「明治の精神」とはなんだったのかー夏目漱石『こころ』を読んでー
1. はじめに 夏目漱石『こころ』は、彼の代表作でもあり、また、押し並べて高校生の際に読んでいる場合が多いので、国民の大半が読んでいる珍しい文学作品なのではないだろうか。しかし、僕自身、これといって高校生の頃に『こころ』を読んで、「わかった」気になったわけではない。当時の僕は、一つの罪を背負って生きる先生が、あまりにも可哀想であったことを同情している。人間のどうしようもないエゴイズムと、そこに絡まる恋路を、僕は自身の人生を振り返り、先生に同情していたのだ。例えば、17歳のの僕