抽象化された類型よりも,むしろ,ある人の全体に焦点をおきたいと思います。
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