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日々是好日・心理学ノート

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2020年9月の記事一覧

二次データを利用しよう

2020年の日本心理学会第84回大会でシンポジウムに登壇しました。オンライン大会での発表は普段と違って,意外と緊張するものです。聞いている人たちの反応が見えないというのは,また独特な雰囲気です。 そこで話した内容にも関連するのですが,今回の記事は二次データの利用に関することです。 心理学はどうも,「自分でデータをとらないと価値がない」と考える研究者が多いような印象があります。実験でも調査でも面接でも,自分で実施して,自分でデータを得て,自分で分析することに価値がある,とい

意識を失うほどお酒を飲むと起きること

お酒を飲み過ぎることは,認知症のリスクを高める傾向があるそうです。 こういった因果関係を考えるのはなかなか難しいのですが,お酒を大量に飲むことが直接的に脳に何らかの影響をおよぼすのか,あるいは別のルートがあるのかはよくわかりません。たとえば,アルコールと認知症の両方に関連した疾患もあります。肝臓の病気や腎臓の病気,糖尿病や高血圧や不整脈,冠状動脈性心疾患や脳卒中などなど,お酒にも認知症にも関連する病気があるようです。 とはいえ,どれくらいお酒を飲んだらどれくらい認知症のリ

男性ホルモンは人を傷つける?

脳が男性ホルモンにさらされると,人は攻撃的になったり反社会的になったり,犯罪を犯す傾向が生じたり,といった影響が出ると言われています。こういう行動全体を「offending behavior」と言うそうですが,日本語だと犯罪行為?違法行為?日本語だとちょっと意味が狭いようにも感じますので,どういう日本語にしたらよいのかがちょっとよくわかりません。 テストステロン男性ホルモンのひとつであるテストステロンですが,副腎や卵巣,特に精巣から身体に放出されます。とはいえ,そのまま脳に

感謝する親の子どもも感謝をするようになる

子どもの頃,親に「感謝しなさい」「ありがとうと言いなさい」と言われたことはありますか? 感謝しない人と,感謝する人を比べると,なんとなく感謝する人のほうが成熟していて,年齢が上で大人ではないかと感じるのではないでしょうか。 そのように考えると,感謝をするというのは発達にも深く関連しそうです。 心理学の感謝心理学でも感謝という現象を研究しています。感謝をすることは,人間関係を円滑にし,幸福感を高め,ポジティブなこころの作用をもたらす傾向があるようです。 さらに,感謝は他

【読書】『科学の人種主義とたたかう』

キャリブレーション(calibration)という言葉があります。工学系の言葉で,「計器の目盛りを正しく調整すること」とか「 規格や基準に整合するように調整すること」といった意味です。 今回紹介するような本を読むと,時分の認識が「キャリブレートされた」と感じるのですよね。そういう本です。 というわけで今回は,『科学の人種主義とたたかう: 人種概念の起源から最新のゲノム科学まで』(アンジェラ・サイニー著)を取り上げたいと思います。 ネアンデルタール人ネアンデルタール人は教

次世代を育てることは幸福か

いろいろと教えたがる人,というのはいますよね。そして,年齢が上がると自然とそうなっていく印象はあります。 それは実際にそうで,次世代を育てることは,成人期の発達課題としても取り上げられることです。 若い世代にとっては,「面倒だなあ」と思ってしまうかもしれませんが,きっとその若い世代も年齢を重ねると,「次の世代を育てよう」ということに関心を抱いていくものです。そうやって,社会は回っていくのではないでしょうか。 次世代を育てることは健康次世代を育てることに関心を抱いたり,実

価値観と性格との関連は?

価値観を10種類に分類する研究があるのをご存じでしょうか。シュワルツ(Schwartz)の価値観分類と呼ばれるものです。研究の歴史はけっこう古く,また海外では心理学の論文にもよく登場する,価値観の分類法です。 10の価値観は,次のようになっています。ただしそれぞれの日本語訳については,おそらく定訳があるわけではないように思いますので,参考までに。 皆さんなら,どの価値観を求めるでしょうか? 4つにまとめるこの10種類の価値観ですが,さらに4つにまとめることができます。

マインドフルネスに関連する性格特性は何か

心理学から世の中に広く知られるようになった言葉というのは,これまでにもたくさんものもがあります。言葉が広まっていくうちに,もともと心理学の用語だということも忘れられていって,日常的なあたりまえに使われる言葉となっていきます。 知能とか知能指数,精神年齢なんていう言葉も典型的ですし,外向性とかトラウマとか,PTSDとか,それから無意識とか。他にもたくさん,心理学発祥の言葉はありそうです。 マインドフルネスマインドフルネスという言葉も,ずいぶん広まっています。 意図的に何か

睡眠時間を先に延ばしてしまう

先延ばしというのは,それがよくない結果をもたらすということが十分にわかっているにもかかわらず,行動を自分から先に延ばしてしまうことを指します。 毎日しなければいけない,しようと思っている,したほうがいいな,と思うことで,ついつい先に延ばしてしまうことのひとつは,健康に関連する行動ではないでしょうか。運動したほうがいいということは十分にわかっているのに,「まあ明日からにしておくか」と思ったり,こんなに食べ過ぎるのはよくないとは思っているのに「明日我慢すればいいか」と考えてしま

性格と学業成績の関連ふたたび

学校の成績がどのような性格に関連するのかについては,以前も取り上げたことがあります。 そこでは,ビッグ・ファイブ・パーソナリティのうち勤勉性が,学業成績に関連するということでした。勤勉性が高い子どもほど,学業成績がよくなるという関係です。また,その関連の大きさは,知能と学業成績の関連と同じくらいということでした。 こういった研究が積み重なることで,ビッグ・ファイブ・パーソナリティの中でも勤勉性(Conscientiousness)への注目が集まることになりました。 児童

高齢者に対する偏見の東西

年齢に伴って,人の印象が変わることがあります。「最近の若者は」という若者に対する偏見もありますが,高齢者に対するものもあります。 特に最近は「高齢者に対する印象の歪み(バイアス)」も目立つようになってきた印象があります。それだけ社会が高齢化しているのかもしれません、年齢を重ねて外見が高齢になっていくと,それに伴って一定の認識の「構え」ができていきます。 たとえば「高齢者は気難しいのでは」「怒りっぽいのでは」「考えが硬いのでは」「柔軟性にけるのでは」……こういったイメージで

『人種は存在しない』(ベルトラン・ジョルダン著)

今回も本の紹介です。ベルトラン・ジョルダン著『人種は存在しない—人種問題と遺伝学—』です。 「人種は存在しない」というのが,タイトルになっているように,これが結論です。とはいえそこに至るまでに人種差別の歴史をざっとおさらいしたり,遺伝学の知見を紹介したり,どう考えるべきかを考えていくエッセイ集のような内容になっています。 4つの結論この本では最後に,4つの結論が述べられています。 一つめは,厳密な意味において,「人種」は生物学的な意味をもたない,という結論だ。 人類を

「なのだそう。」という表現を新聞記事で検索してみた

この表現,なんだか気になるのですよね。皆さんは気になりませんか? 何かというと,次のような表現です。 ◎「......なのだそう。」 皆さんは気になりませんか?私はどうも,以前から気になってしまってしょうがありません。以前はあまり使っていなかったのでは?とか,どこかで使う特殊な表現なのか?とか,いや自分が生まれた地方の問題なのか?とか,考えてしまいます。 どういうところによく使われる表現でしょうか。気になったので,大学の新聞記事データベースで調べようと思ってみました。

ものはため込むけれど消毒はあまりしない人

コロナウィルス感染症が広まる前と後とで,皆さんの行動は変わったでしょうか。たとえば,ドアノブや鍵やスマートフォンをよく除菌するようになったとか,帰宅後に必ず手洗いと消毒を欠かさなくなったとか,日常生活に必要な物品を家の中にストックするようになったとか,毎日必ずマスクをするようになったとか。 今回の出来事で,本当に私たちの行動は大きく変わったように思います。でも,すでにこの状況になれてしまって,これが当たり前になりつつあるとも言えます。もう「それ以前」がどんな感じだったのか,